- エネルギー
- 未来への取り組み
- 環境問題
非化石証書とは?仕組みや特長をわかりやすく解説
発電時に化石燃料を使用しない電気の価値(環境価値)を取り扱う非化石証書。2021年11月には電力ユーザーでも購入できるようになりました。多くの企業から注目を集めている非化石証書について、言葉の意味や種類など基礎的な話から […]
「脱炭素」というキーワードが一般的にも認知されるようになりました。これまで企業の脱炭素化は大企業を中心に取り組まれて来ましたが、昨今では中小企業も脱炭素化を要請されるようになっており、脱炭素への取り組みを怠ることは将来的な経営リスクになりかねません。
しかし、「脱炭素への取り組みにはコストがかかりそう」「大企業向けの話が多くてピンとこない」「中小企業でもできる具体的な取り組み方がわからない」と悩んでいる方も多いかもしれません。
そこで今回は、中小企業が脱炭素経営に取り組むべき理由と企業におすすめの脱炭素施策についてわかりやすく解説します。
脱炭素経営とは、気候変動への対策を重要課題として折り込む経営方針のことです。企業が事業を行う上で排出する温室効果ガスを削減し、究極的にはゼロにすることを目指して取り組みます。地球温暖化の主な原因である二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を減らすことによって、持続可能な環境を守るための重要なステップとなります。
脱炭素経営を実現するためには、再エネの利用拡大、省エネの取り組み、サプライチェーン全体でのCO2排出量の管理・削減などが必要です。
脱炭素経営は、自社のエネルギー戦略に留まらず、業界や市場、ステークホルダーからの要請に応えて信頼を獲得する意味でも、多くの企業にとって重要な戦略の一つとなっています。
企業が脱炭素経営に取り組むことは、環境的な理念やモラルの面だけでなく、実際の企業経営においても具体的なメリットがあります。ここでは中小企業が脱炭素経営に取り組むべき理由を4つに分けて解説します。
現在、大手企業の多くがESG ※ を考慮し、温室効果ガス排出量について目標を設定し、その進捗を公表しています。
※ ESG・・・Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス(企業統治))を考慮した投資活動や経営・事業活動
ESG情報統合管理クラウドを運営する株式会社estomaが2023年10月に行った調査によると、日本のプライム企業1834社のうち、91%が自社サイト内にサステナビリティページを設け、ESGの取り組み状況を公開しています。
さらに2024年2月に金融庁は上場企業すべてに対して温室効果ガスの排出量の開示を義務づける方針を示しました。
参考:上場企業に温室効果ガス排出量の開示 義務づける方針 金融庁 | NHK | 脱炭素社会への動き(2024年2月19日)
大手企業はサプライチェーン全体で脱炭素の施策に取り組むケースが多いため、その取引先として選ばれるには同様の温度感で脱炭素施策に取り組む姿勢が求められるでしょう。
実際に、ジェトロ(日本貿易振興機構)が実施した2021年度のアンケート調査によると、全体で16.2%(大企業に限ると19.8%)が「調達先企業(サプライチェーン)への脱炭素化の要請をしている」と回答しています。中でも「情報通信機械/電子部品・デバイス」「自動車・同部品/その他輸送機器」といった業種では全体平均の2倍以上の割合になっています。
参考:サプライチェーンを意識して脱炭素化対応を(世界、日本) | コロナ禍の変化と混乱、複雑化するビジネス課題への対応は – 特集 – 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ
サプライヤーの選定においては、品質やコストだけでなく温室効果ガスの排出量も含めて総合的に評価される傾向が強まっています。中小企業が脱炭素に取り組むことは、既存の取引を維持するためにも必要ですが、さらに脱炭素を契機として新たなビジネスを得るチャンスでもあります。
