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需給調整市場とは?仕組みやメリット、参入の「現実」と成功のポイントをわかりやすく解説
脱炭素社会への移行が推進される中、企業が保有する設備やエネルギーに対する考え方も変わりつつあります。これまでは、電気は「電力会社から購入して消費するもの」、設備は「製品やサービスを生み出すためにただただコストがかかるもの […]
脱炭素経営において、単に再エネであることの証書を調達するだけでなく、再エネ設備の新設に寄与する「追加性(アディショナリティ)」を重視する企業が増えています。これはRE100等の国際目標を目指す企業に限らず、独自の基準で脱炭素を進める企業にとっても共通のテーマとなっています。
その有力な手段として導入が広がる「オフサイトPPA」は、安定して再エネを調達する方法として定着しつつあります。特定の発電事業者と契約をして再エネ電力を直接調達する仕組みで、市場を介さずに電力や環境価値を固定単価で安定調達できるのがメリットです。
また、追加性のある再エネとしてだけでなく、中長期的な視点では証書の供給不足や価格上昇への対策といった、現時点では表面化しにくいリスクの備えとしてのメリットも持ち合わせています。
しかし、オフサイトPPAには「フィジカル」と「バーチャル」という2つの形態があり、どちらが自社に適しているかという判断に迷うケースも少なくありません。PPAは一般的に15年以上の長期契約となるため、後から契約形態を変えにくいという制約が実務上の懸念となります。
本記事では、追加性と併せて考慮すべき「将来の環境価値の調達リスク」の背景や、フィジカルPPAとバーチャルPPAの違いを整理したうえで、追加性を確保しつつ将来の事業変化や市場リスクにも柔軟に対応できる「ハイブリッド・オフサイトPPA」という選択肢について解説します。
多くの企業がオフサイトPPAの検討を急ぐ背景には、環境価値(非化石証書など)を取り巻く供給不足や価格上昇への懸念や、制度変更への対応といった実務上の課題があります。
これまで非化石価値取引市場は、供給が需要を上回る「買い手市場」が続いてきました。しかし、RE100加盟企業の急増などにより状況は変わりつつあります。FIT非化石証書のオークションにおける応札率(売りに対する買いの割合)は、2021年度11月の約3.4%から、その後上昇傾向を続け、2025年度8月には約67.9%へと上昇しました。このペースで需要が伸び続ければ、2027年あたりから買い入札量が供給量を上回り、需給が逆転する可能性も予測されています。

特に、「運転開始から15年以内」というRE100の技術要件を満たす証書は、FIT制度の開始から15年が経過する2027年度以降、価格上昇の懸念が強まっています。

オフサイトPPAの検討を急ぐ背景として、再エネ報告の国際基準である「GHGプロトコル」の改定議論も無視できません。現在、再生可能エネルギーの調達に関して「1時間単位での発電・消費の一致(アワリーマッチング)」や、「物理的に送電可能なエリア内での調達(デリバラビリティ)」といったより厳格な考え方が検討されています。市場からその都度購入する、発電所を特定しきれない形の証書調達では、将来こうした新基準が正式に導入された場合、対応が難しくなる可能性があります。
こうした不透明な状況において、特定の電源を長期で確保するオフサイトPPAは、実務上のリスク管理として主に2つの意義を持ちます。
参考:JEPX 一般社団法人 日本卸電力取引所|取引市場データ
資源エネルギー庁|再生可能エネルギーの長期安定的な大量導入と事業継続に向けて
環境省|知っておきたい!GHGプロトコル改訂の最新情報
オフサイトPPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)とは、一般的には自社の敷地内ではなく、「遠隔地(オフサイト)」に発電事業者などが設置した特定の再エネ発電所から、一般の送配電網を介して電力を調達する仕組みのことです。
自社の敷地や屋上に発電事業者が発電設備を設置し、そこで発電された電気を購入する「オンサイトPPA」と異なり、別の場所にある大規模な太陽光発電所や風力発電所から供給を受けることが可能です。自社拠点の状況に関わらず導入できるため、特に消費電力量が多い企業にとって、RE100などの脱炭素目標達成に向けた「追加性」ある再エネ調達の切り札とされています。
参考:環境省|オフサイトコーポレートPPAについて
自然エネルギー財団|コーポレートPPA日本の最新動向
オフサイトPPAを検討する際、まず理解しておくべきは「フィジカル」と「バーチャル」という2つの契約形態です。これらは「電力と環境価値をセットで調達するか、環境価値のみを調達するか」という点で大きく異なります。
フィジカルPPAは、再エネ発電所から「電気」と「環境価値(非化石証書等)」をセットで購入し、小売電気事業者を通じて自社拠点へ送電するモデルです。

