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燃料費調整制度とは?概要をわかりやすく解説!
電気料金メニューの多くは、火力発電で使用する燃料価格の変動分を電気料金(電力量料金)に反映する仕組み、「燃料費調整」が取り入れられています。本記事では、『燃料費調整制度』について制度導入の背景や目的、概要について説明しま […]
電気料金メニューの多くは、火力発電で使用する燃料価格の変動分を電気料金(電力量料金)に反映する仕組み、「燃料費調整」が取り入れられています。本記事では、『燃料費調整制度』について制度導入の背景や目的、概要について説明します。
燃料費調整制度とは、火力燃料(原油・LNG・石炭)の燃料価格の変動を毎月の電気料金に自動で反映させる仕組みです。電気料金は一般的に契約電力に基づく〈基本料金〉、毎月の使用量(kWh)による〈電力量料金〉、〈再エネ賦課金〉などから成り立っています。このうち〈電力量料金〉に燃料費調整額が含まれており、燃料価格とともに〈電力量料金〉も変動して、電気料金が上下する要因となります。
同制度は、石油価格や為替の変動などの経済情勢の変化を迅速に料金に反映するとともに、電力事業者の経営効率化の成果を明確にし、経営環境の安定を図ることを目的に1996年に導入されました。以降、燃料価格の変動は同制度にもとづき、適切に電気料金に反映されてきました。
一方、制度導入以降、1バレル(約160ℓ)=20ドル前後で安定していた原油価格は、長期的な需給のひっ迫化傾向や地政学的リスクの増大などを背景に2007年度末には1バレル=110ドル台に到達。加えて、米・サブプライム問題を発端とした世界的な金融不安から、石油先物市場に大幅な投資マネーの流入があり、原油価格が急激に高騰しました。
2008年の燃料価格の大幅かつ急激な変動による電気事業を取り巻く状況変化を背景に、国は2009年に燃料費調整制度の見直しを行いました。目的は、燃料価格の変動をより迅速に料金に反映させるとともに料金変動を平準化するためで、見直し前までは3ヶ月だった料金反映までの期間を最短2ヶ月に変更しています。
最近では、コロナ禍からの経済回復によってエネルギー需要が急激に拡大する一方、様々な要因によってエネルギー需給がひっ迫し、2021年後半以降、歴史的なエネルギー価格の高騰につながりました。原油価格は2022年3月には、WTI原油先物価格が1バレル=120ドル台と、2008年の1バレル140ドル台に次ぐ水準まで上昇しました。
2025年5月時点では1バレル=60ドル台に落ち着いており、日本総合研究所の「原油市場展望 2025年5月」によれば、先行きは50ドル台半ばに向けて下落していく見通しが示されています。
〈出典・参考文献〉
・資源エネルギー庁「電気料金の水準」P1電気料金制度の変遷(2015年11月18日)
・資源エネルギー庁「エネルギー白書2022」第1部 第3章 第2節 世界的なエネルギー価格の高騰とロシアのウクライナ侵略
・日本総合研究所「原油市場展望 2025年5月」
毎月の燃料費調整額は、燃料費調整単価にその月の電気使用量を乗ずることで決定します。ここでは、燃料費調整単価について、具体的な算定方法を解説します。
燃料費調整単価は、毎月の原油・LNG・石炭の貿易統計価格の3~5ヶ月前の3ヶ月の加重平均値である〈平均燃料価格(実績燃料価格)〉から、料金設定時(料金改定申請時)の直近3ヶ月の原油・LNG・石炭の貿易統計価格の加重平均値である〈基準燃料価格〉を引いた値に、基準単価(平均燃料価格が1,000円/kl変動した場合の1kWhあたりの変動額)を1,000で除した数値を乗じて算出されます。
平均燃料価格が基準燃料価格を上回る場合はプラス調整を、下回る場合はマイナス調整を行います。各月分の燃料費調整単価は、3ヶ月間の貿易統計価格にもとづき算定され、2ヶ月後の電気料金に反映されます。例えば、1月~3月の平均燃料価格により算定された燃料費調整単価は、6月の電気料金に反映されることになります。
電力会社により原油や石炭、LNGの使用割合は異なり、燃料を調達する費用等も変わってきます。そのため燃料費調整単価は電力会社ごと、低圧/高圧別に算出され、値も各社異なりますが、いずれも、料金設定時より燃料の価格が上がれば燃料費調整単価も上がり、燃料の価格が下がれば燃料費調整単価も下がる計算式となっています。
燃料費調整単価は、契約している電気供給条件(特別高圧・高圧・低圧)によっても異なります。2025年5月の特別高圧・高圧の燃料費調整単価の例は以下の通りです。
(なお、ここでは後の段落で説明する「市場価格調整単価」を含む単価を記載しています。)
電力会社 | 高圧(円/kWh) | 特別高圧(円/kWh) |
北海道電力 | ▲0.80(円/kWh) | ▲0.78(円/kWh) |
東北電力 | ▲8.24(円/kWh) | ▲7.98(円/kWh) |
東京電力(繰上検針) | 朝時間:▲0.30(円/kWh) 昼時間:▲0.02(円/kWh) 晩時間:0.45(円/kWh) 夜時間:▲0.37(円/kWh)※ | 朝時間:▲0.29(円/kWh) 昼時間:▲0.01(円/kWh) 晩時間:0.44(円/kWh) 夜時間:▲0.35(円/kWh)※ |