例えば、Apple社は世界中のサプライチェーンに対して2030年までに脱炭素化することを要請し、「クリーンエネルギープログラム」を設定しています。同社のサプライチェーンの中に日本企業は約900社ありますが、目標に賛同しプログラムに参加を表明した日本企業は2023年4月時点で34社あるそうです。
その一社である「太陽インキ製造」はスマホの配線基板に使う絶縁膜等のメーカーですが、Apple向け製品の生産を100%再エネで賄っています。
参考:「Apple、グローバルサプライチェーンに対して2030年までに脱炭素化することを要請」Apple社リリース、
「太陽インキ製造が米Appleのクリーンエネルギープログラム2020に参加」太陽ホールディングス社のリリース
脱炭素化にはコストがかかると思われがちですが、企業活動におけるエネルギーの省力化や合理化によってコスト削減と脱炭素化を両立させることも可能です。例えば、事業所の照明器具を蛍光灯からLEDに変更し省エネ化することで、温室効果ガスの排出量を減らしつつ電気代を節約し、短期間で投資回収することができるでしょう。
また、化石燃料を使用する火力発電などの従来型発電は、温室効果ガスを大量に排出するだけでなく、国際情勢による価格変動や高騰のリスクがあります。
一方、再エネ由来の電力を得る手法の一つとして、長期的に一定の価格で電力を購入するスキームもあります。例えば、遠隔地で発電された再エネ電力を需要場所に供給する「オフサイトPPA(フィジカル)」などです。他にもさまざまな手法がありますが、自社に適したエネルギー戦略を立てることが重要です。
中小企業向けに省エネ・脱炭素施策の設備投資に対するさまざまな補助金が用意されています。例えば、令和5年度には、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)や東京都中小企業振興公社からLED照明器具導入に対する補助金制度が実施されました。このような制度を活用することで初期投資を抑えながら省エネ施策を実施でき、コスト削減効果をより実感することができるでしょう。
参考:補助金・助成金:LED照明等節電促進助成金」|支援情報ヘッドライン|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
「省エネ法」においては、一定規模以上の事業者 ※ は毎年エネルギー使用状況等の定期報告書を提出することが義務付けられています。この法律では、エネルギー消費原単位 ※ を平均で年1%以上の改善を目標とすることが求められており、中長期(3〜5年)のエネルギー削減計画の策定も必要です。2023年度からは、これまで対象外だった再エネ使用量の報告も義務化され、化石燃料から再エネへの移行を促進し、国全体で脱炭素化を目指す方針が明確になりました。
また、2022年から始まった「GX実行会議」では、脱炭素に向けて今後10年のロードマップが示されています。その中で2028年度を目途に「炭素に対する賦課金」を導入する案が発表されています。将来における事業リスクへの備えとして、今から脱炭素対策を行うことが重要です。
※ 省エネ法定期報告の対象となる事業者・・・①特定事業者等(原油換算で1,500kl/年以上のエネルギーを使用する事業者)②特定貨物/旅客輸送事業者(保有車両トラック200台以上等)③特定荷主(年間輸送量3,000万トンキロ以上)
※ エネルギー消費原単位・・・単位量の製品や額を生産するのに必要な電力・熱(燃料)などエネルギー消費量の総量のこと
自社の脱炭素への取り組みを開示することは、投資家や金融機関に対して脱炭素経営をアピールする効果もあります。
ESG(環境・社会・ガバナンス)への注目が年々高まっており、投資先の選定にあたってESG関連の取り組みを数値化して評価する機関投資家が増えています。例えば、世界最大の機関投資家であるGPIF(日本の年金を管理・運用する機関)はESGを重視した投資を行うことを明言しています。
また、環境に対するKPI(重要業績評価指標)実績に応じて金利が変化する債券や融資(SLB:サステナビリティ・リンク・ボンド、SLL:サステナビリティ・リンク・ローン等)を提供する金融機関も増えています。
