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ネットゼロとは?基礎知識と国内動向を解説
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企業の脱炭素経営を進めるうえで、電気の調達元を意識することはとても重要です。そもそも日本国内の電気はどのような発電方法で作られているのでしょうか。本記事では、2025年4月に公表された最新データを元に、日本国内の発電電力量の割合(電源構成)の現状と変化を解説します。
資源エネルギー庁が2025年4月に公表した最新データによると、2023年度の日本の電源構成は火力発電が約68.6%を占めています。内訳は天然ガス(LNG)が32.9%、石炭が28.3%、石油等が7.4%となっており、これらの化石燃料による発電が日本の電力供給の約7割を担っている状況です。
一方、再生可能エネルギーは、2013年度の10.9%から2023年度に22.9%まで増加しました。なかでも太陽光発電が9.8%と最も多く、2013年度の1.2%から大幅な増加となっています。次いで水力が7.6%、バイオマスが4.1%、風力が1.1%、地熱が0.3%となっており、太陽光発電同様、いずれも2013年度比で増加しています(電源構成比率の変化については、「日本の発電割合の変化」の段落で詳述します)。原子力発電の割合は8.5%と、東日本大震災前の約30%と比べると低い稼働率ですが、原子力発電による発電が0だった2014年度以降、発電比率を高める傾向になっています。

これらの数値から、日本の電力供給が化石燃料に大きく依存していること、そして再生可能エネルギーが着実に増加しつつあることがわかります。
上記は日本全体のデータですが、地域別に細分化して見てみましょう。電源構成は地域によって大きく異なります。これは、各地域の地理的条件や電力の需給構造、さらには原子力発電所の再稼働状況などが影響しているためです。
再生可能エネルギーの割合が比較的高いのが北海道や北陸、中国エリアです。関西や九州エリアでは原子力発電が稼働している影響で、火力発電への依存度が他地域と比べて低くなっています。一方、東京電力管内では電力需要の大きさと原子力発電所の停止が影響し、火力発電の割合が特に高くなっています。

このような地域差は、企業が電力調達を検討する際の重要な要素となります。事業所の所在地によって、電力の単価が異なる可能性があるためです。また、地域の再エネ電源へのアクセスのしやすさや、季節・時間帯によっては供給過多となり再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス)の出力制御(出力抑制)の影響を受ける可能性もあります。
出力制御について詳しくは下記の記事をご覧ください。
>出力制御とは?太陽光発電などの出力抑制の仕組みや見通しを解説
2013年と2023年の電源構成、さらにはエネルギー基本計画で示された2030年度および2040年度の電源構成見込みを下記の表に整理しました。
| 電源種別 | 2013年度 | 2023年度 | 2030年度 (見通し) | 2040年度 (見通し) | 
| 火力発電(合計) | 88.2% | 68.6% | 41%程度 | 3〜4割程度 | 
| └ 石油等 | 14.4% | 7.4% | 2%程度 | 数値の公開なし | 
| └ 天然ガス(LNG) | 40.9% | 32.9% | 20%程度 | 数値の公開なし | 
| └ 石炭 | 32.9% | 28.3% | 19%程度 | 数値の公開なし | 
| 原子力 | 0.9% | 8.5% | 20〜22% | 2割程度 | 
| 再生可能エネルギー(合計) | 10.9% | 22.9% | 36〜38% | 4〜5割程度 | 
| └ 太陽光 | 1.2% | 9.8% | 14〜16% | 23〜29%程度 | 
| └ 水力 | 7.3% | 7.6% | 11% | 8~10%程度 | 
| └ バイオマス | 1.6% | 4.1% | 5% | 5~6%程度 | 
| └ 風力 | 0.5% | 1.1% | 5% | 4~8%程度 | 
| └ 地熱 | 0.2% | 0.3% | 1% | 1~2%程度 | 
大きく減少した火力発電ですが、その中でも石油等による発電が約半分に減少しています。これは、東日本大震災直後に原子力発電の代替として急増した石油火力が、その後の10年間で天然ガス火力や再生可能エネルギーに置き換わってきたことを示しています。見込みでは今後も火力発電は比率を下げ、2040年度にはさらに現状の半分近くまで減少する予測となっています。
