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意外と知らない地球温暖化の影響とは?日本の現状と問題点も解説
地球温暖化は、私たちの生活にさまざまな影響を与えています。しかし、その全容を正確に把握している人は少ないのではないでしょうか。本記事では、地球温暖化のメカニズムから、世界、そして日本で起きている具体的な影響、国際社会と日 […]
地球温暖化は、私たちの生活にさまざまな影響を与えています。しかし、その全容を正確に把握している人は少ないのではないでしょうか。本記事では、地球温暖化のメカニズムから、世界、そして日本で起きている具体的な影響、国際社会と日本の対策まで幅広く解説します。
地球温暖化に伴う気温上昇や海面上昇、異常気象の増加、生態系への打撃など、今まさに直面している課題について理解を深めることができる内容となっています。地球や私たちの生活への深刻な影響を正しく認識して、将来のリスクを回避するための具体的な対策の知識を増やしましょう。
地球温暖化とは、大気中の温室効果ガス増加によって地球全体の気温が上昇する現象です。産業革命以降、人間活動による温室効果ガスの急増は「人為的気候変動」とも呼ばれ、気候に重大な影響を及ぼしています。例えば、現在の世界平均気温は産業革命前と比べて約1.1℃上昇しており、このままでは今世紀末までに最大5.7℃上昇する可能性もあります。
地球温暖化について理解を深めるために、まずは温室効果ガスの増加による温暖化のメカニズムと、気温上昇の推移について見ていきましょう。
参考:国際連合広報センター|気候変動とは何か?
全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)|地球温暖化の影響予測(世界)
地球温暖化は、大気中の二酸化炭素やメタン、フロンなどの温室効果ガスが増え過ぎることで引き起こされます。本来、温室効果ガスは、太陽光(赤外線)で温められた地表から放出される熱を適度に吸収するはたらきをしており、その結果現在の地球の平均気温は約14℃に保たれています。温室効果がない場合、宇宙に放出される熱の量が大きくなるため、気温は−19℃まで冷え込むと言われています。この適度な温室効果が人類の生存を支えてきたのですが、大気中の温室効果ガス濃度が急速に高まったことで、地球温暖化という危機的状況が生まれているのです。
温室効果ガスについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
>温室効果ガスとは?排出の原因や種類を簡単にわかりやすく解説
冒頭で触れたとおり、世界の平均気温は産業革命前と比較して約1.1℃上昇しています。大気中の二酸化炭素濃度を見てみると、産業革命前の1750年では280ppmだったものが、2013年には400ppmを超え、40%以上も増加。IPCCは「大気中の温室効果ガスは、過去80万年間で前例のない水準まで増加している」と報告しています。
上のグラフは、IPCCが策定した気候変動予測に用いるシナリオである「SSPシナリオ」に基づく気温の変化を表したものです。SSPシナリオでは、SSP1-1.9からSSP5-8.5と数字が上がるほど、温室効果ガスの排出量が増加することを意味します。
IPCC第6次評価報告書によると、もしSSP5-8.5のシナリオで進んだ場合、今世紀末には気温が5.7℃も上昇する可能性があると予測しています。これは、東京都の夏の気温が連日40℃超えになることを意味します。
そこまで極端なシナリオでなくとも、気温上昇を1.5℃までに抑えるか2℃まで許容するかで、海面上昇や生態系への影響、ゲリラ豪雨などの発生に大きな差が出ます。私たちの未来は、私たちの今の行動にかかっているのです。
参考:環境省|気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書
JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター|温暖化とは?地球温暖化の原因と予測
地球温暖化に伴う気候変動により、すでに世界各地で深刻な影響が生じています。海面上昇による沿岸地域の浸水、台風やハリケーンの大型化など、異常気象は年々深刻化しています。また、生態系への打撃も顕著で、サンゴの白化や北極圏の生物の生息地喪失が進行しています。
