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デマンドレスポンスとは?参加するメリットや基礎知識、実施までの流れ、注意点をわかりやすく解説します
電力ユーザーが節電や自家発電装置を稼働するなどして、電力需要量を変動させることで、需要と供給のバランスを取るデマンドレスポンス(DR)。実施することで電力ユーザーは電力の安定供給に貢献できるだけでなく、報酬を受け取れるメ […]
電気料金のコスト削減と脱炭素への対応という2つの課題に直面する日本の企業。足元では2022年・2023年に大手電力をはじめ電力各社が電気料金の見直しを行いました。一方で2050年のカーボンニュートラル達成に向けて社会全体で脱炭素化が推進されており、企業としての脱炭素への取り組みも急務です。「コスト削減」と「脱炭素」という課題を同時に解決していくためには、エネルギー政策の方向性を理解し、それが企業活動にどのような影響をもたらすかを考慮した上で戦略を立てることが鍵となります。本記事では、エネルギー政策の重要なテーマのひとつであるエネルギーミックスについて、その概要や最新動向を解説し、企業が今すぐ実践できる再生可能エネルギー導入法を紹介します。
エネルギーミックスとは、石炭・LNG・原子力・再生可能エネルギーなど「特徴の異なる発電方法」を組み合わせることで、電力を安く・環境負荷を抑えて・安定して供給しようとする考え方です。
日本のエネルギー政策は「S+3E」という基本原則に則っています。S+3Eは安全性(Safety)、経済効率性(Economy)、環境への適合(Environment)、エネルギーの安定供給(Energy Security)の頭文字を取ったものです。
エネルギーミックスは、原子力などの安全性(safety)を大前提に、以下の指標を見ながら最適なバランスが検討されます。
参考:経済産業省「METI Journal 知っておきたい経済の基礎知識~S+3Eって何?」
独立行政法人中小企業基盤整備機構「J-Net21 エネルギーミックスとは?」
これら3つの指標は互いにトレードオフの関係にあります。発電コストが一時的に安くても環境負荷が高かったり、CO2排出量が少なくても導入コストやインフラ整備の費用が高かったりと、万能な電源は存在しません。そこで複数の電源を組み合わせながら、長所と短所を補完し合うエネルギーミックスを中長期的に考えることが不可欠になるのです。
それぞれの発電方法の特徴を表にまとめました。
■発電方法ごとの特性
| 電源 | コストの目安 (日本, 円/kWh) 2040年 ※政策経費あり | 発電時のCO2排出量 (g-CO2/kWh) 2020年 | 出力のコントロール性 |
|---|---|---|---|
| 太陽光(事業用) | 6.9-8.8 | 0 | 不可 (天候に左右される) |
| 太陽光(住宅) | 7.8-10.6 | 0 | 不可 (天候に左右される) |
| 風力(陸上) | 12.6-14.5 | 0 | 不可 (天候に左右される) |
| 風力(洋上) | 13.5-14.3 | 0 | 不可 (天候に左右される) |
| 水力(小水力) | 26.5 | 0(貯水池からの温室効果ガスは別枠) | 方式による ※貯水式は調整可能/流れ込み式は自然まかせ |
| 水力(中水力) | 12.9 | 0(貯水池からの温室効果ガスは別枠) | 方式による ※貯水式は調整しやすい/流れ込み式は自然まかせ |
| 地熱 | 16.1-16.8 | 約4–740(平均122) ※ライフサイクル全体で見るとCO2排出量は極めて低い水準 | ある程度可能 ※基本的には安定的な出力 |
| バイオマス(専焼) | 32.9 | 燃焼時のCO2は、生長時の吸収分と相殺されるため計算上はゼロ(カーボンニュートラル扱い) | 出力調整可能 |
| LNG火力 | 16.0-21.0 | 443 | 出力調整可能 ※起動停止・負荷追従が得意 |
