GX・脱炭素といえばエナリスエナリスジャーナルエネルギー需給調整市場とは?仕組みやメリット、参入の「現実」と成功のポイントをわかりやすく解説

需給調整市場とは?仕組みやメリット、参入の「現実」と成功のポイントをわかりやすく解説

脱炭素社会への移行が推進される中、企業が保有する設備やエネルギーに対する考え方も変わりつつあります。これまでは、電気は「電力会社から購入して消費するもの」、設備は「製品やサービスを生み出すためにただただコストがかかるもの」でした。

しかし今、自社の発電機や蓄電池、あるいは空調設備などの設備が、「電力市場に参加して経済的メリットにつながる資産」になる可能性を秘めています。その機会のひとつが、今回解説する「需給調整市場」です。

現在需給調整市場で約定されるリソースの多くは火力発電や揚水発電ですが、企業が保有する高圧以上の需要設備(電力消費リソース)等を活用しての参加も可能です。また、2026年度から低圧リソースの参加が可能になる予定で、間口の拡大が期待されています。

本記事では、エネルギー関連の業種ではない一般企業の担当者に向けて、需給調整市場の基本的な仕組みから、企業が参加するメリット、そして変化する市場環境の現実と参入のポイントまでを、専門用語を噛み砕いてわかりやすく解説します。

需給調整市場とは?「調整力」を取引する仕組みを解説

需給調整市場とは、電力の需要と供給のバランスを維持するために必要な「調整力」を、一般送配電事業者が市場取引によって調達する仕組みです。

電気の需要と供給のバランスが崩れそうなときに、発電量を増減したり電気の使用量を調整したりして需給を整える力を「調整力」と呼び、調整力を取引する場が需給調整市場です。

そもそも、なぜ「需給調整」が必要なのか

私たちが普段使っている電気には、「電気を使う量(需要)」と「電気をつくる量(供給)」を一致させ続けなければならないという大原則があります。これを専門用語で「同時同量の原則」と呼びます。

もし、このバランスが崩れてしまうとどうなるでしょうか? 電気の周波数が乱れ、工場の機械が停止したり、最悪の場合は大規模な停電(ブラックアウト)を引き起こすリスクがあります。

しかし、電気の使われ方は刻一刻と変化しますし、天候によって出力が変わる太陽光発電などの再生可能エネルギーが増えれば、供給側のコントロールも難しくなります。このズレを埋めて、需給バランスを保つために必要な予備の電力のことを「調整力」と呼びます。

参考:経済産業省 資源エネルギー庁|日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか

需給調整市場=調整力を売買するマーケット

かつて調整力は、各エリアの電力会社(旧一般電気事業者)が、自社電源の運用や個別の相対契約によって確保していました。

電力システム改革により発電・送配電・小売が分離されてから2021年3月までは、調整力をエリアごとに公募(調整力公募)で調達する方式が採られていました。こうしたエリア単位の調達を見直し、調整力を全国で一元的に調達することで、透明性・効率性・競争性を高める目的で開設されたのが「需給調整市場」です。

現在の需給調整市場では、一般送配電事業者が買い手となり、全国の発電設備や蓄電池、需要リソースなどから、必要な調整力を市場取引を通じて調達する仕組みが整備されています。

参照:一般社団法人電力需給調整力取引所(EPRX)|需給調整市場とは
経済産業省 資源エネルギー庁|需給調整市場について

どんなプレイヤーが市場に参加している?

需給調整市場への参加方法には、大きく分けて「自社で直接市場に参加する方法」と、「アグリゲーターを介して参加する方法」の2種類があります。

制度上は企業が自ら市場参加者(取引会員)となることも可能ですが、入札業務や実績管理、指令対応、制度変更への継続的な対応など、運用面の手間やハードルは決して低くありません

そのため、いち電力ユーザーである一般企業は、専門事業者(アグリゲーター)を通じて需給調整市場に参加するほうが、制度対応や入札・運用面の負担を抑えやすく、より現実的な方法といえます。

こうした形で需給調整市場に「売り手」としてアグリゲーターとともに参加している企業には、下記のような企業があります。

このように、「電気を使う・つくる・貯める設備」を持つ企業であれば参加者になり得るのが、需給調整市場の特徴です。

参照:一般社団法人電力需給調整力取引所(EPRX)|需給調整市場かいせつ資料

一般企業が需給調整市場に参加するメリット

「うちは電力会社ではないのに、市場に参加する意味があるの?」 そう思われるかもしれません。
しかし、一般企業が需給調整市場、あるいはそれに準ずる取り組み(デマンドレスポンス等)に参入しているのには、いくつかの理由があります。

既存の設備が新たな収益源になる

最大のメリットは、「すでにある設備」が収益源になり得るという点です。例えば、BCP(事業継続計画)対策で導入したものの、普段は眠っている非常用発電機や蓄電池。あるいは、日々の業務で稼働している空調設備。これらには通常、維持費等がかかっているはずです。

