
- エネルギー
スマートグリッドとは?エネルギーの効率化だけではなく、新たなライフスタイルを創造するその可能性
世界的な脱炭素の潮流に乗り、日本でも再生可能エネルギーの発電量が増加しています。太陽光や風力といった再生可能エネルギーは天候・時間帯の影響を強く受けるため、常に一定の電力を供給することが難しく、需要と供給のバランスを調整 […]
世界的な脱炭素の潮流に乗り、日本でも再生可能エネルギーの発電量が増加しています。太陽光や風力といった再生可能エネルギーは天候・時間帯の影響を強く受けるため、常に一定の電力を供給することが難しく、需要と供給のバランスを調整する必要があります。
この需給バランスをうまくコントロールするために生まれたのが、「スマートグリッド」です。
本記事ではスマートグリッドについて、基礎知識から導入によるメリットや社会的意義、そして未来の姿まで、詳しく解説していきます。
スマートグリッドとは、従来の電力網に情報通信技術を活用することで電力の需要と供給を最適化できるようにした、より進化した電力網です。スマート(賢い・洗練された)とグリッド(電力網)を組み合わせた造語で、「次世代送電網」と呼ばれることもあります。
なお、スマートグリッドに関連する下記のような技術・概念があります。
VPPについて詳しくはこちらをお読みください。
>VPP(バーチャルパワープラント)とは?仕組みやメリット、必要な事業を解説
上記2つやスマートグリッドは技術や仕組みを表す言葉です。
一方、街づくりのコンセプトとして「スマートシティ」という概念もあります。
なお、スマートシティは、住宅単体でエネルギー消費の最適化を行う「スマートホーム」、地域内のスマートホームや施設が連携して地域のエネルギー管理を行う「スマートコミュニティ」を包含する。
参考:資源エネルギー庁「再エネ大量導入時代における分散型エネルギーシステムのあり方」
内閣府「スマートシティガイドブック第2版」
国土交通省「WEBニュースレター スマートシティ」
2000年代初頭のアメリカでは、老朽化した送電網が十分に整備されておらず、停電の問題などが頻発していました。そこで電力の効率的な利用を考えた結果、スマートグリッドの構想が生まれ、開発が進められます。その後、2009年にオバマ政権がスマートグリッドの整備を打ち出したことがきっかけで、注目が集まりました。
同じ頃の日本では、国策によって電力の安定供給が実現していたため、スマートグリッドに関する関心は強くありませんでした。しかし2011年の東日本大震災時に発生した計画停電やそれに伴う節電要請により、エネルギーマネジメントへの注目が集まりました。そして、国内でも電力システムの改革が検討され始めます。
一方世界では、2015年12月に、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で「パリ協定」が採択され、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることと、21世紀後半には温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとることが、世界の共通の長期目標として掲げられました。この「パリ協定」を契機に、温室効果ガスの主要排出国全てを対象に脱炭素の潮流が加速し、世界各地で、地球温暖化への対策、エネルギー自給率の向上といった観点から、再生可能エネルギーの導入が検討されるようになりました。
そして2016年4月、日本では電力小売が全面自由化となり、新規参入事業者による電力小売事業が拡大。登録を受けた小売電気事業者であれば、一般家庭等への電気の供給が可能となりました。さらには、FIT制度の整備や日本の脱炭素目標の設定により、再生可能エネルギーの導入も徐々に進み、現在も拡大を続けています。
こうしたなか、再生可能エネルギーの導入拡大と電力供給の最適化のために導入が推進されたのが「スマートグリッド」です。
国際エネルギー機関(IEA)が2022年にまとめた世界エネルギー展望(World Energy Outlook)によると、21世紀半ばまでに化石燃料の割合が大幅に低下し、逆に再生可能エネルギーが供給の大半を占めるようになるとされています。
各国の普及施策のあと押しもあり、太陽光や風力などによる再生可能エネルギーは増え続けますが、これらは地理的、天候的な影響を受けるため、安定供給に課題があります。そのデメリットを減らしていくために、スマートグリッドの技術が必要とされています。
スマートグリッドの導入は、再生可能エネルギーの効率的な活用を可能にし、脱炭素社会の実現に向けた重要な役割を果たします。電力の供給をきめ細かくコントロールできることで、今後も増加が予想される電力需要に対しても、ピーク時の電力不足を防ぐなど、より安定的な対応が可能となります。
