GX・脱炭素といえばエナリスエナリスジャーナルエネルギーコーポレートPPAとは?オンサイトPPAとオフサイトPPAの違いをわかりやすく解説!

コーポレートPPAとは?オンサイトPPAとオフサイトPPAの違いをわかりやすく解説!

昨今の脱炭素化の世界的な潮流の中で、再生可能エネルギーの導入をはじめとする脱炭素推進に取り組む企業が増えています。脱炭素化を推進しない企業は、投資家や消費者、国際的なイニシアチブなどからの評価を落とす可能性があり、脱炭素への取り組みが企業経営にとって喫緊の課題になっているとも言えます。

2025年9月現在の燃料価格は2021〜2022年前後の高騰時期と比べると落ち着いていますが、世界的な需給バランスや地政学リスクの影響で、再び高騰する可能性は否定できません。企業にとっては、光熱費の変動が経営に与える影響は大きいため、電気料金を固定単価で安定させ、長期的な見通しを持ちやすくしたいというニーズが高まっています。

そのような状況を背景に、現在注目を集めているのが企業が電気を調達する仕組みのひとつである「コーポレートPPA」です。

本記事では、コーポレートPPAの意味や特長、オンサイトPPAやオフサイトPPAの違いについてわかりやすく解説していきます。PPAの導入に興味がある企業の方は、ぜひ参考にしてください。

※本記事では、コーポレートPPAの種類として「オンサイトPPA」「オフサイトPPA(フィジカル)」の特徴を中心に解説いたします。オフサイトPPAにはバーチャルPPAという形式もありますが、これは電力の直接的なやり取りを伴わず特徴がやや異なるため、今回の記事では詳しい説明は割愛させていただきます。

バーチャルPPAについては下記の記事をご覧ください。
>バーチャルPPAとは?電力ユーザー&発電事業者から見たメリット・デメリットを解説

コーポレートPPAとは

コーポレートPPA(Power Purchase Agreement)とは、電力ユーザーが小売電気事業者や発電事業者、またはその両方と契約を結び、再エネ電力を直接調達する仕組みのことです。

企業は発電事業者とPPA契約を結ぶことで、発電設備を自ら保有しなくても、再生可能エネルギー由来の電気の利用を中長期的に確保することができます。また、電気料金の安定化や低減につながる可能性もあります。

コーポレートPPAの種類

コーポレートPPAは発電設備をどこに設置するかによって、「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」の2種類に分けられます。

  1. オンサイトPPA:自社の敷地に設置
  2. オフサイトPPA:自社の敷地外に設置

発電場所と電気の使用場所が離れている(オフサイトPPA)場合、一般送配電事業者が管理する送配電網を使って送電することとなるため、上記のような分類がされています。 以下、「オンサイトPPA」「オフサイトPPA」について詳細をご説明します。

オンサイトPPA

オンサイトPPAは、電力ユーザーの敷地内に発電事業者の発電設備や蓄電設備を設置し、電気の購入や利用に関する契約を結ぶ仕組みを指します。

オンサイトPPAの特長

オンサイトPPAの主な特長は、発電設備の設置が可能なスペースがあれば、初期投資を抑えて追加性のある再エネ電気を調達できるという点です。 屋根上などの空きスペースや駐車場などがある場合に導入しやすい仕組みといえます。

オンサイトPPAで利用する発電設備

オンサイトPPAで導入されている発電設備は、主に太陽光発電システムとなっています。太陽光発電は他の発電設備と比較して導入コストを抑えやすく、さまざまな場所に設置可能な発電設備です。

オフサイトPPA

オフサイトPPAとは、遠隔地で第三者が所有する敷地に発電事業者が保有または新たに設置する再エネ発電設備から電気や環境価値の購入契約を交わす仕組みのことです。「オフサイトコーポレートPPA」と呼ばれることもあります。

オフサイトPPAの種類

オフサイトPPAは、環境価値と電力をセットで扱うかどうかで、「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」に分けられます。

環境価値と電力をセットで扱うPPAを「フィジカルPPA」と呼びます。
現状では、ただ単に「オフサイトPPA」という場合は、フィジカルPPAを指すのが一般的です(本記事でもフィジカルPPAを中心に解説しています)。

一方、再生可能エネルギーで発電した電力に含まれている「環境価値」のみを買い取る契約モデルを「バーチャルPPA」と呼びます。電力ユーザーは、現在契約している電力契約を継続しながら別の発電事業者から環境価値のみを購入することができます。

これまで説明してきた内容をまとめると、以下の図のようになります。

※記事冒頭でご説明のとおり、本記事では「オンサイトPPA」・「フィジカルPPA」を中心に解説しており、バーチャルPPAの詳しい解説は割愛しています。

契約後、当該発電所で生じた電力は、既存の送配電網を活用して電力ユーザーのオフィスや工場・倉庫などへ送電されます。

オフサイトPPA(フィジカル)の特長

自社の敷地に発電設備を設置するためのスペースがない場合でも、自社外の発電設備から再エネ電気を調達することができます。

全国に店舗を展開するゲオホールディングス(以下、ゲオ)も、オフサイトPPA(フィジカル)を活用して再生可能エネルギーを導入している事業者の一つです。ゲオの店舗は一般的な小売店と同様に、屋根や駐車場のスペースに限りがあるため、太陽光発電パネルの設置が難しいケースがありますが、オフサイトPPA(フィジカル)を利用することで、敷地内に発電設備を設置することなく再生可能エネルギーを調達しています。