こうした環境変化は人間社会にも及び、食料安全保障の問題や水不足、感染症リスクの拡大といった悪影響が広がっています。
海面上昇は、地球温暖化の最も顕著な影響の一つです。過去100年間で世界の平均海面水位は約20cm上昇し、近年、その上昇速度は加速しています。
もしもSSP5-8.5のシナリオどおりに進んだ場合、北極の海氷は今世紀半ばに消失し、上のグラフにもあるとおり、海面水位は2100年までに最大約1メートルも上昇すると予測されています。
特に深刻なのは、ツバルやキリバスなどの低地島国です。すでに海岸線の後退や淡水への海水侵入が進行し、国家の存続さえ危ぶまれています。また、世界人口の約10%が海抜10m以下の沿岸地域に居住していますが、海面上昇は農地への塩害や淡水源の汚染、高潮被害の増大をもたらします。
日本でも東京湾や大阪湾沿岸の低地では、将来的に深刻な浸水リスクに直面する可能性があると言われています。
参考:気候変動適応情報プラットフォーム|ココが知りたい地球温暖化 気候変動適応編・影響編
地球温暖化に伴い、かつては「30年に一度」と言われた異常気象が頻繁に発生するようになっています。例えば、気温上昇により大気中の水蒸気量が増加したことで、より強力な台風やハリケーンが発生しやすくなりました。2019年の台風19号による関東甲信・東北を中心とした被害や、2022年のハリケーン・イアンによる米国フロリダ州の壊滅的被害はその一例です。
上の図は、地球温暖化による年平均降水量の変化をシミュレーションしたもので、左から、気温が「1.5℃」「2℃」「4℃」上昇した場合の降水量の変化を示しています。高緯度帯や赤道太平洋、一部のモンスーン地域では降水量が増加する一方で、亜熱帯の一部や熱帯の限られた地域では減少すると予測されており、地球温暖化が進むにつれてその変化が大きくなっていくことがわかります。
実際、降水パターンの変化により、一部地域では記録的な豪雨と洪水が頻発する一方、他の地域では長期的な干ばつが進行しています。アフリカのサヘル地域やオーストラリアでは砂漠化が加速し、農業に深刻な打撃を与えています。さらに、ヨーロッパや北米では熱波の頻度と強度が増し、2003年の欧州熱波では約15,000人が犠牲になるなど、地球温暖化は人命への直接的な脅威となっています。
地球温暖化が急激に進み、世界規模で異常気象が発生する様子を描いた2004年のアメリカ映画「デイ・アフター・トゥモロー」の世界が現実味を帯びてきたと言っても過言ではありません。
地球温暖化は、世界中の生態系にも深刻な打撃を与えています。北極圏では海氷の減少により、ホッキョクグマが主食のアザラシを狩る機会を失い、餓死するリスクが高まっています。
また、海水温上昇によるサンゴの白化現象も深刻です。サンゴは、体の中の「褐虫藻」という植物プランクトンが光合成で作り出す栄養を吸収して生きていますが、水温が30℃を超える状態が続くと共生する褐虫藻を失うため、サンゴが死滅する可能性があります。
海洋酸性化も進行しており、サンゴのほか、貝類やウニなどの炭酸カルシウムの殻をもつ生物の生存を脅かしています。
IPCC第6次評価報告書によると、陸上の生態系において「世界の気温が産業革命前から1.5°C上昇した場合は3~4%、2°C上昇で3~8%、3°C上昇で3~29%、そして5°C上昇で3~48%もの生物種が絶滅の危機に瀕する」と警告されています。また、海の生態系に目を向けると、同じくIPCCが2018年に公開した「1.5℃特別報告書」によれば、地球の平均気温が1.5°C上がるだけで世界中のサンゴ礁の70~90%が失われ、2°Cの上昇でほぼ全滅するという厳しい見通しが示されています。
ほかにも、乾燥化と高温化により世界各地で森林火災が増加し、動植物の生息地が失われるとともに、大量の二酸化炭素が放出されて温暖化を加速させる悪循環が生じています。
参考:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)|第6次報告書 政策決定者向け要約
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)|1.5℃特別報告書
地球温暖化は、人間の健康や社会構造にも多大な悪影響を及ぼしています。先にも少し触れましたが、熱波の頻発による熱中症リスクが高まり、WHO研究チームによれば熱関連死亡の37%が人為的気候変動に起因するとのことです。厚生労働省の資料によると、熱中症による死亡者数は1995年で318名だったものが、2022年には1,477名と約5倍に増加しています。
