GX・脱炭素といえばエナリスエナリスジャーナルSDGs企業向けカーボンニュートラル入門|今さら聞けない基礎知識や実践しやすい事例を紹介

企業向けカーボンニュートラル入門|今さら聞けない基礎知識や実践しやすい事例を紹介

全世界にさまざまな気候変動をもたらしている地球温暖化。

これ以上、状況を悪化させないために、原因となる温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す活動が各国で行われています。

具体的に何をしているのでしょうか?

そこで、本記事ではこれからカーボンニュートラルへ向けた取り組みをはじめようとしている企業・団体に向けて基礎知識や実践しやすい事例を解説します。

取り組みを行うメリットや政府の支援政策についても紹介しますので、参考にしてみてください。

Supervisor 監修者
新島 啓司 Keiji Nijima 環境コンサルタント

東京工業大学大学院 総合理工学研究科を修了後、約30年間、環境、再生可能エネルギー、ODAコンサルタント会社に勤務。在職中は自治体の環境施策、環境アセスメント、途上国援助業務の環境分野担当、風力や太陽光発電プロジェクトなど幅広い業務に従事。技術士環境部門(環境保全計画)、建設部門(建設環境)の資格を持つ。また、英語能力(TOEIC満点)を生かし、現在は英語講師としても活躍中。

カーボンニュートラルとは?

2020年10月、当時の内閣総理大臣であった菅総理は以下のような所信表明演説を行いました。

「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」

この表明の肝となる部分は、「全体としてゼロにする」という点。

私たちが様々な活動で排出する温室効果ガスの発生を全てゼロにすることは現実的に不可能です。

そこで、植物などが吸収する量や、排出された二酸化炭素を技術によって物理的に回収し貯留する「吸収・除去」できる量の分だけを排出し、排出量と吸収量が相殺された状態、すなわち炭素(カーボン)排出量が全体として「中立」(ニュートラル)とする取り組みのことを「カーボン・ニュートラル」と言っています。

なお、ここでいうカーボンは二酸化炭素だけでなく、メタンや亜酸化窒素など人為的な活動による温室効果ガス全体を指します。

引用:経済産業省資源エネルギー庁ホームページ「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_neutral_01.html

政府だけでなくさまざまな企業や団体がカーボンニュートラルを目指し活動している現在、日本における削減量の現状と、目標値を確認しておきましょう。

引用:環境省「2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要」https://www.env.go.jp/content/900518858.pd

上記のグラフから、6年連続で総排出量が減少し、順調に削減できていますが、これでも先ほど述べた、政府の掲げる目標にはまだまだ遠いのが現状です。

2015年にパリで開催された「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」で採択されたパリ協定では、「今世紀末における地球の気温上昇を産業革命以前と比較して1.5℃に抑制する」ことを取り決めました。

さらに、昨年英国で開催されたCOP26では、この目標を再確認する文章が締約国で採択されました。

今世紀末までに気温上昇を1.5℃とする」という目標を達成するには、2030年までに世界の温室効果ガス排出量を2010年に比べて45%削減しなければなりません。

この高い目標を現実にするためにもカーボンニュートラルへの取り組みを、さらに幅広く社会に浸透させる必要があるのです。

カーボンニュートラルに取り組む企業のメリットと中小企業の成功事例

「カーボンニュートラルを目指すことは大切だが、企業が取り組むメリットってなんだろう?」と考えている方も多いのではないでしょうか。

そこで、取り組みにおける5つのメリットを事例とともに見ていきましょう。

メリット1:SBT加盟企業等、環境意識が高い企業から受注する際、優位性を確保できる

自社だけでなく取引先に対しても温室効果ガス削減を求める企業が増えている現在、脱炭素経営を実施することで、競合他社への優位性を確保できます。

代表的なのが、「SBT加盟企業」です。

SBTとは
Science Based Target。世界の平均気温の上昇をパリ協定が求める「2度未満」に抑えるために、企業が科学的に整合性のある削減目標を設定すること

SBT事務局が各企業の削減目標を審査し、認定を受けた企業が「SBT認定企業」となります。SBT認定企業との取引を進める場合、自社のカーボンニュートラルへの取り組みはアピール材料になるでしょう。

引用:環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」https://www.env.go.jp/content/900440895.pdf

成功事例:カーボンニュートラルに取り組んで、売上げアップ/株式会社大川印刷

このメリットの成果事例としては、神奈川県横浜市にある株式会社大川印刷が挙げられます。

同企業は、早くから脱炭素経営に向けた取り組みを開始し、SBTにおいては2016年にscope1・2のゼロを達成しました。そのような取り組みの結果、共感を持った顧客から問い合わせや注文が増加し、売上高経常利益率が1.8%増加したそうです。
(参考:環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」)

