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エルニーニョ現象とは?発生の仕組みから2026年「猛暑なのになぜ?」まで徹底解説

2026年8月、気象庁は「2026年春からエルニーニョ現象が発生しているとみられ、冬にかけて続く見込み(確率100%)」と発表しました。エルニーニョと聞くと、「冷夏になりやすい現象」と学校で習った記憶がある方も多いのではないでしょうか。

しかし近年の様子は異なります。アメリカ海洋大気局(NOAA)は、2026年10〜12月に「非常に強いエルニーニョ」となる確率が90%を超えると予測しました。海面水温の上昇幅が通常を大きく上回る、報道などで「スーパーエルニーニョ」と呼ばれる規模となる一方、各社の予報では2026年は猛暑になる見通しが示されているのです。「エルニーニョ=冷夏」のはずなのに、なぜ猛暑が予測されているのでしょうか。

本記事では、エルニーニョ現象の定義や発生の仕組みといった基礎知識から、2026年最新の予測データ、そして電力調達やサプライチェーンに関わる企業リスクまで、一気に解説します。

エルニーニョ現象とは?気象庁の定義からわかりやすく解説

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけての海面水温が平年より高い状態が続き、世界各地の気温や降水量などに影響を及ぼす気象現象です。

気象庁は、下図の「NINO.3」と呼ばれる太平洋赤道域の海面水温で、エルニーニョ現象を判定しています。この海域の水温の5か月間の平均値が、基準値と比べて0.5℃以上高い状態が6か月以上続くと、エルニーニョ現象です。

「たった0.5℃」と思われるかもしれませんが、広大な海域の海面水温がこの水準で半年以上高止まりするのは、地球規模で大気と海洋の状態に大きな変化が生じているサインです。エルニーニョ現象は、地球温暖化による気候変動とは異なる自然現象で、2〜7年に一度のペースで発生します。そして、発生するたびに世界各地の気候に変調をもたらします。

次の章から、その仕組みと2026年の最新動向を詳しく見ていきましょう。

エルニーニョ現象が発生する仕組み

平常時とエルニーニョ現象の発生時では以下のような違いがあります。

海面水温の分布が変わると、それに連動して「ウォーカー循環」と呼ばれる熱帯の大気の流れも位置を変えます。雨を降らせる積乱雲の発生エリアが東へずれることで、世界各地の天候に異変が連鎖していくのです。

エルニーニョ現象が世界の天候に与える影響

エルニーニョが発生すると、世界各地で「雨が降る場所」と「乾く場所」のコントラストが強まります。一般的に、南米南部や米国南部、アフリカの角、中央アジアでは降水量が増加し、オーストラリアやインドネシア、南アジアの一部では干ばつが起こりやすくなります。

そして2026年は、その影響が例年以上に大きくなる可能性が指摘されています。アメリカ海洋大気局(NOAA)は2026年8月13日時点の見通しで、2026年10〜12月に「非常に強いエルニーニョ」となる確率を95%と発表しました。そうなれば、観測体制が整った1950年以降の記録のなかでも最大級の規模に位置づけられるとしています。さらに、エルニーニョ自体が2027年の春先まで続く確率は97%とされており、影響の長期化も懸念されています。

なお、この規模のエルニーニョは、報道などで「スーパーエルニーニョ」と呼ばれることがあります。正式な気象用語ではなく、海面水温が平年より+2℃を超える非常に強いエルニーニョを指す俗称です。過去に発生したのは1982〜83年、1997〜98年、2015〜16年の3回のみという稀な現象で、いずれも中南米や東南アジア、オーストラリアで豪雨や干ばつが相次ぎ、食料生産などに大きな影響を与えました。2026年はこの数十年に一度の規模に達するおそれがあるのです。

引用元:エルニーニョ現象発生時の6〜8月(北半球の夏)の天候の特徴|気象庁

エルニーニョ現象が日本に与える影響

日本でも、エルニーニョは季節ごとにさまざまな影響をもたらします。気象庁の統計でみられる代表的な傾向は、次のとおりです。

季節エルニーニョ時の傾向
太平洋高気圧の張り出しが弱まり、冷夏になりやすい。日照時間が少なく、西日本の日本海側では降水量が多くなる傾向
梅雨太平洋高気圧の勢力が弱いため、梅雨が長引きやすい
西高東低の気圧配置が弱まり、暖冬になりやすい
台風発生場所が南東にずれ、日本接近時に海上を進む距離が長くなるため強い勢力を保ったまま接近する場合がある

