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温室効果ガスとは?排出の原因や種類を簡単にわかりやすく解説

「温室効果ガス」という言葉はよく耳にしますが、その発生メカニズムや影響について詳しく知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。本記事では、温室効果ガスの基本的な定義から発生の仕組み、主要な種類と特徴、世界と日本の排出状況まで幅広く解説します。政府が掲げている目標や社会的な取り組みにただ参加するのではなく、環境問題をメカニズムから理解し、より具体的な施策や的確な企業戦略に活かしていきましょう。

温室効果ガスとは

温室効果ガスとは、大気中に含まれる二酸化炭素やメタンなど、太陽光の熱を地表に閉じ込めて大気や地表を温める効果を持つガスの総称です。英語では「Greenhouse Gas」と呼ばれ、頭文字をとって「GHG」とも略されます。

詳細は後述しますが、温室効果ガスには太陽からの熱(赤外線)を吸収・放出し、地球の気温を保つ働きがあります。したがって、温室効果ガスは生物が生存できる環境を維持するために不可欠な存在なのです。

温室効果ガスによる地球温暖化の仕組み

温室効果ガスは、太陽から届いた熱エネルギーを地球の大気圏内に保持し、生物が生きられる適切な気温を維持するはたらきを持っています。もしもこの温室効果ガスが存在しなければ、地球の気温はマイナス19℃にまで下がってしまうと言われています。

しかし、産業革命以降、人類の経済活動は大気中の温室効果ガス濃度を急激に増加させました。その結果、温室効果が過剰となり、熱の放出が妨げられて地球温暖化を引き起こしています。人間の活動によって大気中の温室効果ガス濃度が過剰に増加した結果、本来は生命維持に不可欠な温室効果が地球環境への脅威となってしまったのです。

参考:気象庁|地球温暖化について

主要な温室効果ガスの種類と特徴

地球温暖化対策に取り組むための枠組みを定めた日本の法律「地球温暖化対策の推進に関する法律」は、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)での京都議定書の採択を受け、我が国の地球温暖化対策の第一歩として1998年に成立しました。この法律では、7種類の物質を温室効果ガスとして定めています。それぞれの温室効果や主な発生源、その特徴を下表にまとめました。

ガスの種類温室効果(CO₂を1とする場合)世界の温室効果ガス総排出量に占める排出量(2019年時点)主な発生源特徴
二酸化炭素(CO₂)約75%石炭、石油等の化石燃料や、プラスチック・木の燃焼・地球温暖化への影響が最も大きい・炭酸飲料やドライアイスにも使用
メタン(CH₄)28倍約18%化石燃料の採掘、水田、家畜のゲップや糞尿・天然ガスの主成分で、都市ガスの原料となる
一酸化二窒素(N₂O)265倍約4%窒素肥料の使用、工業活動・笑気ガス(麻酔)として医療用途で使用
ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)※代替フロン数百〜1万2千倍約2%(フロン類全体)・冷蔵庫やエアコンの冷媒、スプレー缶などに使用・温室効果が非常に強く規制対象
パーフルオロカーボン類(PFCs)※代替フロン等4ガス数千〜1万倍・半導体製造の過程で使用・温室効果が非常に強く規制対象
六フッ化硫黄(SF6)※代替フロン等4ガス23,500倍・優れた絶縁性能を持ち、電力供給システムの絶縁材に使用・温室効果が非常に強く規制対象
三フッ化窒素(NF3)※代替フロン等4ガス16,100倍・半導体・液晶製造過程等で使用・温室効果が非常に強く規制対象
参考: JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター|温暖化とは?地球温暖化の原因と予測
経済産業省|主な温室効果ガスの温暖化係数一覧

ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、六フッ化硫黄、三フッ化窒素は代替フロン等4ガスと呼ばれ、オゾン層を破壊するフロンガスの代わりに開発や利用をされてきたものです。1980年代後半から代替フロン等4ガスへの転換が進みましたが、代替フロン等4ガスが二酸化炭素の数百〜数万倍もの強力な温室効果を持っていることが明らかになったため、現在は厳しい排出規制がかけられています。

温室効果ガスは、私たちの日常生活におけるさまざまな活動からも排出されており、化石燃料由来の電気の使用、自動車の運転、暖房器具の利用などが温室効果ガスの発生に大きく影響しています。また、畜産業においては、肉用牛をはじめとする家畜のゲップがメタン排出の大きな要因となっています。

参考:JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター|1-03 温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量

世界の温室効果ガス排出状況

世界の温室効果ガスの排出状況は年々変化しています。ここでは、世界全体での温室効果ガスの排出量の推移や種類別の排出割合、さらに国別の排出量について解説します。

温室効果ガスの排出割合

参考:IPCCデータに基づくJCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター|1-03 温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量をもとにエナリス作成

