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非化石証書とは?仕組みや特長をわかりやすく解説
発電時に化石燃料を使用しない電気の価値(環境価値)を取り扱う非化石証書。2021年11月には電力ユーザーでも購入できるようになりました。多くの企業から注目を集めている非化石証書について、言葉の意味や種類など基礎的な話から […]
2023年4月から改正省エネ法が施行されています。
一部の企業には省エネ法への取り組みが義務化されているほか、取り組み状況に応じて経済産業省で評価と公表がされるため、企業イメージの向上に繋がることも期待できます。
しかし、「改正の内容がよくわからない」「自社が対象になるのかどうかわからない」といった方も少なくないようです。本記事ではそんな方のために、省エネ法の概要や変更のポイント、企業に求められている対応について解説します。
現行の省エネ法は、正式名称を「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」といいます。元々は1970年代の石油危機をきっかけに、石油・石炭・天然ガスといった化石由来のエネルギーを効率的に使用することを目的として1979年に制定されました。制定以降も時代の変化とともに内容の改正や名称の変更が繰り返されています。
省エネ法はエネルギー使用者(法人・団体)に対してエネルギー使用について規制や報告を求める法律で、定義されているエネルギーとは燃料・熱・電気を指します。
※今回の改正で再生可能エネルギーが加わりました。詳しくは後述します。
今回の改正で規制対象の変更はありませんでしたが、改めてみていきましょう。
省エネ法の直接的な規制対象となるのは、主に工場・事業場を持つ事業者や、運輸分野の事業者です。工場・事業場は年度間エネルギー使用量が1,500㎘(原油換算値)以上の事業者が対象となります。
目安としては、コンビニエンスストアであれば30~40店舗以上、ファミリーレストランであれば15店舗以上となります。※あくまでも目安となります。自社が該当するかは関係各所にご確認ください。
上記の対象事業者に該当する場合には、エネルギー使用量について国へ届け出を提出し、「特定事業者」として指定を受けなければなりません。また、フランチャイズチェーン事業(連鎖化事業)で本部と加盟店の約款の内容が一定の条件に該当する場合には、本部が連鎖化事業者となって国に対して届け出を行い、特定連鎖化事業者の指定を受けることが必要となります。
エネルギー管理指定工場については年度間エネルギー使用量が1,500㎘未満、1,500㎘以上~3,000㎘未満、3,000㎘以上の3つで区分され、それぞれ対応すべき項目が変わります。
運輸分野については、特定輸送事業者と特定荷主が対象となります。特定輸送事業者は「輸送能力が、一定基準以上(鉄道300両、トラック200台、バス200台、タクシー350台、船舶2万総トン(総船腹量)、航空9千トン(総最大離陸重量))」(国土交通省)、特定荷主は「年間輸送量3,000万トンキロ以上」(経済産業省)として定められています。
それでは特定事業者等に該当しない中小規模の事業者は省エネ法に取り組まなくて良いのかというと、そうではありません。エネルギー使用量1,500㎘未満の事業者の報告は努力義務とされ、取り組み自体は求められているといえます。また、直接規制ではなく間接規制の対象に含まれる場合があります。
直接規制・間接規制については、下記の表をご覧ください。
2022年3月1日「安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。2022年5月13日、改正省エネ法が国会で成立し、2023年4月1日に施行となっています。前述のとおり省エネ法は制定以来、時代に合わせて改正を重ねてきましたが、なぜ今回はこのタイミングなのでしょうか。
2020年10月、当時の菅首相が2050年にカーボンニュートラルを目指すと世界に宣言したことは記憶に新しいでしょう。そして2030年のGHG(温室効果ガス)削減目標に向けて各事業者が取り組む中、再生可能エネルギーの普及が進んできています。一方で導入するだけではなく、それらのエネルギーも化石エネルギーと同様に合理的に使用する必要が出てきています。対象となる事業者はそのままに、省エネルギーと最適化によるCO2削減のペースをさらに加速させるために今回の改正がなされたといえます。
2023年度の改正省エネ法の変更点は、主に3点あります。改正前と比較しながら詳しくみていきましょう。
今回の法改正によって、合理化の対象となるエネルギーの定義が変更されました。