メリット2:エネルギー効率のよいシステムに変えることで光熱費・燃料費を低減できる

カーボンニュートラルへの取り組みを実施するには、自社のエネルギー効率を見直す必要があります。その結果として、光熱費や燃料費が下がることが期待できます。

成功事例:1,000万円以上の光熱費の削減に成功/中部産商株式会社

三重県四日市市にある中部産商株式会社は、設備に使用する電力の最適化を行い、ガス使用量の半減を達成しました。その結果、1,000万円以上の光熱費の削減に成功したそうです。
(参考:環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」)

メリット3:メディア掲載や国・自治体からの表彰等により認知度の向上につながる

大幅な温室効果ガス削減を達成した企業や業界における再エネ導入の先駆けとなった企業は、国や自治体から表彰されることもあり、社名を知ってもらうきっかけになります。

成功事例:県や地域の賞を受賞し、知名度アップ/山形精密鋳造株式会社

山形県長井市にある山形精密鋳造株式会社は、現場からのアイデアを積極的に取り入れた省エネ対策に取り組んだ結果、令和2年に山形県環境保全推進賞、東北七県電力活用推進委員会委員長賞を受賞しました。

取組事例を政府の資料で紹介されることで、会社の知名度・認知度が向上したと言えるでしょう。
(参考:環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」)

メリット4:社員の共感や信頼、モチベーションアップにつながる

脱炭素経営への取り組みを社内全体に要請することで、社員のモチベーション向上につながるケースもあります。

成功事例:従業員がセミナー講師やイベントを開催/株式会社大川印刷

先ほど述べた株式会社大川印刷(神奈川県横浜市)では、カーボンニュートラルへ向けた取り組みによって、従業員の意識が向上したと実感したそうです。

具体的には、従業員が気候危機に関するセミナーの講師やオンラインイベントを開催するなどの取り組みを実施。気候変動問題と自社の事業との関係性を従業員が自分の言葉で語れるのは大きな強みであり、競争力の源泉であると語っています。
(参考:環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」)

メリット5:脱炭素経営が、資金調達において有利にはたらく場合がある

カーボンニュートラルへの取り組みは、資金調達においても有利に働く場合があります。

脱炭素経営を推奨している金融機関も存在し、融資先の選考基準として取り組み内容が評価される可能性があるのです。

事例:脱炭素への取り組み内容によって貸付金利が変動するローンを提供/滋賀銀行

滋賀銀行は温室効果ガス排出量の削減値や再生可能エネルギーの生産量などの脱炭素への取り組み内容によって貸付金利が変動する「サスティナビリティ・リンク・ローン」を実施しています。

うまく活用することで、自社の脱炭素経営の発展が、好条件での資金調達につながる可能性があります。
(参考:環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」)

中小企業が今からできるカーボンニュートラルへの取り組み

上記のようにカーボンニュートラルに取り組む中小企業が増えているだけでなく、大手企業が自社のサプライチェーン全体の脱炭素に取り組んでいる中、受注への優位性を得るためにも迅速な取り組みが重要です。

そこで、今からでも始められるカーボンニュートラルへの取り組み方法を紹介します。

取り組み1:環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」を参考にする

具体的に何から始めたらいいか分からないという中小企業のために、環境省から「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」が用意されています。

取り入れやすい具体的な事例や計画策定における手順なども記載していますので、参考にしていきましょう。

ステップ1:現状を把握し改善点を探す(認識・知識)

改善点を見つけるためにも、自社の使っているエネルギー使用量やCO2排出量などの現状を把握しておくことが重要です。

まずは自社で使用しているエネルギーを確認し、エネルギー自体の使用量を把握しましょう。燃料の使用量からCO2排出量に換算し、CO2を含む温室効果ガスの排出量が0もしくは少ないエネルギーに転換できる箇所を検討します。

たとえば「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」に以下のような取り組みが紹介されていますので 参考にしてください。

ステップ2:具体的な脱炭素に向けての取り組みを検討(行動・意識)

改善点が把握できたら脱炭素に向けての具体的な取り組みを考えましょう。

長期的なエネルギー転換については時間やコストがかかってしまうので、短中期的な省エネ対策から実施していき、自社の削減目標に届く数値なのかを擦り合わせていくのが良いかもしれません。

