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非化石証書とは?仕組みや特長をわかりやすく解説
発電時に化石燃料を使用しない電気の価値(環境価値)を取り扱う非化石証書。2021年11月には電力ユーザーでも購入できるようになりました。多くの企業から注目を集めている非化石証書について、言葉の意味や種類など基礎的な話から […]
「2050年カーボンニュートラル」の政府目標の達成に向けて、事業活動で使用する電力の再エネ化を検討する企業が増えています。再エネメニューに切り替えることでも実現可能ですが、追加性を求めた再エネへの切り替えや複数の事業所の再エネ化などを目指している企業にとって、再エネ発電設備の導入費用や設置場所がないことがハードルとなり、なかなか踏み出せないという企業も多いかもしれません。
そんな企業に勧めたいのが「オフサイトPPA」です。オフサイトPPAは、発電事業者が設置した発電設備と契約し、そこで生み出された電力と環境価値(※1)を小売電気事業者を通じて買い取る仕組みで、企業が自社で発電設備を設置・運用せずに(つまり、導入費用の負担がなく)再エネ電力の調達が可能です。
再エネ電力を活用したい電力ユーザーにとって、魅力的な「オフサイトPPA」を
わかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1 環境価値…太陽光発電や風力発電など、大気中の二酸化炭素(CO2)を増加させない方法で発電された電力が持つ「地球環境に負荷を与えない」という価値のこと。
環境価値について詳しくはこちら
>「環境価値とは|企業が取り入れるメリットや調達方法、注意点をわかりやすく解説」
PPAとは電力購入契約を意味する「Power Purchase Agreement」の略で、電力ユーザーが発電事業者から一定期間、単価を固定して電力を購入するスキーム(契約形態)を表します。発電設備を電力ユーザー自らが設置・保有せず、第三者が設置・保有する「第三者保有モデル」の一種です。
PPAは発電設備の設置場所や送電形態により「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」に分けられます。
今回ご紹介する「オフサイトPPA」は、発電事業者(第三者)が保有または新たに設置する発電設備でつくった電力および環境価値を電力ユーザーが送配電システムを介して調達する「オフサイトPPA」スキームです。
電力および環境価値の供給に関する契約は、小売電気事業者を介した三者で締結します。
オンサイトPPAについては詳しくはこちら
>コーポレートPPAとは?オンサイトPPAとオフサイトPPAの違いをわかりやすく解説!
オフサイトPPAには「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」の二種類があります。
フィジカルPPAは、再エネ発電設備の電力と環境価値を一体として、電力ユーザーが一定期間、一定価格で調達できるスキームです。
一方、バーチャルPPAは再エネ発電の電力と環境価値のみを切り離して、電力ユーザーが一定期間、電力価格の差額を調整しながら環境価値だけを調達できるようにしたスキームです。
バーチャルPPAの場合、電力ユーザーは、小売電気事業者と契約している電力契約を継続しながら、発電事業者から環境価値のみを調達することが可能です。ただし、市場価格との差額の調整などが必要となります。
米国等ではバーチャルPPAを中心に導入が進んでいますが、本記事では現在日本で検討されることの多いフィジカルPPAを中心に解説していきます。
オフサイトPPA(フィジカル)は以下のような流れで電気や環境価値を電力ユーザーが調達します。
導入する企業(電力ユーザー)が増えているオフサイトPPA(フィジカル)ですが、そのメリットについて整理して説明します。
