
- エネルギー
系統用蓄電池とは?注目の電力ビジネスをわかりやすく解説します
「系統用蓄電池(蓄電所)」が注目を集めています。蓄電池は従来、貯めた電力を特定の需要設備に直接放電する、または太陽光などの発電所に併設して発電設備の一部として充放電することしかできませんでしたが、2022年12月の法改正 […]
地球温暖化対策として脱炭素社会の実現は社会全体の課題になっています。企業にとっても二酸化炭素等の温室効果ガスの削減は重要なミッションのひとつといえるでしょう。そこで、脱炭素経営を推進するために、知っておくべきなのが「環境価値」についてです。定義や目的、企業が取り入れる方法、メリットなどをわかりやすく解説します。
現在、私たちの生活に欠かせない電力は、火力発電や原子力発電、太陽光発電、風力発電など、さまざまな方法でつくられています。
どの発電方法でも電力としての価値は同じですが、原子力発電でつくられた電力と、「再生可能エネルギー」と呼ばれる太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス等でつくられた電力には、発電時に化石燃料を使用せず大気中の二酸化炭素を増加させないという付加価値もあります。その価値のことを「環境価値」といいます。
現在、地球温暖化は加速度的に進行しており、主要な原因のひとつが、二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの増加です。このまま地球温暖化が進むと、海水面の上昇により臨海部が水没したり、マラリアなどの熱帯性伝染病が世界規模で流行したりする危険性があるといわれています。地球温暖化を抑制するためには、大気中の二酸化炭素を増加させないエネルギーが必要です。
そこで、再生可能エネルギーや原子力などの非化石のエネルギーが持つ「二酸化炭素を増加させない」という価値を「環境価値」とし、電力自体の価値と「環境価値」を切り離して取り扱うこととしました。このようにすることで、自治体や企業等は環境価値を取り引きでき、活用しやすくなるためです。
では、企業はどのようにして環境価値を取り入れることができるのでしょうか。現在、主に3つの方法があります。
「環境価値」は証書やクレジットの形で切り離して扱われており、証書やクレジットは「電気の創出や使用にあたり、大気中の二酸化炭素を増加させていない」ということの証明に用いられています。企業は環境価値を証明する証書やクレジットを直接購入することで、環境価値を取れ入れることができます。(現在日本で環境価値を取り引きできる方法は主に「非化石証書」・「グリーン電力証書」「J-クレジット」の3種類。それぞれの特徴については本記事の後半で解説します。)
環境価値がセットになった電気メニューを契約することで、環境価値を取り入れることができます。
環境価値を取り入れる企業にとって、比較的手間の少ない方法です。
環境価値がセットになった電気の契約をご検討中のお客さまへ
エナリスでは、環境価値がセットになった電気メニューをご提供しています。
詳細はぜひ下記のページよりご覧ください。
企業は発電事業者とPPA(電力販売契約)を結び、発電事業者が設置する再エネ発電設備の電気を自家消費することによって、再生可能エネルギー由来の電気を利用することができます。
エナリスの「オフサイトPPAサービス(フィジカル)」
エナリスでは、電力の使用場所に敷地や空きスペースがない場合でも再エネ電力を調達できる「オフサイトPPA(フィジカル)サービス」をご提供しています。
追加性のある再エネ電力を調達できることに加え、電力価格の安定化も期待できます。
※オフサイトPPA以外のスキームについてもご相談・ご提案が可能です。
上記のうち、環境価値がセットになった電気メニューは比較的早い段階で企業による導入が進みました。
一方、PPAは、再エネ電源を増加させる効果を示す「追加性」があり、追加性はRE100等の国際イニシアチブから評価を得られやすいため、注目を集めています。
また証書やクレジットによる環境価値の取得は、経済的・物理的な制約からPPA等の方法を採ることが難しい企業にとっても実施しやすく、脱炭素を目指す企業での採用が増えていると言われています。
脱炭素についてもっと詳しく知りたい方はこちら
>脱炭素とは?脱炭素社会実現に向けての取り組みを交えて解説します!