すでにエネルギー転換を検討している場合は、内容や時期を踏まえながら、既存設備の最適な運用法やエネルギーロスの低減を検討しましょう。

短中期的な省エネ対策例は「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」のp35~36を参考にしてみてください。

また、エナリスでは、企業の節電をサポートするサービスとして「FALCON II SYSTEM」を提供しています。電力使用量の見える化や温湿度・CO2濃度を踏まえた空調・換気の自動制御機能などに加え、お客さまのニーズに応えるサービスタイプとアフターフォローを拡充し、快適な省エネ活動を伴走支援します。

興味のある方はぜひお問い合わせください。

「FALCONⅡSYSTEM」により、お客さまのエネルギー利用を効率化し、電気料金の削減につなげます
エネルギーマネジメントシステム「FALCONⅡSYSTEM」は、電力の見える化、設備の自動制御、スマートフォンによる空調の一括管理など、お客さまの”できたらいいな”を叶えます。

ステップ3:検討結果から今後の計画を策定する(計画・予想・今後の方針)

ステップ1・2の検討結果をまとめ、次の3つのポイントを整理しましょう。

実現可能な範囲での対策実施期間を定め、次の画像のようなロードマップを作成し計画をとりまとめます。

引用:「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」(https://www.env.go.jp/content/900440895.pdf)のp43

おおまかな計画が完成したら次の3つのポイントを最終確認し、問題なければ計画に沿って取り組みを行っていきましょう。

取り組み2:自社で使用する電気を再生可能エネルギー由来のものにする

企業が比較的簡単に取り組める活動として、自社の電気を再生可能エネルギー由来のものに切り替えるという方法があります。再生可能エネルギーからつくられた電気を使用することによって、自社のCO2排出を大幅に削減できる可能性があります。

コストは高くなりがちですが、適切な電力メニューを選択し省エネ等も組み合わせることで、コストを上げずにCO2排出削減を実現しているケースもあります。

電気の切り替えのみで脱炭素の取り組みが可能になる「電源連動型再エネメニュー」
お客さまの目的に合わせて、電気由来のCO2排出量削減の実現をサポートします。

取り組み3:太陽光パネルを設置する

一般的に浸透している再生可能エネルギーの調達手段の一つが太陽光発電です。太陽光パネルの設置を検討している中小企業も多いのではないでしょうか。

そこで、太陽光パネルの設置にあたって考慮すべき3つのポイントを紹介します。

第三者所有モデルの利用を検討している場合、エナリスの「TPO PLUS」がおすすめです。

本サービスでは、設備の初期設置や運用メンテナンスの費用がサービス費用内でまかなわれるため、「設備投資ゼロ」で太陽光発電設備を導入できます。

さらにあわせて蓄電池を導入することで、設備効率を最大化できるだけでなく緊急時における非常用電源としての活用も可能です。

「エネルギーコスト削減」「再生可能エネルギーの導入」「災害等の緊急時対策」等、TPO PLUSならさまざまなメリットを得ることができます。

サービスの詳細や資料請求はエナリスまで気軽にお問い合わせください。

太陽光発電設備、蓄電池の導入を初期投資0で実現する「TPO PLUSサービス」
設備の初期設置や運⽤メンテナンスは、エナリスがサービス費⽤内で対応。お客さまの電気料金やCO2排出の削減、BCP対策につなげるサービスです。

自社でカーボンニュートラルに貢献するには

カーボンニュートラルへの取り組みにはさまざまな方法があり、中でも再生可能エネルギーの導入は効果的な対策の代表と言えます。

ただし、自社の電力を再生可能エネルギー化するには、多大なコストと調達手段についての問題をクリアしなければなりません。

例えば「株式会社大川印刷」の場合、工場屋根への太陽光発電設備の設置で20%の電力を賄い、残りの80%はさまざまな手続きを経て風力発電による電力を購入することで、工場全体の使用電力の再生可能エネルギー100%化を実現しています。

このように綿密な削減計画だけでなく、自社がおかれている環境や供給元の考慮が必要になり、再生可能エネルギー化に高いハードルを感じてしまう企業も多いでしょう。

エナリスでは、文中でご紹介したように、「環境配慮型サービス」や「TPO PLUS(太陽光発電設備・蓄電池の第三者保有モデル)」のサービスをご提供しています。

カーボンニュートラルへの取り組みを始めたい企業の皆さま、まずはお気軽にご相談ください。

電源連動型再エネメニューについての詳細はこちら

TPO PLUSについての詳細はこちら

株式会社エナリスへのお問い合わせはこちら

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