従来の省エネ法で合理化の対象とされていたのは化石由来の燃料・熱・電気の3つでしたが、今回は新たに非化石エネルギーも含められました。「化石由来だけではなく、すべてのエネルギーを合理化しよう」という考えのもと、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーや、水素、アンモニアなどについても報告の対象になります。
すべての特定事業者等に対して、2023年度の中長期報告書から非化石エネルギーへの転換目標を報告することが義務付けられるようになりました。すなわち非化石エネルギーの使用割合の向上が求められているのです。特定事業者等のうち、エネルギー使用量の多い自動車、鉄鋼などの主要5業種については、非化石エネルギー転換目標の目安が示されました。ここに定義される非化石エネルギーの導入方法とは、主に次のとおりです。
非化石エネルギーへの転換にあたっては「電力ユーザー自らが非化石電源を拡大する取り組みを評価」するという考え方が公表されています。そのため、電力ユーザー自らが太陽光発電設備などを設置する自家消費やオンサイトPPAなどの追加性※2を重視した取り組みに対しては、実際の非化石エネルギー量に係数1.2を乗じることが認められました。
※1 発電事業者が電力ユーザーの敷地内に太陽光発電設備を設置・運用し、発電された電気を電力ユーザーへ供給する仕組みのこと。
※2 再生可能エネルギー設備の増加を促す効果を指す。追加性の有無に明確な定義は無いが自家消費やPPAなど、電力ユーザー自身の資金で再生可能エネルギー電源を作り出す活動や、再生可能エネルギー事業者における再エネ設備投資につながる活動が「追加性がある」と考えられている。
係数1.2による重み付けが認められた非化石電気の導入方法には、自家消費やオンサイトPPAのほか、FIT/FIP対象外の再エネ発電所によるオフサイトPPAや自己託送などがあります。オフサイトPPAはオンサイトと違い、発電事業者が電力ユーザーの敷地外へ太陽光発電設備を設置して送電線から電気を供給するというものです。自己託送は遠隔地にある自社の発電設備で発電された電気を送配電ネットワークによって自社設備へ送電する方法をいいます。自家消費は敷地内や隣接地に発電所を持つ必要がありますが、自己託送であれば離れた土地で得られる電力も活用することができます。
また、小売電気事業者による再エネ100%の電力メニューの利用や、J-クレジット、非化石証書、グリーン電力証書などの環境価値の活用については、重み付けの対象ではありませんが、非化石エネルギーの転換として報告することができます。
従来の省エネ法では、特定事業者等に対して、電気の需要のピークカットやピークシフトなどによる「平準化」が求められていました。しかし今回の改正では、発電が多い時間帯に必要な分を使い、発電が少ない時間帯には使用量を抑える「最適化」という考え方に変わりました。
電力ユーザー自らが電気の需要パターンを変化させる「デマンドレスポンス(DR)」に取り組むと、省エネ法上の評価につながるなど、インセンティブを与える仕組みが加えられています。
評価には2つの軸が設けられています。1つ目はDRの実施回数に基づく評価です。2つ目は、月別や時間帯別の電気需要最適化係数によって算出する「電気需要最適化原単位」による評価です。これらの評価が省エネ法のクラス分け制度などにどのように反映されるのかについては、今後、検討が進められる予定です(2023年8月1日現在)。
>デマンドレスポンス(DR)について詳しく知りたい方はこちら
現在、省エネ法のクラス分け評価制度(SABC評価制度)では、特定事業者等から提出された定期報告書などをもとに事業者を4つのクラスへ分類しています。Sは優良事業者として経済産業省のホームページ上で公開されます。他方、Aはさらなる努力が期待される事業者、Bは停滞事業者、Cは要注意事業者という分類になり、Bクラス以下と判断された場合には現地調査や指導の対象となる場合があります。
今回の省エネ法改正によって、すべての特定事業者等は従来の省エネに加えて非化石エネルギーの転換に向けた具体的なアクションが求められることになりました。改正省エネ法では、自社における非化石電源の導入拡大が高く評価されます。
具体的な方法のひとつに、太陽光発電の導入が挙げられます。自社の設備として発電機を購入・設置するほか、第三者所有型のモデル(PPA)も普及してきています。なかでも自社の敷地外に設置する「オフサイトPPA」は大型の電力需要にも対応できるとして近年注目されています。
ほかにも、小売電気事業者が提供している再エネ電力メニューを活用したり、J-クレジットや非化石証書などで環境価値を取り入れたりするのも有効な手段です。大切なことは、各社がそれぞれのエネルギー使用に対する責任を認識し、まずは2030年という中期的な目標に向けて省エネや非化石エネルギーへの転換に計画的に取り組むことだといえます。
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