東京電力(分散検針) | 朝時間:▲0.52(円/kWh) 昼時間:▲0.28(円/kWh) 晩時間:0.46(円/kWh) 夜時間:▲0.19(円/kWh) | 朝時間:▲0.50(円/kWh) 昼時間:▲0.27(円/kWh) 晩時間:0.46(円/kWh) 夜時間:▲0.18(円/kWh) |
北陸電力 | ▲6.66(円/kWh) | ▲6.52(円/kWh) |
中部電力 | 0.91(円/kWh) | 0.89(円/kWh) |
関西電力 | 高圧小口:1.18(円/kWh) 高圧大口:▲1.13(円/kWh)※ | ▲1.12(円/kWh)※ |
中国電力 | 0.25(円/kWh) | 0.24(円/kWh) |
四国電力 | ▲6.14(円/kWh) | ▲5.99(円/kWh) |
九州電力 | 0.41(円/kWh) | 0.39(円/kWh) |
沖縄電力 | ▲10.57(円/kWh) | ▲10.33(円/kWh) |
日本において、再生可能エネルギーが急速に普及してきましたが、今なお約7割を火力発電に依存している状態です。さらにその燃料の大半が海外から輸入されており、前述した通り燃料価格の変動が電気料金に影響します。
最近では、2022年のロシアによるウクライナ侵攻で欧州を中心にエネルギー情勢が不安定化し、さらに2023年にはパレスチナ武装勢力がイスラエルに侵攻し「パレスチナ・イスラエル戦争」が勃発。中東情勢は悪化し、エネルギー価格の不確実性は今まで以上に増しています。実際、石炭や天然ガスの市場価格は2010年代後半と比較して、2~3倍の水準で推移している状態です。
また、カーボンニュートラルの世界的な流れの中で、原油生産への投資が減少し今後大幅な増産が見込めないという考え方もあり、燃料価格の高騰は今後も続くことが予想されています。
最近では、「円安」も大きなマイナス要因となっており、燃料価格高騰×円安によって、石油や石炭などの化石燃料の輸入額は2020年から2022年までの2年間で22兆円以上も増加。なんと、2022年には過去最大の貿易赤字(年間20兆円超)を記録しています。
このように、燃料を海外に依存する構造を変えなければ、今後もエネルギー価格高騰の危機に直面する可能性があります。省エネルギー化や再生可能エネルギーへの投資、現状活用しきれていない分散型電源のアグリゲーションなどを徹底し、エネルギー危機に強い需給構造へ日本社会を転換していくことが必要です。
参考:
・資源エネルギー庁「エネルギーに関するさまざまな動きの今がわかる!『エネルギー白書2024』」
・環境省「データセンターによる再エネ利活用の促進に関するアニュアルレポート」
燃料費調整額の上限とは、算出に用いる〈平均燃料価格〉の上限を指します。
電気料金の契約には規制料金(経過措置料金)と自由料金という2種類の区分があり、規制料金には燃料費調整額に上限が設けられています。高圧(工場やビルなど)や特別高圧(大規模工場や病院など)での受電契約は自由料金のみで上限はありません。低圧(個人の住宅、小規模な店舗・事業所など)には自由料金と規制料金があります。
小売自由化前からの料金体系で、『総括原価方式』という法律で定められた方法で料金が設定されており、値上げするには国の認可が必要です。燃料費調整単価の算出に反映できる〈平均燃料価格〉に上限があります。
電力小売自由化以降の料金プランで、電力会社が料金を決められます。
エネルギー価格の高騰により〈平均燃料価格〉が上限に到達するケースが出てきています。上限を設けることは、燃料の価格の上昇に対し消費者への影響を和らげる機能を持つ反面、上限に到達する状況が続けば電力会社の経営を圧迫する要因にもなります。こうしたことから、大手電力会社を中心に、規制料金値上げへの動きや低圧の自由料金プランにおける上限撤廃の動きが進んでいます。
『燃料費等調整制度』とは、火力燃料(原油・LNG・石炭)の価格変動に加え、卸電力取引市場価格の価格変動を電気料金に迅速に反映させる仕組みです。燃料費だけでなく市場価格を含むため、「燃料費等調整制度」と「等」が付き、従来の「燃料費調整制度」と区別されます。
燃料費等調整単価は、次の2つを足したものです。
●燃料費調整単価:火力燃料の価格変動に基づく調整
●市場価格調整単価:電力取引市場の価格変動に基づく調整。一例として、過去3ヶ月間の市場価格の平均(平均市場価格)と1ヶ月間の基準価格(基準市場価格)の差分で算定する方法などが採られる
各月の燃料費等調整単価に使用電力量を掛けると、「燃料費等調整額」となります。
これが正の場合はプラスの調整を、負の場合はマイナスの調整をして、電力量料金が算出されます。
電力会社によっては、このように市場価格の値動きを電気料金に吸収させることで、電気プランの継続性を担保しているケースもあります。
燃料費調整額は電気料金の変動に大きく影響する要素の1つです。燃料費調整制度について理解しておくことは、毎月の電気料金の内訳を把握し、電気の節約を意識することにもつながります。燃料価格高騰のリスクも視野に入れ、電力会社の変更や電気料金プランの見直しを検討してみてはいかがでしょう。
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