なぜわざわざ前述のような取引を行ってまで、企業が環境価値を取り入れる必要があるのでしょうか。理由は主に2つあります。
「ESG投資」という言葉をご存知でしょうか。ESG投資とは「環境・社会・ガバナンス(企業統治)」への取り組みを積極的に行っている企業を重視して行う投資のことです。ESG投資の運用資産は年々増え、米国では全投資の33.2%、ヨーロッパでは全投資の41.6%をESG投資が占めています。
日本でもESG投資は拡大しており、2016年は投資全体の3.4%だったところ、2020年には24.3%にまで比率を高めています。(出典:GSIA「グローバル・サステナブル投資白書2020(GSIレビュー2020)」)
グローバル経済圏の一員となって自社に投資を呼び込むためには、ESGの要素の一つである「環境問題への積極的な取り組み」が欠かせません。
ESG投資について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
>ESG投資とは?注目の背景やCSRやSDGsとの違いを解説
ESG投資家はどうやって「投資先の企業が環境問題に積極的に取り組んでいるかどうか」を判断するのでしょうか。ESGへの取り組みを評価するための枠組みを、いくつかの国際イニシアチブが提示しています。
ESGに関する国際イニシアチブとして、以下のものなどが挙げられます。
企業は環境価値を取り入れるなどの「企業活動で排出する二酸化炭素を軽減する活動」によって、国際イニシアチブの認定を受けたり、組織に加盟したりすることができるようになります。このような国際イニシアチブからの評価は、企業にとってESG投資家や顧客に対する非常にわかりやすい「信頼の証」となります。
環境価値を取り入れるためには主に前述の3つの方法(環境メニューの導入、PPAの締結、証書・クレジットの購入)がありますが、近年注目を集めているのが、証書・クレジットの購入です。環境メニューの導入やPPAの締結は、基本的に使用した電力量分の環境価値を取り入れるのに対し、証書・クレジット購入の方法では企業の任意の量を取り入れることができ利便性が高いというのが主な理由です。
環境価値を証明する証書・クレジットは、グリーン電力証書、J-クレジット、非化石証書の3種類があります。
二酸化炭素を発生させない発電方法で作られた電力のうち、原子力を除く太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどの再生可能エネルギーを用いて発電されたものを「グリーン電力」といいます。グリーン電力証書は、資源エネルギー庁のガイドラインに基づき証書発行事業者がグリーン電力の環境価値を証券化したものであり、購入も証書発行事業者を通じて行います。
温対法のほか、CDP ※ やRE100、SBTなど国際的なイニシアティブ・目標に対しての各種環境報告書に再生可能エネルギーの使用量やCO2削減量を報告することができます。
また、グリーン電力証書を購入すると、事業者ごとに発行されるグリーン電力の使用を証明するシンボルマークの使用が許可され、製品や広告に記載することができます。
※CDP:環境影響を管理するための情報開示システムを運営する国際NGO(>CDPについて詳しくはこちら)
省エネ機器や再生可能エネルギーの導入、森林管理などで、二酸化炭素の削減や吸収した量を国が「クレジット」として認証する制度です。
温対法・省エネ法の報告への活用などに利用できるほか、カーボン・オフセット制度(CO2排出削減と吸収を一層促進するための認証制度)、ASSET事業(先進的な設備導入と運用改善の促進などでCO2排出量の大幅削減を効率的に図る事業)へも活用できます。
非化石証書は再生可能エネルギーや原子力など、化石燃料に頼らない方法で発電した電気の環境価値を国が認定した証書。「FIT非化石証書」「非FIT非化石証書(再エネ指定あり)」「非FIT非化石証書(再エネ指定なし)」の3種類があり、非化石価値取引市場へ入札して購入できます。
他の証書では対象になっていないFIT(固定買取り制度)電力も対象になっているのが特徴です。ほかの証書に比べて低価格で購入できることもメリットです。
