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カーボンプライシングとは?炭素税などの種類やメリット・日本の導入状況と今後の展望について
2050年のカーボンニュートラルを実現するためにはカーボンプライシングの導入が有用とされています。カーボンプライシングには様々な種類がありますが、代表的なカーボンプライシングである炭素税と排出量取引制度、クレジット制度に […]
世界的に環境経営への意識が高まり、多くの企業が温室効果ガス(GHG)排出量の削減に取り組んでいます。それに伴って、企業活動に関する情報の透明性がより強く求められるようになりました。
CDPは、気候変動や水、森林に関する企業の情報公開を促す国際NGO(非政府組織、Non-governmental Organization)。これまで、下記の記事でCDPの概要やメリット、2022年の変更点について解説してきました。
今回は、2023年・2024年のCDPの変更点について解説していきます。
CDPは、企業などの各種団体に対して、環境への取り組みに関する情報開示を求める活動を行う国際NGOです。気候変動や水資源の保全、森林などに関する企業の取り組み状況について質問書を送付し、得られた回答を年1回のレポートとして公開しています。CDPが質問書を送付するのは、これまで主要国の時価総額上位の大手企業でしたが、後述するように2024年からは中小企業用の質問書の送付も開始されます。こうした企業の情報公開を通じて、投資家や政策決定者などが、環境への影響を考慮した意思決定をするよう後押ししています。
CDPの前身である「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」は、2000年に英国で設立されました。やがて活動範囲がカーボン(炭素)だけでなく、水資源の保全や森林破壊にも拡大されたことなどから、2013年に組織名を略称であった「CDP」に変更しました。
CDPの詳細な活動内容や企業が参加するメリットはこちらの記事をご覧ください。
> CDPとは?活動内容の詳細、企業が参加する意義とは
2023年は、気候変動質問書の79%で変更なし、もしくは軽微な変更とされました。新たに追加された8つの質問のうち、主要な変更点である[C7 排出量内訳]と[C15 生物多様性]について解説します。なお、3つの質問が削除されましたが、いずれも別の項目へ統合されているため説明は省略します。
子会社のGHG排出量の内訳に関する質問が2つ追加されました。追加された質問は下記の通りです。
(C7.7) CDP回答に含まれる子会社の排出量データの内訳を示すことができますか。
(C7.7a)スコープ1およびスコープ2の総排出量を子会社別に内訳を示してください。
新しい質問が追加された背景としては、企業活動におけるGHG排出量を可視化する動きが高まっていることだと考えられます。現在、GHGプロトコルのScope3における排出量を算定・報告することが重視されており、そのような情勢を反映した変更と言えそうです。Scope3とは、原材料の仕入れや輸送、販売後の製品の使用や廃棄など、自社の活動に関連する他社の排出量を指します。
このような事情により、CDPの質問書に回答しない中小企業であっても、取引先企業からGHG排出量の算定を求められる可能性が高まっています。
なお、GHGプロトコルとは、事業者が任意でGHG排出量を算定・報告する際の国際的な基準です。GHGプロトコルやScope1~3に関しては、こちらの記事をご参照ください。
>Scope1,2,3(スコープ)とは?それぞれの違いや定義など サプライチェーン排出量の削減に向けた概念を解説
生物多様性への影響が大きい地域での活動に関して、2つの質問が追加されました。
(C15.4) 報告年度において、生物多様性への影響が大きい地域またはその周辺での活動がありましたか。
(C15.4a) 生物多様性への影響が大きい地域またはその周辺での、報告対象における貴社の活動について説明してください。
自社の事業活動を行う地域で生態学的影響があるかどうかを判断し、その内容について説明を求められるようになりました。
生物多様性は、2023年に開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)でも注目されたテーマです。この質問が追加された背景としては、「C7.排出量内訳」と同様に、生物多様性などの評価と開示の枠組みである「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」が設立されたことをはじめ、生物多様性に関する取り組みが世界的にクローズアップされるようになったことなどが挙げられます。
TNFDについて詳しくはこちら
>TNFDとは? TCFDとの違いや企業に求められる取り組みをわかりやすく解説
CDP質問書の2023年変更点の詳細は、下記の公式資料からご覧いただけます
CDP「2023年CDP気候変動質問書変更点」
2024年の質問書からは、開示のフレームワークが大きく変更されました。具体的には、気候変動、水資源の保全、森林破壊などの質問書を1つにした「統合質問書」に切り替わりました。それぞれの質問書で重複していた内容が減るため、複数の質問書に回答している企業の負担が軽減されるでしょう。ただし、質問書への回答を評価するスコアについては、これまでと変わらず、気候変動、水資源の保全、森林破壊のレポートそれぞれに対して評価される予定です。
また、気候変動レポートに関しては、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の基準に整合し、生物多様性レポートはTNFDのフレームワークとも整合性をとるとされています。
CDPは、年間の売上額が2億5,000万ドル(約384億円)未満の企業向けには、簡易版の質問書を設けていました。2024年には、中小企業の活動が環境に与える影響を考慮するため、中小企業向けの質問書が導入されました。大手企業のサプライチェーンに含まれる多くの中小企業に対しても、GHG排出削減の意識を醸成し、取り組みを促す考えです。
CDPは、2024年の変更点を反映した新たなプラットフォームを2024年5月に公開しました。2024年の質問書への回答スケジュールは6〜9月となります
2024年から中小企業に向けた質問書も整備されることになりましたが、このことが象徴しているように、環境に関する企業の情報を開示することは、あらゆる企業に求められる取り組みになってきました。
また、Scope3におけるサプライチェーンのGHG排出量も報告が求められるようになることから、取引先からGHG排出量のデータ提出を依頼されるケースも増えると考えられます。
こうした背景から、GHG排出量を算定・報告することは、企業の規模に関わらず必要な取り組みであると言えます。つまり、これまで自社で直接CDPの質問書に回答していなかった中小企業であっても、CDPの概要や質問書のポイントなどを理解し、積極的に取り組みを進めていく必要があります。CDPの質問書は毎年アップデートされるため、報告にあたっては、最新の情報をキャッチアップし、社内外の協力を得て進めることが大切です。
CDPへの回答を検討されている企業の皆さまへ。
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