バーチャルPPAは、電力の供給は伴わず、発電所から「環境価値」のみを取引するモデルです。電気そのものは、現在契約している小売電気事業者から従来通り供給を受けます。フィジカルPPAと同様に、一般的には15年以上の長期契約となりますが、電力供給を伴わない分、従来の電力契約を切り替える必要がないスキームです。

メリット:電力供給を伴わないため、現在の電力契約を維持したまま再エネ化を進められるスピード感があります。複数の拠点分をまとめて再エネ化することも可能です。
留意点: 既存の電力会社へ支払う電気料金と別に、発電事業者との間で市場価格に基づいた差額精算が発生します。市場価格が高い時期には返金によるコスト相殺が期待できますが、市場価格がPPAの契約単価を下回る局面では、電力ユーザーが発電事業者に差額を補填する形となるため、キャッシュフロー上は電力代金と精算金の支払いが重なり、実質的にコストを二重に支払っているように見える側面があります。
また、バーチャルPPAはこれまで、電力の現物を伴わない「差金決済」の仕組みが、会計上の「デリバティブ(金融派生商品)」として複雑な処理を要する点が導入のネックとされてきました。
しかし、日本の会計基準においては、2025年11月に企業会計基準委員会(ASBJ)より、バーチャルPPAについては原則としてデリバティブの会計処理は不要(通常の費用処理を行う)とする方針が示されました。この決定により会計上の不透明感が解消され、以前よりも導入を検討しやすい環境が整っています。国際財務報告基準(IFRS)においては現時点で明確な取り扱いが示されていないため、同基準を採用する日本企業の一部では、自主的にデリバティブとして会計処理を行っているケースもあります。導入の際は、自社が適用する会計基準に沿った事前の確認が重要です。
オフサイトPPAについてさらに詳しく知りたい方はこちら
>オフサイトPPAとは?特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説
環境価値についてさらに詳しく知りたい方はこちら
>環境価値とは|取引理由や3つの証書、ビジネス上のメリットなどをわかりやすく解説
参考:企業会計基準委員会ASBJ|実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」の公表
これらを整理すると、フィジカルPPAは固定価格で安定して電力と環境価値を調達できる一方で、柔軟性には制約があります。バーチャルPPAは比較的柔軟に環境価値を調達できる反面、市場価格の変動に伴い精算額が変動するため、中長期的なコストの見通しが立てにくいという側面があります。
いずれも脱炭素化を推進する有力な手段であることに変わりはありませんが、実務上の大きな懸念は、「今の最適解が、15年後も最適であり続けるか」という点に集約されるのではないでしょうか。
参考:環境省|オフサイトコーポレートPPAについて
自然エネルギー財団|コーポレートPPA日本の最新動向