夏の太平洋高気圧の張り出しが弱まり、気温が低く日照時間が少なくなるという傾向が、「エルニーニョ=冷夏」というイメージの根拠です。また台風については、発生場所が通常より南東にずれることで、日本接近時に海上を進む距離が長くなり、強い勢力を保ったまま接近する場合があります。

ただし後述のとおり、近年はこの「冷夏」の傾向が当てはまらなくなってきています。その理由は記事後半で詳しく解説します。

ちなみに、逆の「ラニーニャ」が来るとどうなる?エルニーニョとの違い

エルニーニョの正反対の現象が「ラニーニャ現象」です。エルニーニョが貿易風の弱まりで起こるのに対し、ラニーニャは貿易風が強まることで起こります。

貿易風が強まると、暖かい海水が西側により強く吹き寄せられ、東側(南米沖)の海面水温は平年より低くなります。日本への影響もエルニーニョとは逆になり、夏は猛暑、冬は厳冬になりやすいのが特徴です。両者の違いを整理すると、次のようになります。

エルニーニョ現象ラニーニャ現象
貿易風弱まる強まる
監視海域の水温平年より高い平年より低い
日本の夏冷夏傾向猛暑傾向
日本の冬暖冬傾向厳冬傾向

このように、太平洋の貿易風の「強・弱」が、地球の裏側にいる私たちの夏や冬の体感を左右しているのです。

【2026年最新】エルニーニョなのになぜ猛暑になるの?地球温暖化との関係

ここまで「エルニーニョ=冷夏」と説明してきました。しかし冒頭で触れたとおり、2026年の夏は猛暑が予測されています。この矛盾はどう説明できるのでしょうか。

大きく影響しているのが、地球温暖化による気温の「底上げ」です。

たしかにエルニーニョには、日本の夏の気温を下げる方向に働く力があります。しかし近年は、温暖化によって気温そのもののベースラインが大きく押し上げられているため、エルニーニョの冷却効果だけでは打ち消しきれないのです。実際に前回エルニーニョが発生した2023年の夏は、日本の平均気温の偏差が+1.76℃と、1898年の統計開始以来最も高温でした。もちろん原因は気温の底上げだけでなく、複数の要因が重なった結果ですが、「冷夏になりやすい年」が、観測史上トップクラスの猛暑になったのです。

2026年も同じ構図が予測されています。気象庁は、エルニーニョが発生しているとみられる状態も含めて予測したうえで、2026年夏の日本付近は高温になる可能性が高いと予想しています。ウェザーニューズの予測でも、2026年6〜11月の日本の平均気温は全国15地点平均で平年より+0.75〜+1.2℃高く、猛暑となる見込みです。

エルニーニョによる気象への影響と、温暖化による底上げ。この2つが掛け合わさることで、2026年は単なる猛暑にとどまらない、極端な気象が起こるリスクが高まっています。

加えて、より長期的なリスクも指摘されています。エルニーニョは通常1年ほどで終わる一時的な現象ですが、スーパーエルニーニョの場合、一時的な影響にとどまらないおそれがあるのです。

2025年12月にNature Communicationsへ掲載された研究(ソウル大学のJong-Seong Kug氏ら)では、過去3回のスーパーエルニーニョを分析した結果、この規模の現象が「気候のレジームシフト」を引き起こす確率を大きく高めることがわかりました。気候のレジームシフトとは、気温や土壌の水分量などが急激に変化し、エルニーニョが収まったあとも数年から数十年にわたって元に戻らなくなる状態を指します。研究では、これを「短命な気候ショックを、より長く続くリスクに変えてしまう」と警告しています。

つまり、一時的な異常気象で終わるはずだったものが、地球の気候を「別のステージ」へ押し上げてしまう引き金になりかねない。2026年のエルニーニョは、その規模に達するおそれがあるからこそ注目されているのです。

エルニーニョ現象の過去の主要事例(1997年・2023年)