このように、スマートグリッドは脱炭素社会を支える基盤技術として、その重要性がますます高まっているのです。
上述したように、スマートグリッドの導入により電力の需要と供給を効率化することができます。そのメリットには、以下の3つがあります。
スマートメーター(通称スマメ。次の段落で詳述)によって、電力量が自動計測されます。そのデータがリアルタイムに管理システムで共有され、電力の使用量や使用パターン、ピーク時間帯などを把握できます。さらに、設備ごとの電力計測を設定することで、空調や照明といった項目別の使用状況も確認できるようになります。
電力の見える化は、電気利用の効率化を促進し、電力ユーザーの意識を高めることで、省エネルギーにもつながります。さらに、留守時のセキュリティ管理など、さまざまな分野での活用も可能です。
スマートメーターで得られた詳細なデータにより、電力需要の予測が可能になります。予測された電力需要や太陽光発電からの発電量に合わせて、効率的な送配電を実現します。平常時は、太陽光発電で発電した電力を余すことなく、最大限利用することができます。一方で、予想外の天候の変化による太陽光発電の発電量の低下や、急な電力需要ピークなど予想外の状況が発生した際も、スマートグリッドによって測定されるリアルタイムの発電・電力需要データに基づいた電力需給のコントロールによって、安定的な送配電を実現できます。
これまでの電力網は遠隔地の大規模発電施設から電力供給を受けていたため(集中型電源)、災害や事故により、停電が発生することもありました。スマートグリッドでは、災害等で大規模電源からの供給が途絶えた場合でも、ネットワーク内の分散型電源から電力を供給することで、停電のリスクを低減できます。
スマートメーターとは通信機能を備えた電力メーターのことで、電気の使用量を30分単位で計測し、遠隔でメーターの数値を取得することができます。このスマートメーターを家庭、オフィスビル、事業所など使用場所に応じた管理システム、エネルギーマネジメントシステム(EMS:Energy Management Systemの略)と連携させることで、電力の使用量を見える化することができます。
<スマメにより実現するエネルギーマネジメントシステム>
似た仕組みにBAS(Building Automation System)があります。BEMSが建物で使用するエネルギーを監視・制御するのに対し、BASは建物の空調・防犯セキュリティなどを全般的に管理し、安全性や業務効率化、コスト削減などを実現します。
参考:経済産業省資料より「エネルギーマネジメントの全体像」
国土交通省「地域エネルギーマネジメント支援システム」
2023年に開催された「第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」で採択された決定文書では、再生可能エネルギーについて、「2030年までに発電容量を世界全体で3倍にする」という目標が掲げられました。日本では現在、スマートグリッドの普及と同時にスマートシティの実現に向けた実証実験が各地で行われています。
たとえば九州電力では、スマートグリッドの実証実験を佐賀県と鹿児島県で進めているほか、鹿児島県では地元企業や大学などと連携した「かごしまデジタルスマートシティ推進協議会」も発足させています。
ほかにも、産官学連携などによるスマートグリッドの取り組みは各地に広がっています。
という大きなメリットがあるからです。
都市の未来のために、再生可能エネルギーを核としたスマートグリッドを普及させることで、エネルギーを市民に効率よく供給するだけでなく、そのネットワークを活用して新たなライフスタイルを創造していく。デジタル技術を活用して都市のインフラを最適化し、市民の生活だけでなく企業における快適性も向上させる。電力分野では、災害などによる非常時の影響を低減し、復旧を早める——このようなレジリエントな社会の実現のためにも、スマートグリッドの普及、スマートシティの実現は不可欠となっています。
参考:外務省「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)結果概要」
九州電力『「かごしまデジタルスマートシティ推進協議会」が発足しました』
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東芝電力系統システム部の設計士を経て、2022年より東京理科大学理工学部 電気電子情報工学科助教、2024年より現職。専門は電力システム工学。筑波大学ではSmart Grid Labを主宰。電力とデータを結びつけ、必要なときに十分な自然エネルギーを利用するためのアルゴリズムやモデル開発、その実証実験までを行なっている。
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