【2026年版】CDPとは?環境情報開示スコアの仕組みから回答準備まで〈徹底ガイド〉
「CDPって何?」「急に回答を求められたけど、何から手をつけていいかわからない」取引先や投資家からの突然の開示要請に、こうした戸惑いを感じている担当者は少なくないでしょう。
CDPは、企業の環境への取り組みを評価・スコアリングし、その結果を世界中の投資家に提供する国際的な非営利団体です。近年はESG投資の拡大やサプライチェーン全体での脱炭素化を受け、上場企業だけでなく中堅・中小企業にも回答が求められるケースが急増しています。
この記事では、CDPの基礎知識から2026年の最新動向、スコアの仕組み、回答スケジュール、そしてスコアアップに有効なScope 2削減の具体策までをわかりやすく解説します。
CDPとは?環境情報開示の国際基準
CDPとは、企業や自治体の環境に対する取り組みを調査・評価し、その情報を投資家やサプライチェーン上のパートナーに向けて開示する国際的な非営利団体(NGO)です。2000年に英国ロンドンで「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」として設立され、2013年に「CDP」へ正式改称されました。現在は「CDP」自体が正式名称となっています。
CDPは、「将来世代を守るために、アースポジティブ(地球にプラスの影響を与える)な意思決定を可能にする新しい情報を提供すること」 を存在意義(パーパス)に掲げています。企業に対して気候変動・水セキュリティ・森林などに関する質問書を送付し、回答内容を分析・スコアリングして公開することで、環境情報開示のグローバルスタンダードとしての地位を確立してきました。
その規模は年々拡大しており、現在540以上の機関投資家(運用資産総額110兆米ドル) がCDPのデータに署名。回答企業数は22,100社を超え、世界最大規模の環境情報開示プラットフォームとなっています。
脱炭素について詳しくは下記の記事をご覧ください。
> 脱炭素とは?脱炭素社会実現に向けての取り組みを交えて解説します!
CDPが注目される背景
CDPへの回答要請が急増している背景には、大きく3つの要因があります。
1つ目はESG投資の急速な拡大です。グローバルのESG投資市場は2026年に45.61兆米ドルに達する見通しで、CDPスコアは投資判断の重要指標として広く活用されています。
ESG投資について詳しくは下記の記事をご覧ください。
> ESG投資とは?注目の背景やCSRやSDGsとの違いを解説
2つ目は、気候変動リスク開示の義務化・ルール化が世界的に加速していること。ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)やTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)などの国際基準が整備される中、CDPへの回答はグローバルな開示要請への有効な対応手段となっています。
3つ目は、サプライチェーン全体での脱炭素化要請の増加です。GHGプロトコルが定めるScope 3では、自社の直接排出だけでなくサプライチェーン全体の排出量の把握・削減が求められています。Scope 3排出量は直接排出(Scope 1・2)の平均26倍に上るとも言われており、大企業を中心に取引先への情報開示・脱炭素化の要請が拡大しています。CDPへの対応は、ビジネスを維持・拡大するための必須条件になりつつあります。
CDPの最新動向|2024年・2026年の主な変更点
2024年以降、CDPでは質問書の統合や国際基準との連携強化など、複数の大きな変更が相次いでいます。企業が押さえておくべきポイントは、統合質問書への移行、国際基準との連携強化、スコアリング基準の変化の3点です。
| 年度 | 主な変更点 |
|---|---|
| 2024年 | 気候変動・水セキュリティ・森林の統合質問書へ移行。プラスチック・生物多様性の項目追加。SME質問書の導入。ISSB(IFRS S2)を基盤フォーマットとして採用。 |
| 2026年 | 「海洋(Ocean)」領域の追加。森林分野でカカオ・コーヒー・天然ゴムが新たにスコア対象に。SME版でAスコア導入。 |
統合質問書への移行とその背景