このような時代の流れから、脱炭素への取り組みの有無が資金調達のしやすさを左右する要因になりつつあります。
中小企業において取り組みやすい順番で、脱炭素施策を7つご紹介します。自社の環境やリソースを考慮しながら、実行可能な施策から脱炭素への取り組みを始めてみるのがよいでしょう。
脱炭素化の第一歩としておすすめなのが、自社のCO2排出量を把握することです。
現状を把握しないまま削減に取り組んでも、ビフォー・アフターがわからないと成果実感につながりにくいものです。
昨今では大企業がサプライチェーン全体のCO2排出量(Scope3)を把握するために、中小企業にCO2排出量の報告を求める動きも増えています。
CO2排出量の把握にはノウハウやリソースが必要であるため、専用のサービスを利用するのが得策です。
そうすれば、公式な報告に必要とされる第三者検証をクリアできるうえ、請求書データでの手軽な見える化やレポートの自動作成など、CO2排出量見える化に必要な様々なサポートを受けられます。
エナリスではCO2排出量の見える化をサポートするサービスを提供しています。
“CO2排出量可視化”でe-dashと協業開始
中小企業がもっとも取り組みやすいのは、事業で使用する電力を再エネ由来に切り替えることです。多くの小売電気事業者が再エネ由来の電力メニューを提供しており、電力契約を切り替えるだけでCO2排出量を減らすことができます。専門的な知識を必要とせず、再エネや省エネの設備投資も不要なので、取り組みやすい手法です。
エナリスでは、実質再生可能エネルギー100%の電力メニューを用意しており、お手軽に導入できます。詳しくはこちらをご覧ください。
一般的な再エネ電力に比べ電力価格の変動が小さい!エナリスの電源連動型再エネメニュー
再エネ(太陽光、風力、水力など)や原子力発電で生み出された電気には、大気中の二酸化炭素を増加させないという「環境価値」があります。この環境価値をエネルギーそのものとは分けて取引・購入できるのが「非化石証書」です。非化石証書を購入することで、実質的に再エネの電力を使用している ※ とみなされます。
※ 再エネ由来の非化石証書の場合のみ
メリットとしては、現在利用している電力会社や契約内容を変更せずに、自社に必要な分だけCO2排出量の削減という脱炭素効果を得ることができます。
エナリスでは非化石証書の代理購入サービスを提供しています。本来オークションの参加に必要な入会費や年会費、その他入札手続きもエナリスが代理で対応し、お客さまに代わってトラッキング付非化石証書を購入します。
詳しくはこちらをご覧ください。
エナリスの非化石証書代理購入サービス
非化石証書について詳しく知りたい方はこちらの解説記事をご覧ください。
非化石証書とは?企業が取り入れる方法やメリットをわかりやすく解説します
PPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)は、発電事業者(PPA事業者)と電力ユーザーの間で一定期間固定の料金で電力を供給する契約を結ぶモデルです。
PPAのひとつである「オンサイトPPA」は、電力ユーザーの敷地内にPPA事業者が所有する発電設備を設置し、そこから生み出される電力の購入や利用に関する契約を結びます。
このスキームでは、多くの場合太陽光発電設備が設置され、設備の設置コストはPPA事業者が負担します。そのため、自社の初期投資が抑えられることが大きなメリットです。
電力ユーザーはPPA事業者と一定期間 ※ の電力契約を結ぶことで、再生可能エネルギー(以下、再エネ)発電設備から生み出される電力を長期にわたって安定的に利用できます。また、環境省等の補助金が活用できるケースもあります。自社の建物の屋根や敷地内に太陽光パネルを設置するスペースがある企業におすすめの施策です。
※ 契約期間は20年などの長期契約となることが多いですが、事業者によっては契約年数を短くすることが可能な場合もあります。
PPAについて詳しく知りたい方はこちらの解説記事をご覧ください。
コーポレートPPAとは?オンサイトPPAとオフサイトPPAの違いをわかりやすく解説!