エルニーニョが社会にどれほどの影響をもたらすのか。ここでは経済や暮らしへのインパクトが特に大きかった2つの事例を、世界と日本それぞれの視点から取り上げます。

1997〜98年:世界経済を揺るがしたスーパーエルニーニョ

観測史上のスーパーエルニーニョは、1982〜83年、1997〜98年、2015〜16年の過去3回のみです。なかでも特に大きな被害をもたらしたのが、1997〜98年の事例です。エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差は最大+3.6℃に達し、アフリカ東部からアジア、南米まで広範な地域に影響を及ぼしました。この年のエルニーニョによって、世界各地でのインフラ破壊や農作物の激減、エネルギー市場の混乱などが起こり、その経済損失は340億ドルと推定されています。エルニーニョが単なる気象の話ではなく、世界経済を揺るがす規模の現象であることを示した事例です。

2023〜24年:エルニーニョ下でも記録的猛暑となった日本

一方、日本で記憶に新しいのが、2023年春〜2024年春のエルニーニョです。本来なら冷夏になりやすいはずでしたが、複数の要因が重なり、結果は正反対でした。2023年夏の全国平均気温は1898年の統計開始以降で当時最も高い記録を更新。総務省消防庁によると、同年5月から9月の熱中症による救急搬送人員は9万1,467人に上り、当時としては調査開始以降で過去2番目の多さとなりました。猛暑日の増加により電力需要が急増したほか、農業では品質低下や不作の懸念も生じました。「エルニーニョ=冷夏」という傾向だけでは説明できない事例も見られることを象徴する年だったといえます。

この2つの事例が示すのは、エルニーニョの影響が気象だけにとどまらず、電力・農業・経済といった社会の根幹にまで及ぶという事実です。

エルニーニョが企業・ビジネスに与える影響

ここまで、エルニーニョが世界の天候や日本の気候にもたらす影響を見てきました。では、それは私たちの事業活動にとって、具体的にどんなリスクになるのでしょうか。企業・ビジネスへの影響を具体的に見ていきます。

電力の安定供給や電気代への影響

気候の変動は、電気の安定供給や価格にも影響します。

気象庁によると、2026年8月20日までの気温は、東北太平洋側や関東甲信地方の一部、奄美地方を除き、平年を上回りました。また、8月25日に発表された3か月予報では、9~11月の平均気温は全国的に「高い」見込みとされており、秋にかけても高温傾向が続くと予想されています。厳しい暑さが続けば冷房需要が跳ね上がり、電力需要のピークは高止まりします。

こうした需要の高まりは、エネルギーの調達コストにも直結します。市場価格に連動した電力契約では、需給が逼迫すれば調達コストが想定を超えて膨らむリスクがあります。また、こうした異常気象による影響をこれ以上深刻化させないためには、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を社会全体で減らし、脱炭素を進めていくことも重要です

価格変動への備えと脱炭素を両立する有力な選択肢のひとつが、再生可能エネルギーの電力を長期・固定価格で調達する「PPA(電力購入契約)」です。あらかじめ価格を固定しておくことで、市場価格の変動による影響を抑えやすくなります。天候による発電量の変動も考慮する必要がありますが、脱炭素とコスト安定を同時に実現する手段として、いま多くの企業が導入を検討しています。

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拠点の稼働停止リスクと事業継続への影響

エルニーニョの影響は、拠点の操業そのものにも及びます。記事前半で見たとおり、1997〜98年のエルニーニョでは世界各地でインフラの破壊や農作物の激減が起こり、経済損失は340億ドルと推定されています。海外に生産拠点や調達先を持つ企業にとって、こうした地域の被災は自社の操業に直結します。

国内についてはエルニーニョとの因果関係は明確ではありません。ただ、豪雨や暴風による浸水・損壊に加えて、広域停電や交通網の寸断によって操業停止に追い込まれることがあります。 

また、自社の拠点が無事でも、部品の供給元や業務の委託先が被災すれば、生産ラインは止まります。拠点ごとのハザードマップの確認、非常用電源の確保、調達先の分散といった備えを、気候リスクを織り込んだBCP(事業継続計画)として平時のうちに点検しておくことが、被害を最小限に抑える鍵になります。

BCPの策定手順についてはこちらの記事もご参照ください。
>「BCP(事業継続計画)」の策定手順をわかりやすく解説

サプライチェーンへの打撃(パナマ運河の通航制限)