原子力発電は2014年度の0%から2023年度には8.5%まで回復しました。震災前には約30%でしたが、安全審査を通過した原発から徐々に再稼働をしている現状を反映しています。2040年度の稼働は全体の2割程度となる見込みです。
一方、再生可能エネルギーの比率は10.9%から22.9%へと上昇し、特に太陽光発電は1.2%から9.8%へと約8倍になりました。この飛躍的な成長には、固定価格買取制度(FIT)の後押しと技術革新による発電コストの低下が大きく寄与しています。今後も太陽光発電への期待は大きく、2040年度には23~29%の比率を占める予測となっています。
各国の電源構成を比較すると、それぞれの国のエネルギー事情が見えてきます。

欧州各国では再エネの割合が40%を超える国も多く、特にイギリスは風力発電を中心に再生可能エネルギーを推進し、2024年9月には石炭火力発電を廃止しています。
>イギリスが石炭火力発電を廃止、産業革命以来142年の歴史に幕 – BBCニュース
一方、中国は石炭火力が約65%を占めていますが、再生可能エネルギーも急速に拡大しています。変動性再生可能エネルギー(太陽光および風力)の割合は2014年の3.2%から2024年の10年間に18.1%に急増して発電電力量そのものは10倍になっています。
アメリカは火力が約60%を占めつつ、再生可能エネルギーと原子力がそれぞれ20%程度となっています。
電源構成は国のCO2排出量に大きく影響します。石炭火力は1kWhあたり約864gのCO2を排出するのに対し、天然ガス火力は約476g、原子力や再生可能エネルギーはほぼゼロです。火力発電への依存度が高い日本は、電力由来のCO2排出量削減が大きな課題となっています。

これまで見てきたデータを踏まえると、日本の電源構成には、大きく3つの特徴があります
日本の火力発電依存度は7割強で、欧米諸国はもちろん、石炭大国である中国よりも高い水準にあります。この高い依存度は、エネルギー安全保障上のリスクをはらんでいます。化石燃料の安定供給が国際情勢などの影響で途切れる可能性があり、それが電力不足を招くことにつながるからです。また、供給不安や世界情勢によって化石燃料の価格が変動し、電気料金に直接影響して企業の経営を圧迫する要因ともなります。2022年には、ウクライナ情勢等のさまざまな要因がエネルギー価格の高騰につながり、多くの企業が電気料金の上昇に苦しみました。
しかし、現時点では火力発電に頼らざるを得ない事情もあります。太陽光や風力といった再生可能エネルギーは天候に左右されるため、電力の安定供給を維持するには、出力調整が可能な火力発電が必要です。また、原子力発電の再稼働が限定的な中、大規模な電力需要に対応できるのは火力発電しかないという現実もあります。
とはいえ、10年前と比較すると火力発電の割合は減少傾向にあり、今後もさらなる削減が見込まれています。
東日本大震災後、日本の原子力発電はほぼ全面停止の状態に陥りました。しかし、厳格な安全審査を経て、一部の原発が再稼働を始めています。2023年時点で原子力発電の割合は8.5%まで回復しましたが、これは先進国の中では低い水準です。フランスでは約62.8%、アメリカでは約18%を原子力発電が占めています。
原子力発電はCO2をほとんど排出しないため、カーボンニュートラル実現に向けた重要な選択肢の一つとされています。政府の第7次エネルギー基本計画では、2040年度の原子力発電比率を2割程度とする目標を掲げていますが、地元自治体との合意形成や安全対策の強化など、多くの課題が残されています。
再生可能エネルギーの導入は、この10年で飛躍的に進みました。先述のとおり、再エネ発電比率は2013年度の10.9%から2023年度には22.9%へと上昇しました。2024年度末までにFIT制度で運転開始した設備容量は移行認定を含めて累計で約9000万kWに上ります(このうち7000万kW が太陽光)。
政府は2030年度の電源構成に占める再エネ比率を36〜38%、2040年度の再エネ比率を4〜5割まで高める目標を掲げており、今後もさらなる導入拡大が見込まれます。企業としては、この流れを好機ととらえ、自社の脱炭素経営に活かしていくことが求められます。
日本で利用されている再エネ電源は、導入量の多い順に太陽光、水力、バイオマス、風力、地熱となっています。それぞれに特徴があり、立地条件や用途によって向き不向きがあります。