人類が排出する温室効果ガスの中で最も割合が高いのは二酸化炭素で、全体の約75%を占めています。二酸化炭素のうち化石燃料由来のものが64%と大部分を占めており、その主な排出源は産業革命以降の工業化によるものです。

メタンや一酸化二窒素などは、湿地や土壌などからも発生しますが、農業や畜産業などの人間の経済活動・産業活動による排出が急増しています。特にメタンは、牛などが食物を消化する過程や水田からの排出が多く、その温室効果は二酸化炭素の28倍とされています。

一酸化二窒素は窒素肥料の使用や工業プロセスから発生し、二酸化炭素の265倍の温室効果があります。これらの人為的な温室効果ガスの増加が自然のバランスを崩し、地球温暖化を加速させているのです。

国別の二酸化炭素排出量

世界の二酸化炭素排出量を国別に見ると、2023年時点では中国が最も多く、次いでアメリカ、インド、ロシアと続き、日本は5番目に排出量が多い国となっています。

参考:GLOBAL NOTE|世界の二酸化炭素(CO2)排出量 国別ランキング・推移(EI)をもとにエナリス作成

2023年の国別の二酸化炭素排出量を円グラフにすると上のグラフのようになりますが、世界全体で見ると、中国の排出量は全体の30%以上を占め、アメリカが約13%、インドが約8%、ロシアが約5%、そして日本は約3%を占めています。これら上位5カ国だけで、世界の二酸化炭素排出量の約60%を占めていることになります。

日本は経済規模に対して省エネ技術が進んでいるものの、依然として主要排出国の一つであり、国土の割に排出量が多いため、温室効果ガス削減に向けた責任は重いと言えるでしょう。

温室効果ガス増加の原因と環境への影響

産業革命以降、人間活動の拡大に伴って急激に増加している温室効果ガス。その排出量増加の主要因となっている化石燃料の大量消費や森林減少の問題、そしてそれらが引き起こす影響について詳しく解説します。

排出量増加の主要因

温室効果ガスの排出量増加の最大の要因は、化石燃料の大量消費です。石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料は現代の社会基盤を支える主要なエネルギー源であり、火力発電所での発電や自動車の燃料、工場での生産プロセス、家庭の暖房器具など、あらゆる場面で使用されています。特に「大量生産・大量消費」型の経済活動が世界中に広がったことで、化石燃料の消費量は増加の一途をたどりました。

もう一つの要因は、森林減少による二酸化炭素吸収源の喪失です。2000年から2010年の間、世界では毎年平均約520万ヘクタールもの森林が減少しました。これは、1分間に東京ドーム2個分、1週間で東京都の約半分の面積の森林が消えたことを意味します。

森林は光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収する重要な役割を果たしていますが、農地転換や過剰伐採によってその機能が大幅に低下しています。特に熱帯地域の森林減少が著しく、地球温暖化を加速させる一因となっています。

参考:環境省|国際的な森林保全対策

地球温暖化の影響

冒頭でも説明したとおり、現代では温室効果ガスの増加により、地球から宇宙へ放出されるはずの熱が大気中に蓄積され、地球温暖化が急速に進行しています。地球温暖化が及ぼす主な影響は以下のとおりです。

上記はあくまで一例であり、地球温暖化の影響は非常に多岐にわたります。

参考:JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター|温暖化とは?地球温暖化の原因と予測
WWFジャパン|地球温暖化による野生生物への影響 
環境省|エコジン 2018年7月号 VOLUME.65特集 明日のサンゴ礁。 
地球環境研究センター|【解説】海から貝が消える? 海洋酸性化の危機  


世界と日本の温室効果ガス削減への取り組み

地球温暖化問題に対処するため、日本を含む世界各国は温室効果ガスの削減に向けてさまざまな取り組みを進めています。その中核をなすのが、2015年に採択されたパリ協定です。この協定では、すべての国が温室効果ガス削減に取り組むことが求められ、世界全体で気温上昇を産業革命前から「2℃未満」、可能であれば「1.5℃以内」に抑えることが目標とされています。

パリ協定の仕組みや背景、カーボンニュートラルの考え方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事:カーボンニュートラルとは? 温暖化のメカニズムから企業活動における取り組みを図解
IPCCとは? 組織の目的や構成・報告書の内容をわかりやすく解説
脱炭素とは? 脱炭素社会実現に向けての取り組みを交えて解説
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世界各国はこの枠組みに基づき、それぞれ独自の削減目標を設定。再生可能エネルギーの導入、電動車の普及、建築物の省エネ化、CCS(二酸化炭素回収・貯留)技術の活用など、さまざまな施策が進められています。企業の気候変動対策についても注目が集まっており、多くの企業が多様な取り組みを展開しています。
実際の取り組み事例について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事:企業が取り組むべき気候変動対策とは? 事例&成果も解説

