オフサイトPPAサービス
(フィジカル)
発電事業者とお客さまの電力売買を仲介し、お客さまの再エネ利用をサポートします。
投資家からの要請に応えるには「全量固定価格」での再エネ電力の導入が不可欠でした!
不動産投資信託であるJ-REITの資産運用を担う丸紅リートアドバイザーズさま。業界のサステナビリティを牽引する同社が、投資家からの「追加性」ある再エネ導入要請という課題に対し、エナリスのオフサイトPPAを導入。その理由と効果を伺いました。
弊社は、東京証券取引所に上場している不動産投資信託(J-REIT)の資産運用会社です。J-REITとは、多くの投資家から資金を集めて不動産に投資し、その賃料収入や売却益を投資家に分配する仕組みです。現在、日本には50数銘柄のJ-REITがあり、弊社はその中の一つとして、投資家の皆さまに不動産投資の機会を提供しています。
弊社が運用を手掛けるのは、ユナイテッド・アーバン投資法人から受託した不動産資産です。その規模は日本国内で142物件、7,000億円超(2025年9月12日現在)にのぼります。最大の特徴は、オフィスビル、商業施設、ホテル、賃貸住宅、物流施設など、特定の用途に特化しない「総合型」であることです。この多様な資産を長期的に安定運用し、投資家の皆さまへ利益を還元することを使命としています。
また、サステナビリティ(持続可能性)を重視した運用を継続しており、その証として、環境不動産の国際的なベンチマーク「GRESB」において11年連続で「Green Star」評価を獲得しています。(※)
GRESBのGreen Star評価とは、企業がESG(環境・社会・ガバナンス)を推進するためのマネジメント体制(方針や組織)と、保有物件でのパフォーマンス(環境対策やテナントとの協働)の両面で優れた取り組みを行っていることを示すものです。

私たちは2030年までに、保有する物件におけるスコープ1及びスコープ2の「温室効果ガス総排出量」を、2021年比で42%削減するという目標を掲げています。今後も物件を取得し事業を拡大していく中で「総量」を削減するには、省エネだけでは追いつきません。そのため、新たな再エネ電源を世の中に生み出すことに貢献する「追加性」のある取り組みが不可欠だと考えました。
これまでは非化石証書も活用してきましたが、これは既存の環境価値を取引するもので、社会全体の再生可能エネルギーの総量を増やすものではありません。特に欧州の一部の機関投資家からは、「追加性のある再生可能エネルギーを導入しているか」という具体的な質問を受けることもありました。
こうした状況を踏まえ、当社が競争力を維持していくためには、次の2点が重要だと判断しました。
そこで、この判断に基づき、追加性のある再エネ電力を安定的に調達できる今回の取り組みを進めることにしました。
これにより、保有する物件全体の脱炭素化はもちろん、物件そのものの価値向上や、テナントさまから「選ばれる」ことにもつながると期待しています。
まず物理的な制約がありました。自社物件の屋根などに太陽光パネルを設置することも検討しましたが、物流施設の屋根は荷重の問題で設置が難しく、都心の物件はそもそもパネルを置けるスペースがありません。そのため、選択肢は敷地外にある再エネ発電所から電力を購入する「オフサイトPPA」に限られました。
次に社内での合意形成です。私たちは投資家の中長期的利益を極大化することを究極の目的としています。その観点から、資産運用部門ではコスト効率を丁寧に検討し、再エネ導入が従来電力と比べて投資家利益に適うかを確認しました。最終的には、エナリスさんからご提案いただいた単価が当時の電力料金よりも有利であったことが後押しとなり、合意形成が進みました。
そして最大の課題が、長期契約に伴う「価格変動リスク」でした。PPAは電力単価が固定されるというメリットがありますが、もし将来、市場価格が大幅に下落した場合には、逆に割高になってしまいます。私たちは、この点が「投資家の利益を損なう恐れがある」ことを重視し、検討を進めました。
もっとも、脱炭素の流れは今後も継続すると予想され、 再エネ電力の「需要」は拡大が見込まれます。同時に、太陽光発電の設置余地(供給)には物理的な制約があります。
こうした需給の見通しを踏まえ、最終的に「将来、電力価格が大幅に値崩れする可能性は低い」との見立てを社内で共有し、理解と合意を得ることができました。

私たち投資法人は、投資家の皆さまへ安定的な分配金を支払う責務があります。そのため、電力料金など価格変動の影響を受けやすいコストは、安定性と見通しの確かさが求められます。
オフサイトPPAでは、太陽光が発電しない夜間や雨天時に不足する電力を送配電網から補ってもらう「負荷追従」の仕組みが不可欠です。当初はある事業者へ相談したのですが、負荷追従部分の料金が市場価格に連動する「変動価格」でした。その場合、電力コストの振れ幅が大きく、安定的な事業運営に課題が残ると判断しました。
複数の事業者さまとお話する中で、この「負荷追従部分も含めて固定価格で提供できる」と明確にご提案いただけたのがエナリスさんでした。サステナビリティの推進と、投資法人としての事業モデルを守ること。この二つを両立できる唯一の選択肢でした。
また、電力契約を変更できるタイミングが限られていたり、対象物件が直前に変更になったりといった事態にも、迅速かつ柔軟に対応いただけた点も、パートナーとしての信頼に繋がりました。

まず、今回導入する3物件のCO2排出量が実質ゼロになります。これは温室効果ガス削減目標の達成に向けた非常に大きな一歩です。
コスト面でも、シミュレーション上は以前の電力料金とほぼ同等か、若干安くなる見込みです。つまり、コストを上げることなく、投資家が強く求める「追加性」のある再エネ導入を実現できたことになります。これはIR活動においても強力なアピール材料になると考えています。
また、近年はテナントさま、特に外資系企業から「このビルは再生可能エネルギーを使っていますか?」という問い合わせが増えています。再エネ電力を利用できることはビルの付加価値となり、選ばれる理由の一つになります。環境価値の向上が、不動産価値の向上、そして投資家の利益にも繋がるという好循環を生み出せると期待しています。
まずは今回の導入を成功事例とし、得られた知見を活かして他の物件への展開を進めていきたいと考えています。特に、私たちの管理権限下にあるポートフォリオでは、温室効果ガス排出量の約4割を占める6つの大規模物件への対策が喫緊の課題となっています。
私たちは、新規開発などの不動産デベロッパーではなく、既存建物の運用を主業とする不動産アセットマネジメント会社です。所与の条件が多く、脱炭素化の制約を受けるからこそ、設備更新や運用改善、テナント協業といった運用面での創意工夫が成果を左右します。限られた条件下でも実効性のある削減を積み上げることで、その姿勢を業界全体で共有し、未来に対して責任を果たしていきたいです。
多くの制約があるからこそ知恵を絞り、一歩ずつでも着実に温室効果ガス排出量の削減を進めていく。今回の取り組みが、不動産投資業界全体の脱炭素化を加速させる一助となれば嬉しく思います。
取材 2025年9月
※記載された社名・部署名等の情報は取材当時のものです。閲覧時点には変更されている可能性があることをご了承ください。
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