PPAという仕組みの大きなメリットのひとつは、自社で発電設備を設置・運用する必要がない点です。発電設備の導入費用は発電事業者が負担します。さらにオフサイトPPA(フィジカル)ならば、設置場所も自社で用意する必要がありません。
オフサイトPPA(フィジカル)で再エネの電気や環境価値を調達する場合、以下のような特徴があります。
このように、自社内で発電設備を設置・運用するのが難しいと考える企業(電力ユーザー)には、オフサイトPPA(フィジカル)のメリットは大きいでしょう。
政府は2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の達成、2030年に2013年比で温室効果ガスの排出量46%を削減する(さらに50%の高みを目指す)という方針を発表し、国際社会に向けて発信しています。
企業にもCO2削減に向けたさまざまな規制が課されたり自主的な取り組みが求められたりするので、この方針と無縁ではいられません。
例えば、改正省エネ法の定期報告義務のある企業 ※2 は、再生可能エネルギーの導入量と今後の導入見込みを所轄官庁に報告しなければなりません。発注元となる企業がサプライチェーンの取引先企業に脱炭素化を求める事例も増えており、改正省エネ法の報告義務対象外の中小企業にとっても脱炭素は喫緊の課題となりつつあります。
温室効果ガスの削減目標を策定して再生可能エネルギーの導入が急務となっている企業は、オフサイトPPA(フィジカル)のスキームを活用すれば、再生可能エネルギーを活用した電力を大きな初期投資を掛けずに安定して調達できる可能性があります。
また、最近はCDPやRE100等の国際イニシアチブで「追加性がある方法で再エネを導入すること」が評価される傾向にあります。追加性とは、新たに再エネ発電設備を建設することによって、再エネを新規(追加的)に生み出すことです。オフサイトPPA(フィジカル)は正に追加性のある再エネの導入方法のひとつです。
※2 エネルギー使用量が原油換算で年1,500kL以上の事業者
新型コロナウイルスの感染拡大やロシア-ウクライナ戦争の勃発、急激に進行している円安の影響などで海外から輸入するLNGや石炭などの化石燃料価格が高騰し、卸電力取引市場(JEPX)の取引価格が上昇することで、市場を介して調達する電力の価格も値上がり傾向にあります。
オフサイトPPA(フィジカル)の契約を再エネの発電事業者と締結して一定期間の電力の調達価格を固定化できれば、その契約分の電力に関しては市場の価格変動の影響を受けません。
また、価格変動リスクの大きい「燃料費等調整単価」ですが、PPA契約分に関してはその影響を受けない点もメリットのひとつといえます。
一方、オフサイトPPA(フィジカル)には、メリットだけでなく以下のようなデメリットや注意点もあります。
PPA契約は、契約で定められた契約期間を全うする必要があり、解約時にはペナルティが課されるケースもあります。契約期間は発電事業者との協議により定められますが、一定期間の契約が必要で、20年間の長期に渡る場合もあります。
契約当初は市場の電力価格と比較して有利であったPPA契約も、中長期的には市場の電力価格と乖離する可能性があることにも注意が必要です。
ただし、電力と同時に環境価値も一定期間、安定的に調達できるため、電力ユーザーにとっては今後想定されているカーボンプライシング ※3への対応 を考えると単純な料金単価の比較では判断できないでしょう。
※3 カーボンプライシング…炭素(カーボン)が含まれるCO2の排出量に価格を付け(プライシング)、企業などCO2排出者の行動変容を促すために導入する手法。政府主導の手法としては、「炭素税」や「排出量取引」と呼ばれる制度があります。
参照:資源エネルギー庁HP 脱炭素に向けて各国が取り組む「カーボンプライシング」とは?