また、温暖化によりヒトスジシマカなどの蚊の生息域が北上し、デング熱や日本脳炎などの感染症リスクも拡大しています。さらに、農作物の生産量低下による食料安全保障の危機や、水資源の不足も深刻化しています。こうした異常気象によって住む場所を追われた気候難民が増加しており、資源をめぐる紛争リスクも高まっているのが現状です。
参考:環境省|気候変動と生物多様性の現状と国際的な動向
環境省 デコ活|地球温暖化が進むと秋も蚊が活発になる!? 懸念される感染症の脅威とは
厚生労働省|年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和4年)
日本も、地球温暖化の影響を強く受けており、年平均気温も上昇しています。特に2020年代は記録的な高温が続いており、猛暑日の増加や短時間強雨の頻発など、極端な気象現象の発生が顕著になっています。たった数年の間に、冬には極端に大雪が降ったり(ドカ雪)、夏は極端に暑くなったり、どんどん過酷になっていく日本の気候に危機感を覚える方も多いのではないでしょうか。こうした気候変動は農林水産業にも深刻な影響を与え、果実の品質低下や水産資源の北上などが確認されています。
また、台風の強大化や豪雨による水害の頻度の増加など、自然災害のリスクも高まっています。日本がこれらの気候変動にどう対応していくかが、今後の重要な課題となっています。
日本の年平均気温は長期的に上昇しており、気象庁の観測によると100年あたり1.40℃の割合で上昇しています。特に2024年の平均気温は基準値(1991〜2020年の平均)からの偏差が+1.48℃と、1898年の統計開始以来最も高い値を記録しました。1990年代以降は、特に高温の年が頻出するようになっています。
猛暑日(最高気温35℃以上)の年間日数も増加傾向にあり、1910年から2023年の統計では100年あたり2.3日の割合で増加しています。特に注目すべきは、最近30年間(1994〜2023年)の猛暑日の平均年間日数が約2.9日となっており、統計開始初期の30年間(1910〜1939年)の約0.8日と比べて約3.8倍に増加していることです。気象庁が公開している東京都のデータを見てみると、1990年ごろまで最大で7日だった猛暑日が、2023年には22日まで増加しています。
また、短時間強雨(ゲリラ豪雨)の発生回数も増加しています。1時間降水量80mm以上の年間発生回数は過去10年間(2012〜2021年)で約24回となっており、1976〜1985年の約14回から約1.7倍に増加しています。
参考:JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター|6-04 日最高気温35℃以上(猛暑日)の年間日数の経年変化(1910~2024年)
気象庁|大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化
気象庁|大都市における猛暑日日数の長期変化傾向
地球温暖化は、すでに日本の農林水産業にも深刻な影響を及ぼしています。
これらの変化は、私たちの食卓に並ぶ食材の品質や価格にも直結しており、地球温暖化が遠い未来の問題ではなく、すでに私たちの日常生活に影響を及ぼし始めていることを示しています。
参考:農林水産省│農業生産における気候変動適応ガイド りんご 編
農研機構│(研究成果) 温暖化により増加しているナシ発芽不良の主要因が、「凍害」であることを解明
笹川平和財団│サケの母川回帰と海水温の変動〜サケの恋に与える影響〜
独立行政法人 森林総合研究所│地球温暖化と森をめぐる8つの質問
温暖化に伴う自然災害リスクの増大は、日本の防災対策にも新たな課題をもたらしています。近年、短時間に大量の雨が降る集中豪雨や、同じ場所に発達した雨雲が流れ込んで大雨を降らせる線状降水帯が発生しやすくなり、平成27年関東・東北豪雨のような記録的な大雨災害が頻発しています。この豪雨では堤防決壊や河川氾濫により広範囲の浸水被害が発生し、従来の防災計画では対応できない事態となりました。
また、海水温上昇により台風が強大化し、高潮災害のリスクも高まっています。海面上昇に伴う沿岸部の浸水リスクも増しており、特に東京湾や大阪湾、伊勢湾などのゼロメートル地帯では、長期的な対策が求められています。