従来、CDPの質問書は「気候変動」「水セキュリティ」「森林」の3領域ごとに分かれていましたが、2024年からこれらが1つの「統合質問書」に一本化されました。同時に「プラスチック」と「生物多様性」に関する項目も追加され、環境課題を包括的に捉える設計へとシフトしています。
企業規模に応じた回答オプションも明確化され、中小企業(SME)専用の質問書が整備されたことも注目すべきポイントです。
2026年に向けては、さらなるアップデートが予定されています。新たに「海洋(Ocean)」領域が追加されるほか、森林分野ではカカオ・コーヒー・天然ゴムがスコアリング対象になります。SME版質問書では、これまでB評価までしか取得できませんでしたが、2026年から最高評価「SME Aスコア」が導入されます。先進的な気候変動対策を実証した中小企業が最高評価を得られる仕組みで、意欲的な中小企業がより踏み込んだ脱炭素化に取り組む動機となることが期待されます。結果として、サプライチェーン全体の脱炭素化促進にもつながる変更です。いち早く回答して世界水準の「SME Aスコア」を獲得することで、調達先の評価として他社よりも先行することにもつながります。
なお、生物多様性・プラスチック・海洋の各項目は現時点ではスコアリング対象外で、任意回答・準備期間の位置づけとなっています。スコアリング方法論の詳細については、下記のページ及び資料をご覧ください。
参考:CDP|CDPの開示およびスコアリング関連資料
国際基準(ISSB・TNFD)との連携強化
企業の開示負担を軽減し、国際的なルールの一本化を図るため、CDPは他の主要な開示フレームワークとの連携を加速させています。
その中心が、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が策定した「IFRS S2(気候関連開示基準)」の採用です。CDPは2024年の質問書からISSB基準を基盤フォーマットとして取り入れました。 さらに、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークとの整合性も強化されています。
| フレームワーク | 概要 | CDPとの関係 |
|---|---|---|
| ISSB(IFRS S2) | 気候関連の財務情報開示に関するグローバル基準。 | 2024年より質問書の基盤フォーマットとして採用。 |
| TNFD | 自然資本・生物多様性に関するリスク開示の枠組み。 | 質問書との整合性を強化。海洋・プラスチック領域への拡張とも連動。 |
これにより、CDPに回答するだけで、ISSBやTNFDが求める水準の開示準備を同時に進められる という実務的なメリットが生まれています。
TNFDについて詳しくは下記の記事をご覧ください。
> TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)とは?
スコアリング基準の重点項目の変化
CDPのスコアリング基準も、単なる情報開示から、より「実行力」を問う方向へと進化しています。
2024年以降、各評価レベルに「必須要件」が導入されました。1.5℃シナリオに沿った気候移行計画(脱炭素に向けた具体的な行動計画)の有無や具体的な温室効果ガス削減の実績など、実効性の高いアクションが伴っているかどうかが厳しく問われるようになっています。この計画の核となるのが、2030年や2050年に向けた具体的な省エネ目標や再エネ導入のロードマップです。
CDPの主要プログラムと回答の種類
CDPに対応するにあたって、自社が「どの質問書で」「誰からの要請で」回答するのかを正確に把握しておくことが重要です。ここでは、質問書の種類と回答経路の2つの観点から整理します。

質問書の種類|完全版 or SME版
2024年からの統合質問書は、大きく「完全版(フルバージョン)」と「SME版(中小企業向け)」の2種類に分かれます。
| 項目 | 完全版(フルバージョン) | SME版(中堅・中小企業向け) |
|---|---|---|
| 対象企業 | 大企業・上場企業など | 売上高・従業員数が一定基準以下の企業 |
| 設問数 | 広範かつ詳細(業種により変動) | 大幅に簡略化 |
| スコアリング | 気候変動/水セキュリティ/森林でスコア付与 | 2026年よりSME Aスコア導入予定 |