しかし、需給調整市場に参加し、電力会社からの要請に応じて「発電する」「蓄電池から放電する」「空調を弱めて消費を抑える」といったアクション(調整力の提供)を行うことで、対価(報酬)を得ることができます。 新たな大規模投資をせずとも、既存資産の有効活用で新しいキャッシュポイントを作れるのは大きな魅力です。

コスト削減と脱炭素への貢献

市場に参加するためには、自社の電力使用状況を正確に把握し、制御するノウハウが必要になります。このプロセスを経ることで、「無駄な電気の使い方」が見え、普段の電気代削減(省エネ)にもつながります。

需給調整市場は、電力の需要と供給を一致させ、周波数を安定的に維持する「同時同量の実現」を目的とした制度です。
一方で、近年は再生可能エネルギーの導入拡大により発電量の変動が大きくなっていることから、「調整力」の確保も重要になっています。需給調整市場は、結果的に再生可能エネルギーの変動性への対応力を高める効果ももたらしています。

その意味で、需給調整市場への参加は電力の安定供給や脱炭素社会へのスムーズな移行に寄与する取り組みだと言え、CSR(企業の社会的責任)やESG経営の観点からも評価される余地があります。

【重要】参入前に知っておきたい需給調整市場の現状

ここまでメリットをお伝えしましたが、参入を検討する上では、市場のリアルな現状も知っておく必要があります。制度変更の過渡期にある今、市場は「ブルーオーシャン」から、「戦略が必要な取引の場」へと変化しています。

市場環境の変化:競争は「量」から「質」へ

需給調整市場が開設された当初に比べ、現在は参加するプレイヤー(リソース)が増加しています。 その結果、一部の取引区分や時間帯によっては、「調整力を売りたい」という入札量が、「買いたい」という募集量を上回り、入札競争が激しくなる(落札できない)ケースも出てきています。

「設備があれば比較的簡単に収益が得られる」というフェーズは過ぎ去り、「どの時間帯に、どの市場区分で、いくらで入札するか」という戦略が問われるフェーズに入っていると言えます。

参照:電力・ガス取引監視委員会|需給調整市場の運用等について

市場外での契約(随意契約)の拡大

また、全ての調整力がこの「市場」だけで取引されているわけではありません。送配電事業者が市場を通さずに、特定の電源と直接契約を結んで調整力を確保する契約(揚水随契・余力活用契約など)も存在し、需給調整市場での調達設計にも影響が出ていることが課題として取り上げられています。これは、新規で市場に入ろうとするリソースにとっては、実質的な「売り場」が狭まっているようにも見えるかもしれません。

参照:電力広域的運営推進機関(OCCTO)|需給調整市場検討小委員会における議論の方向性と整理

2026年度の制度変更(上限価格の引き下げ等)

2025年度は揚水発電の随意契約等による「市場外調達」の拡大で募集量が減り、落札競争が激化しました。さらに2026年度からは、週間商品の前日取引化および30分化等が実施されます。

あわせて、調達コストの抑制や市場の安定化を目的として、調整力の一部の区分で募集量をこれまでより抑える方向や、上限価格(キャップ価格)を19.51円/ΔkW・30分から15円へ引き下げる案が示されています。

さらに、競争状況によっては10円、7.21円といった水準まで段階的に引き下げる可能性も整理されています。一方で、市場に十分な競争が確認できた場合には募集量を再び増やすことや、これ以上の価格引き下げを行わないことも示されています。

上限価格の変更は、落札単価の上振れ余地を縮小させる可能性があり、これまでと同じ戦略では収益性を確保しにくくなる場合もあります。制度改定の内容を踏まえた入札設計やシミュレーションが、これまで以上に重要になります。

参照:経済産業省 資源エネルギー庁|需給調整市場について(2026年1月23日)

より重要になる「パートナー選び」

このように書くと「じゃあ、今から参入するのは遅いのか?」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。「調整力」自体のニーズは、再エネ拡大とともに今後も増えると予測されるからです。

重要なのは、「自社単独で戦おうとしないこと」です。複雑化する入札競争や制度変更に対応するためには、市場の動向を熟知し、高度な制御技術を持つ専門の事業者「アグリゲーター」の存在が重要になっています。

アグリゲーターは、複数の企業の設備を束ねて管理・制御します。これにより、一つひとつの設備は小さくても、束ねることで大きな調整力を生み出し、競争力のある価格や戦略で市場に入札することが可能になります。

アグリゲーターは、主にリソースの束ね役を担う「RA(リソースアグリゲーター)」と、市場・系統と接続し、指令配信や実績管理を担う「AC(アグリゲーションコーディネーター)」の大きく2つに分けることができます。
特にACは、リアルタイム性の高い制御や指令対応、システムの信頼性・サイバーセキュリティ対策など、より高度な技術要件や運用体制が求められる立場にあります。

需給調整市場への参入においては、単に設備を束ねるだけでなく、高度な技術基盤と運用実績を備えたアグリゲーターと組むことが、今後ますます重要になっていくと考えられます。

市場への参入パターン3選

では、具体的にどのような形で参入できるのか、代表的な3つのパターンをご紹介します。なお冒頭でもご紹介したとおり、市場参加には自社で入札をする方法と、アグリゲーターを介する方法とがあります。自社入札はいくつかのハードルがあり難度が高いため、アグリゲーターを介するのが一般的です。