3種の証書・クレジットの価格や購入方法などの違いは、下記のように整理できます。
証書名 | グリーン電力証書 | J-クレジット | 非化石証書※ |
---|---|---|---|
購入対象者 | 電力ユーザー、仲介事業者 | 電力ユーザー、仲介事業者 | 小売電気事業者、「FIT(再エネ指定)」は電力ユーザー、仲介事業者も購入可能 |
購入方法 | グリーン電力証書発行事業者から購入 | J-クレジット制度事務局が実施する入札で購入もしくは、J-クレジット保有者か仲介事業者から購入 | 非化石価値取引市場で入札して購入 |
価格 | 平均3~5円/kWh程度 | 再エネ由来:0.9~1.3円/kWh省エネ由来:0.5~0.8円/kWh | 「非FIT」は0.6円/kWh~「FIT(再エネ指定)」は0.4円/kWh~ |
主な使い道 | 温対法、CO2排出削減義務量(東京・埼玉)、CDP質問書・RE100の進捗状況報告など | 温対法、SHIFT・ASSET事業、カーボン・オフセット、CDP質問書・RE100の進捗状況報告など(再エネ由来のみ) | 温対法、CDP質問書・RE100の進捗状況報告など(トラッキング付きFIT非化石証書のみ) |
償却期限 | なし(購入後いつでも償却可能) | なし(購入後いつでも償却可能) | 発電した年度の翌年6月 |
転売 | できない | できる | できない |
※非FITの非化石証書については、バーチャルPPAというスキームを用いて、電力ユーザーと発電事業者が直接取引をすることが認められています。
(>バーチャルPPAについての解説はこちら)
注)2023年7月現在
各企業が証書・クレジットを検討する際には、費用面を重視する企業は「非化石証書」、電源の質を重視する企業は、電源のクオリティが担保されやすい「グリーン電力証書」、使い勝手を重視する企業は、転売できて使用期限がない「J-クレジット」を選ぶという傾向があるようです。
ただし、「グリーン電力証書」や「J-クレジット」は発行される量が少なく、比較的調達しやすいのは「非化石証書」になります。
証書を用いて環境価値を取り入れる際の注意点もあります。
証書によって環境価値を取り入れることは、企業にとっては大規模な設備投資をしなくても環境対策を講じることができるという大きなメリットがあります。
一方、再生可能エネルギーには追加性(新たな再エネ発電設備の設置につなげていくこと)が評価につながるという国際的な風潮があり、たとえば太陽光発電設備を自社で設置することや、企業の目的によっては、PPA(第三者保有の再エネ発電設備が生み出した電力を利用する契約)などの方が適しているケースもあるでしょう。
上記3種類の証書のうち転売できるのは「J-クレジット」のみになります。「非化石証書」と「グリーン電力証書」は必ず購入者自身が利用する必要があります。
環境価値を取り入れることは、企業においてさまざまなメリットがあります。全面的に再生可能エネルギーへ切り替えなくても、環境価値を取り入れることで社会貢献ができたり、企業価値やイメージ向上を図ったりすることができます。
昨今、消費者や投資家の環境に対する関心はますます高まっています。環境価値の活用について、この機会にぜひ検討してみてください。
エナリスは、お客さまに最も適した「環境価値の取り入れ方」をご提案!
証書の購入から再エネ設備の設置まで、お客さまの課題やニーズに合わせたさまざまな環境価値の取り入れ方をご提案します。
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東京工業大学大学院 総合理工学研究科を修了後、約30年間、環境、再生可能エネルギー、ODAコンサルタント会社に勤務。在職中は自治体の環境施策、環境アセスメント、途上国援助業務の環境分野担当、風力や太陽光発電プロジェクトなど幅広い業務に従事。技術士環境部門(環境保全計画)、建設部門(建設環境)の資格を持つ。また、英語能力(TOEIC満点)を生かし、現在は英語講師としても活躍中。
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