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_pricing.html
オフサイトPPA(フィジカル)の場合は、電力の供給に小売電気事業者を介する必要があるため、市場から調達する電力と同様に「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」が課せられます。
オンサイトPPAや自己託送の場合、現在の制度では再エネ賦課金が発生しません。(2024年7月時点)
現時点では、再エネ発電設備からの電力は時間帯や気候による変動が大きく、オフサイトPPA(フィジカル)の電力では、必要な電力需要の一部しか賄えない電力ユーザーがほとんどです。不足分は従来通り小売電気事業者から調達する必要があります。
小売電気事業者がPPAサービスを展開している場合は、PPA契約と電力契約を一本化することができます。エナリスも電力の小売とPPAサービスを両方提供している事業者です。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
>オフサイトPPAサービス(フィジカル) | 株式会社エナリス
ここまで、オフサイトPPA(フィジカル)について詳しく説明してきました。電力を環境価値と共に調達するスキームとしては、オフサイトPPA(フィジカル)の他にも「オンサイトPPA」や「自己託送」などがあります。それらとの違いを簡単に解説します。
電力ユーザーの建物の屋根や敷地内に太陽光発電などの再エネ発電設備を設置して、発電した電力を電力ユーザーが自家消費するのが「オンサイトPPA」です。オンサイトPPAの場合は発電事業者と電力ユーザーの直接契約となり、小売電気事業者を介する必要がありません。
両者の大まかな違いは下記のとおりです。
オンサイトPPA | オフサイトPPA (フィジカル) | |
---|---|---|
所有者 | 発電事業者 | 発電事業者 |
初期費用の負担者 | ||
維持管理費用の負担者 | ||
発電設備の設置場所 | 電力使用場所の敷地内 | 電力ユーザーの敷地外 (発電事業者の敷地内) |
契約期間終了後 | 撤去もしくは電力ユーザーへ無償譲渡される | 原則として譲渡等はされない (発電事業者が引き続き管理) |
発電した電気の活用 | 発電設備を設置した敷地内での活用のみ | 電力ユーザーの拠点で使用する分だけ活用可能 |
電気料金負担 | 発電事業者へ支払う | 小売電気事業者へ支払う |
もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
>コーポレートPPAとは?オンサイトPPAとオフサイトPPAの違いをわかりやすく解説!
自社施設内の主に太陽光発電設備で発電した再エネ電力を、別の場所にある自社の事業所に送電するのが「自己託送」です。
オフサイトPPA(フィジカル)と自己託送は、発電設備が遠隔地にあり、送電には既存の一般送配電事業者の送配電システムを使用する点で共通しているため、混同されやすいスキームです。
両者の大きな違いのひとつは「発電設備の所有者は誰か」という点 ※4 です。オフサイトPPA(フィジカル)の場合、所有者は発電事業者(第三者)となります。
※4 自己託送において発電設備をリースで行うケースもあります。
オフサイトPPAは、政府も普及を後押ししており、政府の補助金事業の対象です。補助金に応募できるのは発電事業者ですが、発電事業者が補助金を受けることで導入費用の負担が軽減されることが期待できれば、オフサイトPPAでの使用電力の料金が下がるなど、補助金の恩恵は電力ユーザーにも及ぶと考えられます。
オフサイトPPA契約は一般的に長期間にわたるため、電気料金の低減は電力ユーザーにとって大きな利点となり、事業活動にプラスとなるでしょう。
一例として以下のような補助金事業があります。
経済産業省資源エネルギー庁が公募する新設太陽光発電設備に対する補助金事業に「需要家主導型太陽光発電導入支援事業」があります。
この補助金事業は大規模な太陽光発電設備等の導入経費の一部を補助するもので、オフサイトPPAを目的とした再エネ発電所にも適用可能です。
オフサイトPPA(フィジカル)は、自社の敷地に余裕がない場合や建物の屋根に太陽光発電設備を載せられない場合でも、初期費用やメンテナンスの手間なく再エネ電力を調達できる優れたスキームです。
自社の脱炭素化や電気料金の安定化を目指す企業さまは、その手法のひとつとしてオフサイトPPA(フィジカル)の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
エナリスでは、さまざまなスキームを提供して企業さまの脱炭素経営を支援しています。
初期投資を抑えて再エネ電力を導入したい方はぜひご検討ください。
オフサイトPPA(フィジカル)の導入を検討している方はエナリスにご相談ください
エナリスでは、多くのお客さまの脱炭素化について、オフサイトPPA(フィジカル)をはじめとしたサービスのご提供やコンサルティングを実施しています。いくつかのスキームの中から、エナリスがお客さまのご要望や課題に合わせ、適切な脱炭素化の方法をご提案します。お気軽にご相談くださいませ。
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