パターン1:自家発電設備を活用して収益化

工場、病院、データセンター、大規模商業施設などで多く見られるパターンです。常用または非常用の自家発電設備(コジェネなど)を持っている場合、その余力を市場に提供します。指令があった時に出力を上げたり、逆に下げたりすることで調整力を提供します。既存設備の制御盤を改修する程度の初期投資で済むケースもあり、比較的参入しやすいモデルです。

パターン2:蓄電池を活用して市場に参加

太陽光発電の活用や、災害時のBCP対策として蓄電池を導入する企業が増えています。 しかし、災害時だけのために高価な蓄電池を置いておくのは投資効率が良くありません。そこで、「平時は市場取引で収益を上げ、投資回収を早める」「有事には非常用電源として使う」というダブルスタンダードでの活用が有効です。

パターン3:設備の稼働調整(DR)で参加

発電機や蓄電池がない企業でも参加できるのが、このパターンです。 例えば、冷凍・冷蔵倉庫やビルの空調、工場のポンプやプレス機など、電気を消費する設備を活用します。市場運用者からの「系統からの電気の調達量を抑えてほしい」という指令に合わせて、一時的に稼働を弱めたり停止したりすることで、「使う量を減らす=発電したのと同じ効果」を生み出します。これを「デマンドレスポンス(DR)」と呼びます。

デマンドレスポンスについて詳しくはこちら
>デマンドレスポンスとは?参加するメリットや基礎知識、実施までの流れ、注意点をわかりやすく解説します

参照:一般社団法人電力需給調整力取引所(EPRX)|需給調整市場とは

需給調整市場に参加するための3ステップ

最後に、実際に市場参加を検討するためのステップを整理します。

STEP1:自社の設備を見直す(リソースの棚卸し)

まずは、自社にどのような設備があるかを確認します。「うちは発電機なんてないし…」と思っていても、生産ラインや空調、照明、ポンプなどが立派なリソースになる可能性があります。

STEP2:目的と商品を検討する

次に、参入の目的を明確にします。

等、目的に応じて、狙うべき商品(一次~三次調整力)や運用方法が変わってきます。

参照:一般社団法人電力需給調整力取引所(EPRX)|需給調整市場とは

STEP3:信頼できるパートナー(アグリゲーター)を探す

前述の通り、自社だけで複雑な市場ルールを把握し、24時間体制で入札・制御を行うのは現実的ではありません。 あなたの会社に代わって市場取引を行い、設備の制御や収益管理をサポートしてくれる「アグリゲーター」を選定しましょう。選定の際は、「過去の実績」、「変化する市場ルールへの対応力」や「設備導入から運用までワンストップで相談できるか」といった視点が重要です。

需給調整市場に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 参加には莫大な初期投資が必要ですか?

A. 必ずしも必要ではありません。新たに大型蓄電池等を導入する場合は投資が必要ですが、既存の発電機や空調設備を活用する「DR(デマンドレスポンス)」型であれば、遠隔制御用の通信機器(IoT機器)の設置など、比較的少額の投資で始められるケースも多くあります。

Q2. 専門知識がないと取引は難しいですか?

A. アグリゲーターが代行する場合、お客さま自身に高度な専門知識は不要です。 市場への入札業務、指令に基づく設備の制御、実績報告などは、基本的にアグリゲーターが代行します。お客さまは本業に集中しながら、収益化を目指すことができます。

Q3. すでに電力会社と契約していますが、参加できますか?

A. 可能です。アグリゲーターによって、現在の電力購入契約(小売契約)を維持したまま、調整力のみを切り出して市場で取引するスキームなど、いくつかの契約形態があります。

Q4. 製造業以外でも参加できますか?

A. 可能です。 オフィスビル、商業施設、物流センター、スーパーマーケット、大学、自治体施設など、電力を使用・管理している多様な業種・施設が参加しています。「電気をコントロールできる設備」があれば、業種は問いません。

まとめ

需給調整市場は、電力の安定供給を支える「調整力」を取引する仕組みであり、再エネ拡大や電力システムの高度化に伴い、調整力の確保・活用のあり方として注目されています。企業にとっては、既存設備を活用して自社の経済的メリットや脱炭素社会への貢献の機会になる一方、市場環境や制度は変化しています。自社の目的やリソースに応じて、市場の特性を理解し、適切なパートナーと連携することが、現実的で持続的な需給調整市場参入の鍵となります。まずは「自社の設備で何ができるか」を知ることが、次の一手につながります。

需給調整市場への参加なら、エナリスにお任せください!

当記事でご紹介したように、需給調整市場への参加には一定のハードルがあるため、一般企業のお客さまが参加される際はアグリゲーターを介するのが得策です。
エナリスは、アグリゲーターとしてお客さまの設備を活用して需給調整市場に応札し、お客さまの新たな収益機会のサポートを行います。

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本記事の制作にあたっては、生成AIを支援ツールとして活用しています。最終的な内容の確認・判断および責任は、エナリスジャーナル編集部が負っています。

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