| 石炭火力 | 13.6–22.4 | 1,024 | 出力調整可能 ※ガスより遅い |
| 石油火力 | 24.9–27.6 | 893 | 出力調整可能 |
| 原子力 | 11.7〜(前提次第でブレ大) | 0 | 低 ※基本は一定出力 |
日本政府はこれらの発電方法をどのようなバランスで組み合わせるのが最適だと考えているのでしょうか。政府の見通しを見てみましょう。
日本の電源構成の見通しは、政府が策定する「エネルギー基本計画」によって定められ、少なくとも3年ごとに改定・見直しが行われます。
最新の第7次エネルギー基本計画で新たに示された2040年度の見通しと、それ以前の第6次エネルギー基本計画で示された2030年度の見通しを比較することで、日本のエネルギー政策の中長期的な方向性を見ていきましょう。
| 2023年度実績 | 2030年度の 見通し | 2040年度の 見通し | |
| 再エネ | 22.9% | 36〜38% | 40〜50% |
| 原子力 | 8.5% | 20〜22% | 20% |
| 火力合計 | 68.6% | 41% | 30〜40% |
日本の発電割合について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
>図解でわかる!日本の発電割合(2025年公表データ)
ここから3つのポイントが読み取れます。一つずつ解説します。
2030年度には年間発電電力量全体の36〜38%に、さらに2040年度には40〜50%へと比率を大幅に引き上げる見通しとなっています。スピードアップのため、政府は以下のような支援策を展開しています。
これらにより、中小企業でも再エネ設備導入ハードルが下がり、「環境に優しい会社」「社会に貢献している会社」としてのイメージ向上にもつながります。
東日本大震災前、原子力は国内発電量の約3割を担う主力電源でした。しかし、2011年3月の東京電力福島第一原発事故の影響で全国の原子炉が一斉に停止しました。その後、安全基準(新規制基準)を満たしたとみなされた発電所から段階的に再稼働が進むことで、2030年度には再び約20%前後まで回復し、2040年度も同水準を維持する見通しとしています。この20%の目標達成には、約4割の原発が廃炉になる中、安全基準をクリアするための巨額な安全対策への費用や、全ての原発の再稼働と60年運転延長などが前提になってきます。そのほか、避難計画などを含む地元合意や使用済み核燃料に関するいわゆるバックエンド問題など様々な「安全性」に関わる課題があります。
2023年2月に「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定され、その中で原子力発電については以下の4つの方針が示されています。
日本では、2023年度時点で約7割を占めている化石燃料による火力発電の比率を、2030年度には4割、2040年度には3割程度にまで減少する見通しとなっています。こうした脱炭素の実現に向け、国はさまざまな制度や仕組みを通じて海外からの化石燃料への依存の低減を図っています。
たとえば、「改正省エネ法」によって、事業者に対して設備の高効率化やエネルギー使用量の管理強化が求められています。また、2012年に導入された地球温暖化対策税(温対税)や2026年度から本格導入される排出量取引制度(GX-ETS)などカーボンプライシングの導入・強化も進められており、企業活動におけるCO2排出削減を経済的に促す仕組みが整備されつつあります。
これらの政策により、企業は省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの導入に取り組むインセンティブを得ています。
カーボンプライシングについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
>カーボンプライシングとは?炭素税などの種類やメリット・日本の導入状況と今後の展望について
ここまで日本のエネルギーミックスの方針を解説してきましたが、欧米や中国ではどうなのでしょうか?