これらの課題に対応するため、気候変動予測を踏まえたリスク評価の見直しや、ハード・ソフト両面からの総合的な防災対策の強化が必要です。
地球温暖化は国境を越えた課題であり、これに立ち向かうために国際社会は多くの枠組みを築いてきました。その中心的な合意の一つが、2015年に採択された「パリ協定」です。これは、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という世界共通の長期目標を示すものであり、各国が自主的に温室効果ガスの削減目標(NDC)を掲げて取り組んでいます。
こうした国際的な目標設定には、IPCCの科学的知見が重要な根拠となっています。IPCCの「1.5℃特別報告書」は、世界の気候政策に大きな影響を与えました。パリ協定の詳細や背景、カーボンニュートラルの基本的な考え方については、以下の記事をご覧ください。
>カーボンニュートラルとは? 温暖化のメカニズムから企業活動における取り組みを図解
>脱炭素とは?脱炭素社会実現に向けての取り組みを交えて解説
>IPCCとは?組織の目的や構成・報告書の内容をわかりやすく解説
>COPとは?概要や企業への影響をわかりやすく解説
日本もこの国際的な動きに呼応し、2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減、2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げています。これを達成するため、再生可能エネルギーの導入促進や、省エネ技術の普及、電力・産業・運輸など各部門における脱炭素化が進められています。こうした国内の政策や制度、企業の対応などについては、以下の記事をご覧ください。
>脱炭素経営を推進するグリーンファイナンスとは
>GX(グリーントランスフォーメーション)とは?意味や取り組むメリットを解説
くわえて我が国は、2025年2月に国連に次の気候変動対策目標を提出しました。この目標では、温室効果ガス排出量を2040年に2013年比73%減と野心的な数字を示すとともに、この目標に整合的な形で第7次エネルギー基本計画を閣議決定しました。加えて同時に閣議決定された「GX2040ビジョン」、「地球温暖化対策計画」と一体的に、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現に取り組んでいく方向性が示されています。
地球温暖化への対応には、その原因となる温室効果ガスの排出量を減らす「緩和策」だけでなく、すでに生じているもしくは将来予測される気候変動の影響に対処する「適応策」も不可欠です。日本政府は、2018年に「気候変動適応法」を施行し、農作物の品種改良、災害対策の強化、熱中症対策など分野別の適応計画を進めています。
また、省エネ施策の実施や再エネの活用など、企業が実施できることも多いため、適応と緩和の両面から積極的に行動することが重要です。企業が現実的に取り組める施策については、以下の記事をご覧ください。
ここまで解説したとおり、地球温暖化は世界中で深刻な影響を及ぼしており、異常気象の増加や生態系破壊、海面上昇など数多くの問題をもたらしています。日本でも気温上昇や豪雨災害の増加、農作物への影響が顕著になっています。
地球温暖化を抑えるためには、パリ協定に基づく国際的な取り組みと共に、企業や個人レベルでの省エネや持続可能な消費行動が不可欠です。私たちの今の選択が、未来の地球と子孫の生活環境を左右するのです。
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1987年 トヨタ自動車株式会社。プラントエンジニアリング部 生産企画部 総合企画部長。第1トヨタ企画部長 戦略副社長会事務局長 他。国内外の資源、エネルギー、化学物質、環境管理、生産企画、経営企画、事業企画等事業戦略を担当。
2020年 愛知工業大学総合技術研究所 教授。産学連携、地域連携等を通じ、脱炭素社会、資源循環社会の達成に向けて研究開発、教育に従事。経済産業省総合資源エネルギー調査会 脱炭素燃料政策小委員会。カーボンマネジメント小委員会。内閣官房 国土強靱化推進会議 委員 他
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