フィジカルとバーチャルどちらか選ぶのではなく、自社の事業環境や市況に合わせて自在に変更する…という選択肢が登場しています。それがエナリス独自の「ハイブリッド・オフサイトPPA」(以下、ハイブリッドPPA)です。
この手法の核心は、長期間の契約期間内に、状況に合わせてフィジカルPPAとバーチャルPPAを柔軟に切り替えることができる点にあります。店舗の増減、電力使用状況の変動など中長期的に必要となる電力使用量を見込みづらい企業や、長期的な契約はハードルが高いという企業にとってメリットの大きい手段です。
「年度ごと」に変更可能: 事業環境や市場予測に基づき、フィジカル/バーチャルを年度単位で形態を切り替えることが可能です。
「発電所ごと」に設定可能: 複数の発電所と契約する場合、発電所ごとに異なる形態を設定し、最適化できます。
このような柔軟な設計は、小売電気事業者とアグリゲーターの両機能を持つエナリスならではの強みを活かしたものです。
オフサイトPPAの本質は、市場に依存せず特定の調達先から安定的に電力や環境価値を長期にわたって確保し、確実な脱炭素化を実現することにあります。さらにフィジカルとバーチャルという2つの手法を柔軟に選べるという点で、導入時点での「最適解」で応えつつ、15年という長期間の間に訪れるであろう事業変化や外部環境のリスクにもしなやかに対応し続けられる、そんな「柔軟性」と「安定性」を両立できるのが、ハイブリッドPPAの強みです。
自社の拠点網や管理体制に合わせ、無理のない形で再エネ化を進めたい場合に有効なシナリオです。
今後予測される環境価値の需給逼迫や、国際的なルールの厳格化に対応するための、リスク管理としての活用イメージです。
ここまで紹介した通り、ハイブリッドPPAは現在の事業実態にマッチさせるだけでなく、将来の状況変化や外部リスクへの備えとしても、非常に有効な選択肢となります。
エナリス サービスページ https://www.eneres.jp/service/hybrid-ppa/
オフサイトPPAの検討を進めるにあたって、実務担当者の方からよく寄せられる疑問をまとめました。
A:将来的な「買えないリスク」を回避するためです。 現在、非化石証書市場は「売り手市場」へとシフトしつつあります。背景には、卒FIT電源の増加によるFIT非化石証書の供給減や、需要増による価格高騰や調達困難への懸念があります。ルールの確定を待ってからの検討では、好条件の発電所が既に他社に押さえられている可能性もあるため、早期に特定の調達先を長期固定価格で確保しておくことが、将来のコスト安定化に向けた有効な戦略となります。
A:「安定性」と「柔軟性」のどちらを優先するかによります。 電気代を長期間固定し、予算の確実性を高めたい場合はフィジカルPPAが適しています。 一方で、既存の電力契約を維持したままスピーディーに再エネ化を進めたい、あるいは将来の拠点変更に備えたい場合は、バーチャルPPAが有力な選択肢となります。 どちらか一方に決めきれない場合は、年度ごとに選択し直せる「ハイブリッドPPA」をご検討ください。
A:対応しています。RE100の追加性要件では、運転開始日(試運転日)またはリパワリング日から起算して15年以内の電源でないと再エネの価値がないとみなされますが、本サービスは、RE100が求める追加性の考え方に基づき設計されており、オリジナル・オフテイカーとなる点を含め、追加性として評価されうるスキームです。
※ハイブリッドPPAがRE100の基準に基づくものであることは、第三者検証機関の審査済み。詳しくはこちらから。
A:エナリスでは、「フィジカルPPA」と「バーチャルPPA」の切り替えに加えて「電力供給」を含めた最適な組み合わせをご支援いたします。
エナリスの豊富な電力供給メニューから、お客さまのニーズにあったプランをご提供いたします。
オフサイトPPAの導入は、企業の脱炭素化を進めるうえで有力な選択肢の一つです。しかし、長期にわたる契約が将来の経営判断を妨げる制約となってしまっては、本来の目的から逸れてしまいます。
重要なのは、現時点での最適解だけに固執するのではなく、将来の状況変化に応じて柔軟に選択肢を修正できる仕組みを整えておくことです。エナリスは、エネルギーの専門家として、制度の変遷や市場の動向を多角的に捉え、お客さまの持続可能な再エネ調達を継続的に支援してまいります。
実務の具体的なお悩み、お聞かせください
貴社の電力使用状況や、社内稟議で懸念されているポイントに合わせて、最適なPPAスキームをご提案いたします。ぜひエナリスにご相談ください。
本記事の制作にあたっては、生成AIを支援ツールとして活用しています。最終的な内容の確認・判断および責任は、エナリスジャーナル編集部が負っています。
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