2024年のアメリカ、欧州(EU)、中国および日本のエネルギーミックスの比較は以下のとおりです。各国の2030年の見通し(予測も含む)も示しました。
| 天然ガス (2024年) | 石炭 (2024年) | 化石燃料 (2024年) | 原子力 (2024年) | 再エネ (2024年) | 再エネ (2030年) | |
| アメリカ | 42.5% | 14.9% | 57.9% | 17.8% | 24.8% | 40〜50% |
| 欧州(EU) | 15.7% | 9.8% | 29.1% | 23.6% | 47.5% | 約69% |
| 中国 | 3.0% | 58.2% | 62.0% | 4.4% | 33.6% | 約40%超 |
| 日本 | 33.9% | 31.9% | 68.5% | 8.3% | 23.2% | 36〜38% |
シェールガス革命による圧倒的な安さから天然ガスが主役(42.5%)になっています。前政権のIRA(インフレ抑制法)による巨額投資により再エネの導入も進んできており、2024年には太陽光+風力が石炭を上回り、再エネ全体では約25%に達しています。EIAの予測では2030年には40〜50%に達する見通しですが、現政権によりIRAが縮小・撤廃された場合のリスクがあります。
2025年に再登板したトランプ政権は、輸入品に対して国・地域に応じて個別に税率を設定した「相互関税」を発動しました。
また、これとは別に、米通商当局は東南アジア4カ国(カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)を経由した中国製の太陽光パネルに対し、最高3,500%を超える高率の関税を最終決定しています。(2025年12月10日時点)
一方で「エネルギードミナンス」を掲げ、自国内で石油や天然ガスを生産し、友好国に供給し、他国よりもエネルギー面で優位な立場を取ることを目指しています。
上記のような方針から、アメリカ国内では以下のような事態が起こるといわれています。
欧州(EU27カ国)では、2024年のエネルギーミックス(電源構成)に占める再エネの割合が47.5%に達し、化石燃料の比率は30%を下回りました。太陽光発電だけで11%に達して、石炭火力(9.8%)を超えています。原子力については23.6%で、ドイツが原発ゼロを達成した一方で、フランスでは7割近くになって二極化しています。
EUのエネルギー政策は、ウクライナ侵攻を契機に2022年5月に策定されたREPowerEU計画を軸に急速にアップデートされています。同計画はロシア産化石燃料からの完全脱却とクリーンエネルギーへの移行加速を目指して以下3本柱で構成されます。
欧州は省エネ化と再エネ導入を進める方針と言えますが、一方で産業競争力の観点でエネルギー価格などのバランスを取るべきとの声もあり、今後の動きには注視が必要です。
参考:資源エネルギー庁|エネルギーを巡る状況について(2024年 5月)
中国は2025年9月に発表した新しいCO2削減目標において、2030年までのピークアウトと2035年までのピーク時比で7〜10%削減をコミットしています。そのために太陽光・風力発電の導入量を2020年から6倍の設備容量3.6TWに拡大する見通しです。すでに2024年の再エネの割合は33.6%に達しており、太陽光・風力発電の累積導入量も1.5TWに達して欧米の設備容量をはるかに凌駕しています。2024年だけで、0.3TW近い太陽光発電が導入されています(世界全体の半分以上)。
一方で、中国のエネルギーミックスの主役は石炭(約6割)ですが、水力(13.4%)、風力(9.8%)、太陽光(8.3%)を合わせた再エネの割合も3割を超えて第二の主力電源になっています。
企業が再生可能エネルギーを導入する方法はさまざまあります。どのような手段がよいのでしょうか?