太陽光発電は、太陽の光エネルギーを直接電気に変換する発電方式です。日本国内の再エネ電源の中で最も導入が進んでおり、2023年度の電源構成の9.8%を占めています。住宅の屋根に設置する非事業用太陽光発電(10kW未満)と、事業所の屋根や地上に設置する事業用太陽光発電(10kW以上)に大別されます。さらに、出力1MW以上の大規模な太陽光発電はメガソーラーと呼ばれます。
この急速な普及の背景には、技術革新による発電コストの低下があります。太陽光発電の導入コストは日本国内でも10年前の2分の1程度まで下がり、電力価格の上昇もあって企業にとっても採算が取れる電源となってきています。さらに、固定価格買取制度(FIT)による買取価格保証も導入の後押しになりましたが、近年では自家消費やPPAによる導入のメリットも出ています。
また、屋根や遊休地があれば比較的簡単に導入でき、メンテナンスも他の発電方式と比べて容易です。
ただし、太陽光発電には課題もあります。地上設置の大規模な設備では、自然環境への影響が大きく地域との共生が課題になっています。また、地域によっては大量導入が進んだ影響により、需要を供給が上回る時間帯が生じやすくなり、その結果として出力制御が頻繁に行われる地域も出てきています。
なお、出力制御とは電力の需給バランスや送電線の容量を維持するために、発電量を調整することを指します。詳しくは以下の記事をご参照ください。
>出力制御とは?太陽光発電などの出力抑制の仕組みや見通しを解説
企業が太陽光発電を導入する際は、需要に合わせた適切な設備容量や、余剰電力の売電方法、蓄電池との組み合わせ等を検討することも必要です。また、初期費用を負担せずに太陽光発電を導入できる「コーポレートPPA」という方法を活用するのもおすすめです。
>コーポレートPPAとは?オンサイトPPAとオフサイトPPAの違いをわかりやすく解説!
土地の有効利用の観点からは、屋根など建物への設置をさらに進める動きや、農地をそのまま活用した営農型太陽光発電などもあります。さらに、今後の期待技術としてペロブスカイト太陽電池があります。これまでの太陽電池にはない利点として、軽量性や柔軟性が生み出す用途の広さ、そして弱い光でも発電できる変換効率の高さなどがあり、実用化に向けた技術開発や実証試験が急速に進んでいます。
>ペロブスカイト太陽電池とは?構造やメリット・デメリットを詳しく解説
水力発電は日本で最も歴史が古い再エネ電源です。明治時代から利用が始まり、戦前は日本の主要電源でした。現在も電源構成の約8%を占め、安価で安定した再エネ電源として重要な役割を果たしています。大規模なダム式水力発電と、河川の流れを利用する水路式などの小水力発電(1MW未満)に分けられます。
日本は急峻な地形と豊富な降水量に恵まれており、水力発電に適した条件を備えています。水力発電の最大の特長は、24時間安定して発電できることです。太陽光や風力のような出力変動がないため、ベースロード電源(常に一定量を安定して発電できる電源)として電力供給の安定化に貢献しています。また、水力発電の原理を使った揚水発電は余剰になった太陽光などの電気を蓄えて、発電のタイミングを調整できるため、需給調整力としても機能します。
しかし、大規模なダム式の水力発電の新規開発は、環境への影響や適地の減少により限界に近づいています。そのため現在は、既存施設の改修による発電効率の向上や、ダムを使わない水路式やダムの方流水を使った小水力発電の新規導入が進められています。
バイオマス発電は、有機性廃棄物、木質チップ、農業残渣、家畜の糞尿、食品廃棄物などの生物由来の資源を燃料として発電する方式です。近年急速に導入が進んでおり、2023年度で全発電量の約4%を占めています。発電時の燃焼によってCO2を排出しますが、燃料となるバイオマス資源は元になる植物の成長過程でCO2を吸収することで、発電によるCO2排出は実質ゼロとみなされる場合があります。
日本各地でバイオマス発電所の導入が進んでおり、林地残材や製材所の端材を活用した木質バイオマス発電や、一般廃棄物による廃棄物発電、食品工場の廃棄物を利用したバイオガス発電など、地域資源を有効活用する取り組みが広がっています。また、火力発電所で石炭と木質ペレットを混焼する方式もあります。
課題は熱利用と輸入バイオマス燃料の持続可能性です。バイオマス発電の効率は30%程度であり、コジェネレーションなどにより排熱の活用が望まれます。また、国内のバイオマス資源だけでは需要を満たせず、輸入バイオマスに頼る発電所も多くなっています。輸送にかかるCO2排出や、適切な森林管理を元にした調達でないと森林破壊のリスクにつながることなど、サプライチェーン全体での環境負荷を考慮する必要があります。
風力発電は、風の力で羽根(ブレード)を回転させ、その動力で発電する方式です。陸上風力と洋上風力に大別され、2023年度で電源構成の約1%を占めています。欧州では主力電源の一つですが、日本では系統制約や環境アセスの手続きの長期化などから、導入が遅れています。