自社がSMEの要件を満たす場合は、SME版を選択することで回答負担を大幅に軽減可能です。まずは自社の該当区分を確認しましょう。
回答を求められる2つの経路|サプライヤーへの要請が拡大中
企業がCDPに取り組むきっかけは、主に以下の2つの経路から要請を受けることで始まります。
- 投資家からの要請: 機関投資家がCDPを通じて企業に回答を求めるパターン
- サプライチェーン(取引先)からの要請: 大手企業がサプライヤーに対してCDP回答を求めるパターン
近年急増しているのが2つ目の「サプライチェーン要請」です。大手製造業が自社のScope 3削減のために、部品メーカーなど取引先の調達評価にCDP回答結果を活用するケースが増えています。
回答しなければ、取引停止や新規入札からの除外といった重大なビジネスリスクを招く可能性も。「まだ自社には関係ない」と考えていると、気づいたときには手遅れになりかねません。
CDPスコアと評価基準|最高位「Aリスト」の要件とは
CDPのスコアは、企業の環境情報開示とパフォーマンスをD-からAまでの8段階で評価する仕組みです。
| スコア | レベル | 評価内容 |
|---|---|---|
| A / A- | リーダーシップ | ベストプラクティスを体現し、先進的な行動を示している |
| B / B- | マネジメント | 環境問題を管理する行動・プロセスを実施している |
| C / C- | 認識 | 環境問題が自社にどう関連するかを理解している |
| D / D- | 情報開示 | 質問書への回答の完全性を評価 |
最高評価「Aリスト」の獲得には、SBT(Science Based Targets:科学的根拠に基づく削減目標)の認定取得、具体的な削減実績、役員レベルでのガバナンス体制構築など、極めて高い水準が求められます。
2025年のスコア結果(2026年1月発表)では、グローバルで877社(回答企業全体の約4%)がAリスト入りを果たしました。
日本企業は250社以上がAリストに選定されており、国別では世界最多です。気候変動・水セキュリティ・森林の3分野すべてでA評価を獲得した「トリプルA」企業には、大和ハウス工業、積水ハウス、豊田通商、花王、大東建託、ユニ・チャームが名を連ねています。
Aリスト(リーダーシップレベル)を目指すには、単なる現状の開示から一歩進め、国際基準であるSBT認定の取得や、気候変動リスクを経営トップが評価・管理するガバナンス体制構築が不可欠です。
一方、これまでCDP未着手の中小企業にとっては、初年度から満点を狙う必要はなく、期日までに現在のデータをありのまま、誠実に提出するだけで情報開示(Dスコア)レベルと評価され、開示姿勢そのものが取引先に評価されます。
企業がCDPに対応するメリット・デメリット
CDPへの回答は法的義務ではありませんが、対応によって得られるメリットは大きく、一方で事前に把握しておくべき課題もあります。
【メリット】
- ESG投資家からの評価向上: 投資対象として選ばれやすくなり、資金調達の面で有利に
- ブランド価値・信頼性の向上: 環境対策に本気で取り組む企業として競合との差別化につながる
- サプライチェーンでの競争優位: 取引先の要請をクリアするだけでなく、新規取引の獲得チャンスにも
- ISSB・TNFD開示の同時準備: CDPの回答を通じて、他の国際基準への開示準備を並行して進められる
【デメリット・課題】
- 対応コストと工数の大きさ: 初回はデータ収集から回答作成まで数百時間を要することも
- 社内体制の構築が必要: 環境データの集計体制やガバナンス体制の整備にリソースが必要
- 年次対応の継続負担: 質問書は毎年更新されるため、継続的な情報アップデートが求められる
スコアアップに向けて着手しやすいScope 2削減
CDPでB以上の高スコアを目指すには、情報開示や管理体制の整備に加え、「具体的な削減実績」を示すことがより重要になってきます。
温室効果ガス排出量は、自社の直接排出(Scope 1)、電気・熱の使用に伴う間接排出(Scope 2)、サプライチェーン全体での排出(Scope 3)に分類されます。

スコープについて詳しくは下記の記事をご覧ください。
> Scope1,2,3(スコープ)とは?