下表は、導入ハードルが低い順に整理した再エネ調達手段です。自社の脱炭素化計画や経済性と照らし合わせて最適な方法を選びましょう。
| 手段 | 概要 | 追加性 ※ | 調達価格の 安定性 |
|---|---|---|---|
| 再エネ電力メニュー | 契約切替のみで導入可能 | なし | △ |
| CO2フリー電力メニュー | 契約切替のみで導入可能 ※再エネ電源以外のCO2フリー電源や証書を含む | なし | △ |
| 非化石証書購入 | 証書の購入により環境価値のみを調達 | 証書の種類・発電設備による | △ |
| オンサイトPPA | 発電事業者が工場屋根等に太陽光を設置 | あり | ◯ |
| オフサイトPPA(フィジカル) | 遠隔発電所と長期契約 | あり | ◎ |
再エネ電力メニューは、契約切替だけで実質再エネ化を達成できる最もシンプルな方法です。
鋳物製造を行うキャストアンドー(新潟県)は、エナリスの再エネ電力メニューに切り替え、電気料金を安くしつつ、CO2排出量を従来の4分の3にできる見込みです。高エネルギー産業においても、工夫次第で脱炭素化と電力コスト抑制の両立を目指すことは十分に可能です。
>キャストアンドーさまの導入事例を見る
エナリスが提供する再エネ電力メニューはこちらをご参照ください。
>選べる電気料金メニュー(実質再エネ)
非化石証書は、再生可能エネルギーで生まれた“環境価値”だけを購入して既存の電力契約に上乗せする仕組みです。現在の電力契約を維持したまま再エネ化ができます。
エナリスでも、非化石証書代理購入サービスを提供しています。詳しくは下記のページをご覧ください。
>非化石証書代理購入サービス
オンサイトPPAは、自社の屋根や空地に発電事業者がパネルを設置し、その電気を固定料金で使用する仕組みです。企業は初期費用ゼロで電気代を安定させつつ CO2を削減できます。さらに、自社の敷地内で発電した電気を直接利用するため、送配電システムを介さないことから託送料がかからず、電気料金のさらなる安定化にも繋がります。既存の発電所ではなく新たに設置された設備からの電力を使うため、「追加性」があり、再生可能エネルギーの導入拡大に直接貢献できるというメリットもあります。
エナリスのオンサイトPPAサービスはこちらをご覧ください。
>オンサイトPPAサービス【TPO PLUS】
オフサイトPPA(フィジカル)は、遠隔地にある再エネ発電所と長期契約を結び、送配電システム経由で再エネ由来の電力を受け取る仕組みです。直前でご紹介したオンサイトPPAと同様「追加性」がある再エネ導入方法なので、CDPやRE100等の国際イニシアチブで評価されやすくなります。オフサイトPPAには電力と環境価値をセットで供給する「フィジカル」と環境価値のみを提供する「バーチャル」があります。
たとえば、ゲオホールディングスは197店舗でオフサイトPPAを導入し、年間約1万トンのCO2削減を実現しました。「スペースがないと追加性のある再エネ導入はできない」という常識を覆す好例です。
参考:ゲオグループ 太陽光発電によるオフサイトPPA電力を197店舗へ導入 2050年までに「CO₂排出実質ゼロ社会」を目指した取り組みを加速 | 株式会社ゲオホールディングス
エナリスのオフサイトPPAサービスはこちらをご覧ください。
>オフサイトPPAサービス(フィジカル)
また、オフサイトPPAの別のスキームとして、環境価値のみを取引する「バーチャルPPA」という仕組みもあります。詳しくは下記の記事をご覧ください。
>バーチャルPPAとは?電力ユーザー&発電事業者から見たメリット・デメリットを解説
エナリスでは市況に合わせて「フィジカル」と「バーチャル」を切り替えられる「ハイブリッド・オフサイトPPA」サービスも提供中です。
>ハイブリッド・オフサイトPPAサービス
企業の再生可能エネルギー活用は、この国のエネルギーの未来を左右する重要な鍵となります。まずは以下の3ステップで自社の脱炭素化を進めましょう。
本記事で取り上げる再エネ活用は、ステップ3「減らす」において特に重要な取り組みのひとつです。
コスト削減と脱炭素推進を両立するには、省エネ化と再エネ導入の組み合わせが鍵となります。まずは小さな一歩から始めましょう。
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千葉県出身。東京工業大学においてエネルギー変換工学の研究で工学博士、製鉄会社研究員、ITコンサルタントなどを経て、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて取り組む研究者・コンサルタントとして現在に至る。持続可能なエネルギー政策の指標化(エネルギー永続地帯)や自然エネルギー100%のシナリオの研究などに取り組みながら、国内外の自然エネルギーのデータ分析や政策提言を行う。
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