陸上風力は、東北地方や北海道の日本海側など風況の良い地域で導入が進んでいます。しかし、風況条件や系統制約などで適地が限られることや、野生生物保護、騒音問題、景観への配慮など、地域との共生が必要な課題も多くあります。一方、洋上風力は上記のような人間への直接的な影響が比較的少なく、安定した風が得られるため、海に囲まれた日本では今後の拡大が期待されていますが、沿岸の生態系や漁業への影響を考慮する必要があります。
政府は2040年までに洋上風力の設備容量を3,000万〜4,500万kWまで拡大するという見込みを立てており、実現すれば太陽光発電と合わせて日本国内の再エネ比率の向上に大きく貢献します。
地熱発電は、地下のマグマの熱で温められた蒸気や熱水を利用して発電する方式です。2023年度で電源構成の0.3%と導入量は少ないものの、日本は世界第3位の地熱資源国であり、大きなポテンシャルを秘めています。火山国である日本の地理的特徴を活かせる発電方式といえます。温泉の高温の温水を使った小規模なバイナリー方式の地熱発電もあります。
地熱発電の最大の利点は、天候に関係なく24時間安定して発電できることです。設備利用率(常に最大限発電を行った場合を100%として実際に発電した割合)は70%以上と高く、ベースロード電源として優れています。また、発電後の熱水は温泉や地域暖房に利用でき、地域振興にも貢献します。
しかし、開発には多くの課題があります。有望な地熱資源の多くが国立公園内にあるため開発が制限されること、温泉事業者との調整が必要なこと、調査から運転開始まで10年以上かかることなど、参入障壁が高いのが現状です。それでも、安定した再生可能エネルギーとして注目度は高まっており、規制緩和や技術革新により、今後の導入拡大が期待されています。
ここまで日本における主要な再エネ発電の方法を紹介しました。より詳しくは下記の記事をご参照ください。
>再生可能エネルギーとは?再生可能エネルギーの種類やメリットを解説
日本は2050年カーボンニュートラルの実現を目指しており、その中間目標として2030年度には温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを掲げています。この目標達成には、電源構成の大幅な転換が不可欠です。エネルギー基本計画で、政府は2030年度の電源構成として再エネ36〜38% 、2040年度の電源構成として再エネ4〜5割という目標を設定しました。カーボンニュートラルを目指す2050年度に向けては更なる再エネの導入が求められます。
エネルギー基本計画について詳しくは以下の記事をご覧ください。
>エネルギー基本計画とは?第7次の5大ポイントも解説|企業がとるべき戦略とはz
そのため、再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、さまざまな政策が進められています。FIT制度からFIP制度(フィードインプレミアム)への移行により、市場価格と連動した買取制度が始まりました。FIPについて詳しくは以下の記事で解説しています。
>FIP制度とは?FIT制度に追加される再生可能エネルギーの買い取り制度を詳しく解説
また、技術面でも大きな進歩が期待されています。太陽光パネルの発電効率向上、風力発電機の大型化、新型地熱発電技術の開発など、発電コストの低下と効率向上が進んでいます。特に注目されているのが蓄電池技術の進化です。大規模蓄電システムの普及により、再生可能エネルギーの出力変動問題が解決されれば、導入はさらに加速するでしょう。
>系統用蓄電池とは?注目の電力ビジネスをわかりやすく解説します
企業にとって、こうした変化は大きなチャンスです。RE100への自発的な参加企業が増え、取引先を含むサプライチェーン全体での脱炭素化が求められています。このため、脱炭素化に必要な再生可能エネルギーの調達は他社との差別化を図る競争力の源泉です。このため、自社の電力調達において再生可能エネルギーの比率を高めることは、環境配慮といった社会貢献のレベルに留まらず、ビジネス戦略においても重要な要素となっています。
企業の脱炭素化の推進は、エナリスにお任せください
企業が取り組むべき環境配慮の中でも、ここで述べた通り「脱炭素」は昨今の大きなテーマです。エナリスでは、お客さまの脱炭素推進を力強く後押しするさまざまなサービスをご用意しております。ぜひ下記のページをご覧ください。
 
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