エルニーニョの影響は、はるか海の向こうの物流網にも及びます。その象徴が、2023〜24年に世界の海運を混乱させたパナマ運河の通航制限です。

太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河は、閘門(こうもん)に水を出し入れして船を上下させる仕組みで動いており、その水を近くのガトゥン湖から引いています。ところが2023年、パナマの年間降水量は平年比26%減と過去3番目の低水準となり、エルニーニョの影響も指摘された少雨による干ばつで湖の水位が著しく低下しました。

水不足に対応するため、運河当局は通航できる船の数を段階的に絞り込みました。通常1日36隻だった通航枠は、2023年12月には22隻まで減少しました。通航を待つ船が運河の入口に列をなし、通航枠を確保するためのオークション価格は一時250万ドルにまで高騰したと報じられています。

迂回を選べば、アフリカ南端の喜望峰を回る大幅な遠回りとなり、いずれにせよ輸送コストの増加は避けられません。パナマ運河は日本から米国東岸へ向かう貨物の一部も経由しており、遠い国の干ばつが、日本企業の物流コストや調達リードタイムに跳ね返ってくるのです。気候変動が、サプライチェーンの「見えないリスク」になっていることを示す好例といえます。

農産物・コモディティ価格の高騰

身近な食品の値上げにも、エルニーニョや異常気象が影を落としています。2024年は、産地の異常気象によって主要なコモディティ(国際商品)が軒並み高騰し、食品メーカーや小売・外食業の調達を直撃しました。代表例が、次の3品目です。

カカオ:チョコレートの原料であるカカオは、世界生産の70%以上を占める西アフリカのコートジボワールとガーナで、不作により価格が高騰しました。指標となるロンドン先物は2024年4月に1トン1万ポンド付近まで上昇し、2023年末からわずか4か月で約3倍の水準に達しました。

コーヒー:インスタントコーヒーに使われるロブスタ種の最大生産国ベトナムが深刻な干ばつに直面し、収穫量が大きく減少しました。供給不安を受けて、ロブスタ種の先物価格は2024年4月24日、少なくとも16年ぶりの高値をつけました。

オリーブ油:世界生産の約4割を占めるスペインで干ばつが発生し、生産量が大きく減少。日本でも食用油メーカーが家庭用オリーブオイルを最大64%値上げするなど、店頭価格に直接跳ね返りました。

こうした原材料高に対し、企業も手をこまねいているわけではありません。たとえば食品業界では、カカオを使わずにチョコレートの風味を再現する「カカオフリー」の代替品開発が進むなど、気候リスクに左右されにくい商品づくりへの模索が始まっています。原材料の調達リスクを見据えた適応戦略が、これからの企業競争力を左右するといえるでしょう。

異常気象を前提に、いま企業がすべき備えとは

エルニーニョ現象は、太平洋の広大な海域の海面水温が平年より高くなり、世界各地の天候を変える気候現象です。2026年は発生が確認され、非常に強いエルニーニョに発展する可能性も指摘されています。エルニーニョ下では日本は冷夏になりやすい傾向があります。しかし、複数の要因が重なると2023年のようにエルニーニョ下でも記録的猛暑となる年があり、2026年も気象庁は平年より高い気温を見込んでいます。

そしてその影響は気象にとどまらず、電力調達やサプライチェーンを揺るがす経営リスクでもあります。異常気象が前提となる時代には、BCP(事業継続計画)の一環として、こうした気候リスクへの備えを見直しておくことが欠かせません。自社の備えを今こそ見直してみてはいかがでしょうか。

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参考文献

Supervisor 監修者
宇野 日和 Uno Hiyori 気象予報士/気象キャスター/流域治水アンバサダー

明治大学総合数理学部現象数理学科卒業。在学中に気象予報士試験に合格。卒業後は気象キャスターとしてテレビ・ラジオに出演し、HTB 北海道テレビでは 4 年間、気象デスクおよび出演業務に従事。防災や地球温暖化をテーマとした講演活動も行う。 現在は ABEMA NEWS にて気象デスク・出演業務を担当するほか、オフィス気象キャスター株式会社にて気象概況の作成や、研修生への原稿・カメラ指導を担当。

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