この中で、Scope 2(電力由来の排出)の削減は、比較的着手しやすい施策の一つです。Scope 2は電力の調達方法を見直すことで、比較的短期間で排出削減効果を得ることが可能ですが、まずはLED化や高効率空調への更新など、省エネで電力消費量そのものを減らすことも重要です。一方で、Scope 1(直接的な燃料の消費からの排出)の削減は製造プロセスや設備の大規模な変更を伴う場合が多く、さらにScope 3(原材料調達や製品使用などでの排出)の削減ではサプライチェーン全体の巻き込みが必要になります。
Scope 2削減の具体的な方法
Scope 2、つまり使用する電力由来のCO2排出を減らす方法として、省エネ(電力需要の抑制)への取り組みを前提に以下の3つが代表的です。
- 再生可能エネルギー電力メニューへの切り替え: 再エネ100%やCO2フリーの電力プランに契約変更するだけで、マーケット基準(market-based)算定ではScope 2排出量を大幅に削減、またはゼロとして計上できます。※
- 非化石証書の活用: 通常の電気を使いながら「環境価値(発電時に化石燃料を使用せず大気中の二酸化炭素を増加させないという付加価値)」を別途購入して組み合わせる手法。ただし、非化石証書にも種類があり、CDPの基準を満たすためには、場合により発電所や電源種別(太陽光、風力など)が特定できる「トラッキング付き非化石証書」を選定する必要があります。
- コーポレートPPA(電力購入契約)の導入: 個別に契約した再エネ発電設備から長期にわたり安定した電力を調達する手法。追加性(新たに再エネ設備を増やす効果)が認められ、CDPでも評価されやすい傾向にあります。すでに非化石証書を活用している企業が次に目指すべきより高度な脱炭素のアクションとして重要です。
※ market-based方式では、企業が契約した電力メニューに紐づく環境価値を反映した排出係数を使用します。一方、location-based方式では地域の平均排出係数を用いるため、再エネメニューへ切り替えた場合でも排出量はゼロになりませんので、省エネ(電力需要の抑制)への取り組みがより重要になります。
非化石証書について詳しくは下記の記事をご覧ください。
> 非化石証書とは?メリットや購入方法を詳しく解説
PPAについて詳しくは下記の記事をご覧ください。
> コーポレートPPAとは?オンサイトPPAとオフサイトPPAの違いをわかりやすく解説!
これらの対策は事業所単位で意思決定でき、スコアアップにつながりやすい有効な施策です。
Scope 2対策は比較的短期間で効果を得やすい一方で、契約電力の見直しや非化石証書の手配には、社内稟議や調達先との交渉にリードタイムがかかります。CDP質問書の回答時に具体的な削減実績をアピールするためには、前年度のうちから動き始めておくことが重要です。
【2026年度版】回答の年間スケジュールと準備の流れ
2026年度のCDP回答スケジュール(公式発表)は以下のとおりです。
| 時期 | マイルストーン |
|---|---|
| 4月20日週 | 質問書・ガイダンスの正式公開 |
| 4月27日週 | スコアリング基準の詳細公開 |
| 6月15日週 | 回答ポータルオープン |
| 9月14日週 | 回答提出期限(スコアリング対象) |
| 10月26日週 | 回答提出期限(スコアリング対象外・最終) |
| 11月30日週 | スコア公表予定 |
まとめ:CDPは企業の環境経営を可視化する重要な基準
この記事では、CDPの基礎知識から最新動向、スコアの仕組みと回答準備について解説しました。
CDPへの対応は、最初は途方もない作業に思えるかもしれません。しかし、「どんな電力を選ぶか」という身近な一歩から、着実にスコアへつなげていくことが可能です。
エナリスは、企業の皆さまのエネルギー課題を、長年の知見と豊富なサービスラインナップで解決に導きます。「CDPのスコアアップに向けてScope 2をどう削減すればいいか」「非化石証書や再エネ電力プランの最適な調達方法を知りたい」など、具体的な対応にお悩みの際は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
エナリスでは、記事内でご紹介した再エネ電力メニューへの切り換え・非化石証書の調達・各種PPA契約のサポートなど、脱炭素化の取り組みに関する様々なサービスをご用意。お客さまの課題にあわせてご提案・伴走いたします。
参考資料
- CDP公式サイト
- CDP – About Us(パーパス・概要)
- CDP Aリスト2025プレスリリース(2026年1月発表)
- CDPスコアの理解(スコアリング方法論)
- CDP 2026年開示サイクル
- CDP 2026年質問書の主な変更点(日本語版PDF)
- CDPサプライチェーンプログラム
- IFRS – 国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)
- TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)
千葉県出身。東京工業大学においてエネルギー変換工学の研究で工学博士、製鉄会社研究員、ITコンサルタントなどを経て、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて取り組む研究者・コンサルタントとして現在に至る。持続可能なエネルギー政策の指標化(エネルギー永続地帯)や自然エネルギー100%のシナリオの研究などに取り組みながら、国内外の自然エネルギーのデータ分析や政策提言を行う。