これまで大企業を中心に導入されて来ましたが、最近中小企業でも検討に挙がることのある施策をご紹介します。
「オフサイトPPA(フィジカル)」は、遠隔地にある発電事業者の発電設備から、既存の送配電システムを介して電力需要場所に電力を供給する契約です。オフサイトPPAで使われる発電設備は、太陽光発電や風力発電などさまざまな種類があります。
自社の屋根や敷地内に発電設備を設置するスペースがない場合でも、自社外の発電設備から任意の量の再エネ電力を調達することが可能です。
オフサイトPPAについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの解説記事をご覧ください。
オフサイトPPAとは?特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説
もうひとつ、昨今中小企業でも検討されている施策「自己託送」をご紹介します。
「自己託送」とは、遠隔地にある自社や関連企業の敷地内に再エネ発電設備(太陽光発電や風力発電など)を設置し、その場所で生み出した電力を既存の送配電システムを介して自社の電力需要場所に送電する仕組みです。
通常の自己託送では、「発電設備の設置場所および設備の所有者」と「発電した電気を供給する施設の所有者」が同一の企業・団体であることが原則でしたが、規制緩和により「グループ企業内自己託送」や「組合型自己託送」などのスキームも認められるようになりました。
エナリスでは自己託送の支援も行っています。詳しくはこちらをご覧ください。
自己託送支援サービス
自己託送について詳しく知りたい方はこちらの解説記事をご覧ください。
「自己託送」とは?メリット・デメリットや2021年の「自己託送に係る指針」見直しを解説
直接的な脱炭素施策ではありませんが、再エネがますます普及していくこれからの社会において、エネルギー供給の安定化に寄与する施策として注目されているのが「デマンドレスポンス」です。
デマンドレスポンスは、電力需要がひっ迫した際などに節電などを行い、需要パターンを変化させることで電力の需要と供給をバランスさせる取り組みです。
昨今では、企業などが所有する蓄電池などのリソースを使ってデマンドレスポンスに取り組むことで様々な市場に参加し、報酬を受け取ることができるようになってきました。デマンドレスポンスは、以下のような理由から中小企業におすすめしたい施策のひとつです。
デマンドレスポンスで市場に参加するには「アグリゲーター」と呼ばれる事業者と契約を結び、電力使用状況の精査や節電要請への対応、報酬のやりとりなどを行います。デマンドレスポンスに全社で取り組むことで、自社のムダに気づいて省エネにつながった、という声も多く聞かれます。自社の電力設備を有効活用したいと考えている企業におすすめの施策です。
エナリスはアグリゲーターとしてお客さまのデマンドレスポンスへの参加をサポートしています。詳しくはこちらをご覧ください。
デマンドレスポンスサービス(容量市場のご案内)
デマンドレスポンスについて詳しく知りたい方はこちらの解説記事をご覧ください。
デマンドレスポンスとは?参加するメリットや基礎知識、実施までの流れ、注意点をわかりやすく解説します
本記事では中小企業向けの脱炭素施策について解説してきました。脱炭素化にはコストがかかると二の足を踏んでいる企業の方も多いですが、企業を安定的に経営する上で避けて通れないものとなりつつあります。
この記事でご紹介したようにさまざまな脱炭素施策がありますが、自社の状況に合う脱炭素施策を適切に導入することによって長期的に経済的メリットが生まれるケースもあります。
ぜひ脱炭素施策の導入を検討してみてください。
エナリスでは、お客さまの脱炭素化をサポートしています
自社に合う脱炭素施策がわからないという方は、お気軽にエナリスにご相談ください。再エネ電力への切替えやPPAの導入、非化石証書を活用するスキームなど、お客さまのご要望や課題に合わせて適切な脱炭素施策をご提案します。
発電時に化石燃料を使用しない電気の価値(環境価値)を取り扱う非化石証書。2021年11月には電力ユーザーでも購入できるようになりました。多くの企業から注目を集めている非化石証書について、言葉の意味や種類など基礎的な話から […]
「2050年カーボンニュートラル」の政府目標の達成に向けて、事業活動で使用する電力の再エネ化を検討する企業が増えています。再エネメニューに切り替えることでも実現可能ですが、追加性を求めた再エネへの切り替えや複数の事業所の […]
近年、気候変動のリスクが多くの人々に認識されるようになりました。世界的な気温の上昇や豪雨、山火事などの災害は気候変動の影響を受けていると言われています。 気候変動の原因の一つとされているのが地球温暖化です。化石燃料の使用 […]
サービスの導入を検討されている方、
その他のご相談がある方はこちらから。