参考:ゲオグループ 太陽光発電によるオフサイトPPA電力を197店舗へ導入2050年までに「CO2排出実質ゼロ社会」を目指した取り組みを加速 | 株式会社ゲオホールディングス

このように、オフサイトPPA(フィジカル)を利用すれば、自社敷地内に十分なスペースがなくても再エネ電気を活用できるため、同じような課題を抱える小売業や飲食業でも導入しやすい仕組みです。

オフサイトPPA(フィジカル)で利用する発電設備

オフサイトPPA(フィジカル)によって導入されている主な発電設備は、太陽光発電や風力発電などが挙げられます。

下記の例では太陽光発電の特性を活かし、ため池を活用した水上太陽光発電によるオフサイトPPA(フィジカル)を実現しています。

参考:オフサイトPPA契約締結について~ハローズ四国エリアの実質再エネ化を実現~

コーポレートPPAのメリット/デメリットとは

ここまでのご説明からもわかるように、コーポレートPPAには多くの以下のようなメリットといくつかの注意点・デメリットがあります。

メリット

※環境価値:再生可能エネルギーなどで電気をつくる際の「CO2を増加させない」という価値のこと。
詳しくはこちらをご覧ください。
>環境価値とは|企業が取り入れるメリットや調達方法、注意点をわかりやすく解説

デメリット

PPA契約のデメリットを解決する方法のひとつとして、発電事業者やPPA事業者に短い期間での契約が可能かどうか相談してみるのも良いかもしれません。事業者によっては、10~15年、あるいはそれよりも短い期間での契約に対応するケースもあります。

オンサイト/オフサイトPPA・リース・自己所有の違い

PPAとよく似た仕組みとして「発電設備のリース」という方法もあります。混同しやすいので、ここで「オンサイトPPA」「オフサイトPPA(フィジカル)」「リース」「自己所有」の主な違いを比べてみます。

 オンサイトPPAオフサイトPPA(フィジカル)リース自己所有
発電設備の所有者発電事業者発電事業者リース業者電力ユーザー
発電設備設置の初期費用の負担者
発電設備の維持管理費用の負担者
契約期間終了後の取り扱い電力ユーザーへ無償譲渡発電事業者が管理 (譲渡等はされない) ※発電事業者によっては契約更新の可能性あり電力ユーザーへ無償譲渡契約期間はなし   電力ユーザーの判断で売却や撤去可能
発電した電気の使用方法電力ユーザー社内での活用電力ユーザー社内での活用  電力ユーザー社内での活用のほか、 売電が可能なケースもあり電力ユーザー社内での活用のほか、 売電が可能なケースもあり
発電設備から調達した分の電気料金負担発電事業者へ支払う小売電気事業者へ支払う  使用した分の電気料金ではなく、リース料金として一定の費用をリース業者へ支払うなし

このようにPPAは、リースや自己所有と比較して、電力の使用方法や料金の設定、契約期間終了後の取り扱いなどに違いがあります。特に固定費や発電設備コストを抑えながら脱炭素経営を始めたい企業には、メリットを得やすいサービスです。

コーポレートPPAは脱炭素化・電気料金安定化に役立つ

コーポレートPPAは、PPAサービスを提供している発電事業者と電力ユーザーの間で交わされる契約の一つです。新たな再エネ発電設備の創出に寄与する「追加性」のある手法と認められており、企業の脱炭素化や国際イニシアチブからの評価につながります。また、電力ユーザーは発電設備の初期費用や維持管理コストを抑えられるため、費用面でのメリットを受けられます。

自社の脱炭素化や電気料金の低減を目指す企業さまは、新たな手段のひとつとしてPPAサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

エナリスでは、PPAサービスを提供しています。太陽光発電や蓄電池の初期費用を抑えたい方や脱炭素経営に乗り出している方はぜひご検討ください。

脱炭素についてもっと詳しく知りたい方はこちら
>脱炭素とは?脱炭素社会実現に向けての取り組みを交えて解説します!

エナリスの「PPAサービス」
長期契約の不安を軽減できる「ハイブリッド・オフサイトPPA」も

エナリスではお客さまのオンサイトPPA・オフサイトPPA導入をサポートする様々なサービスをご提供しています。

中でも、オフサイトPPA導入を支援する「ハイブリッド・オフサイトPPA」は、エナリス独自のサービス。フィジカルPPAとバーチャルPPAを柔軟に切り替えられるようにすることで、長期契約の不安を軽減することができます。 ぜひ下記よりサービスの詳細をご覧ください。

Supervisor 監修者
新島 啓司 Keiji NIIJIMA 環境コンサルタント

東京工業大学大学院 総合理工学研究科を修了後、約30年間、環境、再生可能エネルギー、ODAコンサルタント会社に勤務。在職中は自治体の環境施策、環境アセスメント、途上国援助業務の環境分野担当、風力や太陽光発電プロジェクトなど幅広い業務に従事。技術士環境部門(環境保全計画)、建設部門(建設環境)の資格を持つ。また、英語能力(TOEIC満点)を生かし、現在は英語講師としても活躍中。

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