なお、日本も2030年までに2013年度比で46%、さらに2050年には排出実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」の目標を掲げています。その達成に向け、再エネの導入促進や脱炭素経営の推進、グリーンファイナンスの活用など、多角的な取り組みが進行中です。詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事:脱炭素経営を推進するグリーンファイナンスとは
GX(グリーントランスフォーメーション)とは? 意味や取り組むメリットを解説

くわえて日本は、2025年2月に国連に新たなNDCを提出しました。この目標で「2040年に2013年比73%減」と野心的な数字を示すとともに、この目標に整合する形で第7次エネルギー基本計画を閣議決定しました。同時に閣議決定された「GX2040ビジョン」、「地球温暖化対策計画」と一体で、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現に取り組んでいく方向性が示されています。

参考:環境省|日本のNDC(国が決定する貢献)
経済産業省|GX2040ビジョン ~脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂~
環境省|地球温暖化対策計画

企業における効果的な温室効果ガス削減方法

企業が温室効果ガス削減に取り組むことは、環境保全への貢献だけでなく、コスト削減や企業価値向上にもつながります。多くの企業が脱炭素化に向けてさまざまな対策を実施していますが、その主な方法として以下が挙げられます。

LED照明への切り替えや省エネ型エアコンの導入、人感センサーの設置など、比較的取り組みやすい対策から始められます。小さな取り組みも積み重なれば大きな削減効果をもたらします。

工場や生産設備は企業の温室効果ガス排出量の大きな割合を占めています。エネルギー消費効率の高い設備導入や作業場の空調効率向上、排熱の再利用システムなどが効果的です。

国土交通省が2025年4月に発表した資料によると、日本の二酸化炭素直接排出量の19.20%は運輸部門が占めています。エコカーへの切り替え、企業間の共同配送、トラック等による輸送から環境負荷の小さい鉄道や船舶による輸送に転換するモーダルシフトの推進などによって、大幅な排出量削減が期待できます。

参考:国土交通省HP|運輸部門における二酸化炭素排出量

自社施設への太陽光発電システム導入や再エネ由来の電力プランへの切り替え、CO₂排出をオフセットする証書・クレジットの活用など、再生可能エネルギーや環境価値を導入することも重要な対策です。

これらは初期投資が必要なものもありますが、長期的にはエネルギーコスト削減につながり、企業の持続可能な成長に貢献します。企業が取り組むべき温室効果ガス対策について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事:企業が取り組むべき気候変動対策とは? 事例&成果も解説

ご紹介したように、企業が実施できる温室効果ガス対策にはさまざまなものがありますが、比較的手軽に着手できる取り組みとしては、電力会社との契約を再エネ由来の電力プランに切り替える方法があります。既存の電力契約を再エネ電力プランに変更するだけで脱炭素を進められます。

また最近では、環境価値を活用する企業も増えてきています。非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジットなどを購入し、使用している電力に環境価値を付与することで、実質的にCO₂排出ゼロの電力を使用したとみなされます。

企業の温室効果ガス削減は、環境問題への取り組みとしてだけでなく、いまや企業の競争力強化と持続可能な経営のために不可欠な要素となっています。一時的にコストがかかる取り組みもありますが、将来的にはエネルギーコスト削減や企業イメージの向上、投資家からの評価向上など、多くのメリットをもたらします。企業がそれぞれの事業特性や規模に合わせた対策を段階的に実施し、脱炭素社会の実現に向けて積極的に貢献していくことが重要です。

企業の温室効果ガス削減は、エナリスにご相談ください!
エナリスでは、脱炭素化した電力メニューをはじめ、非化石証書の代理購入やJ-クレジット創出/購入の支援など、企業の皆さまの温室効果ガス排出量削減をサポートしております。

ぜひ下記よりサービス詳細についてご覧ください。

Supervisor 監修者
近藤 元博 Motohiro Kondoh 愛知工業大学総合技術研究所 教授

1987年 トヨタ自動車株式会社。プラントエンジニアリング部 生産企画部 総合企画部長。第1トヨタ企画部長 戦略副社長会事務局長 他。国内外の資源、エネルギー、化学物質、環境管理、生産企画、経営企画、事業企画等事業戦略を担当。
2020年 愛知工業大学総合技術研究所 教授。産学連携、地域連携等を通じ、脱炭素社会、資源循環社会の達成に向けて研究開発、教育に従事。経済産業省総合資源エネルギー調査会 脱炭素燃料政策小委員会。カーボンマネジメント小委員会。内閣官房 国土強靱化推進会議 委員 他

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