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出力制御とは?太陽光発電などの出力抑制の仕組みや見通しを解説
太陽光発電などの再生可能エネルギーが急速に普及する中、電力の安定供給のために行われる「出力制御」という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。本記事では、出力制御の基本的な仕組みや必要性、実施される優先順位から、3つの主 […]
どんな商品を扱う場合でも、需要の予測を立てて生産量や調達量などを調整し、適切な在庫管理を行う「需給管理」は非常に重要な仕事です。電力業界においても需給管理が重要であることは間違いありませんが、電力は他の商品に比べ需給管理の難度が高いと言われています。なぜなら、電気は基本的に“大量に貯めておくことができない”ためです。しかも、電力の需給バランスが崩れると、電力供給に支障をきたして大停電などを引き起こすなどの可能性があり、社会に重大な影響を与えます。
そんな人間の生活の根幹を支える電力を、私たちが常に安定的に利用することができるのは、電力ならではの “需給管理の仕組み”に支えられているからです。
本記事では、電力の需給管理業務や、現在推進されている「再生可能エネルギー主力電源化」の中で需給管理の重要度が増している背景、需給管理業務を応用して生まれた新しい技術やサービスについて解説します。
電力の需給管理とは、大量に貯めておくことのできない電気の発電量(供給量)と消費量(需要量)を常に等しく保つことです。これを「同時同量の原則」と言います。消費量に対して発電量が多すぎても少なすぎても、電力供給に支障をきたして大停電などを引き起こす可能性があります。
では、どのようにして「同時同量」を保っているのでしょうか?
需給管理を義務付けられている小売電気事業者は、年間・月間・週間・翌日・当日の需要・調達計画を電力広域的運営推進機関(OCCTO)に提出しています。供給日が近くなると、以下のような流れで需要と供給の細かいバランスをとっています。
社会のインフラである電力が途切れることのないよう、小売電気事業者は以上のような業務を24時間365日行っています。それでも、多少のズレは生じるもの。このズレを最終的に調整する役割は、各エリアの送配電事業者が担っています。OCCTOでは、各エリアの送配電事業者とリアルタイムで連携し、エリア単位で管理されている需給状況と送配電網の運用状況を監視して、電力が不足するエリアがあれば他エリアから融通するよう指示することもあります。
日本は、2050年カーボンニュートラル実現を目指し、再生可能エネルギー主力電源化に舵を切りました。日常の電力使用の場面では何の変化もありませんが、実は、電力のサプライチェーンは大きく様変わりしています。下記で解説するように、再生可能エネルギーの増加によってこれまで以上に需給管理が重要かつ複雑になり、需給管理技術を応用した新しい技術やノウハウも必要となっています。
これまでの電力の安定供給は、電力消費量に合わせて発電を行うことで保たれてきました。前述のように、小売電気事業者が立てる需要予測に合わせて発電量をコントロールすることで需給調整を行ってきたのです。しかし、再生可能エネルギーが増えることによって以下のような課題が出てきました。
これらの課題を解消し、再生可能エネルギー主力電源化と電力の安定供給を支える技術の一つとして、需給管理の技術を応用した“アグリゲーション”に期待が集まっています。
“アグリゲーション”とは、「集める・集約する」という意味です。
再生可能エネルギーや分散型電源をまとめて管理し、既存の送配電網と“合流”させることで、再生可能エネルギーを従来よりも安定的に供給できたり、今までは所有者のためだけに使われていた小さな電源を社会に役立てたりすることが可能になります。
その“合流”の際には、集めてきた電力量と必要とされている電力量のバランスをとる必要があるため、やはり需給管理技術が必要になるというわけです。
アグリゲーションについて、もう少し詳しく見てみましょう。
発電所は、発電計画をOCCTOに提出することが義務付けられています。
しかし、天候等に左右される再生可能エネルギーの発電量を予測することは非常に困難です。
再生可能エネルギーのアグリゲーションは、発電方法や設備が設置されている場所、エリアなどの特性を踏まえて発電所を最適にグルーピングし(集め)平準化することで、効率的に管理する方法です。個々の発電所では予測にぶれが生じやすくとも、複数の発電所をグルーピングすれば個々の発電量の変動を相互に吸収でき、全体として安定化させることができます。
蓄電池や自家発電機、電気自動車など、電力をつくったり貯めたりする機能をもち、かつ個人や企業に所有されている設備を「分散型電源」と言います。これらの分散型電源を活用して、所有者が使用していない時間帯に電力を放出してもらったり、電力を使用する時間帯をシフトしたりして、社会のインフラとして有効活用する仕組みが、分散型電源のアグリゲーションです。
アグリゲーションを行うには、まず分散型電源を束ねて管理し、どれくらいの余力があるかの予測を立てます。そして、電力需給ひっ迫が起こった際などに、IoTなどを使って分散型電源を体系的に制御することで必要な電力量を供出してもらいます。
現在は企業などが持つ設備のアグリゲーションが中心ですが、今後、家庭が所有する蓄電池や電気自動車にも広がっていく予定です。あなたの持つ設備が、社会全体の電力として役立てられ、さらに収益を生み出す可能性があるというわけです。
アグリゲーションについて詳しくはこちらをご覧ください
>アグリゲーションビジネスとは? 概要や参入方法をわかりやすく解説!
企業でも、事業活動の脱炭素化を進める動きが活発化しています。再生可能エネルギーや、環境価値を付加した実質再生可能エネルギーを供給してもらうことは、エネルギーの脱炭素化を図る最も簡単な方法です。しかし昨今では、より長期的に再生可能エネルギーを確保することや、追加性 ※ のある環境価値の調達を重視する企業も増えています。これらの企業が注目するソリューションとして「オフサイトPPA」や「自己託送」が挙げられます。
これらのソリューションは、いわば再生可能エネルギーを直接調達するサプライチェーンを構築する方法です。ただし、物理的には送電線を利用して電力を送る必要がありますし、再生可能エネルギーで賄いきれない部分は他から電力を調達してくる必要があるため、やはり需給管理が重要になります。
ここでは、「オフサイトPPA」と「自己託送」の仕組み、需給管理が果たす役割について説明します。
※追加性:「再エネ発電設備を新たに増やすことに貢献した」という効果のこと
発電事業者と電力ユーザーが特定の小売電気事業者を介して、一定期間、固定価格で電力を売買するスキームです。
このスキームで重要になるのは、①再生可能エネルギーの発電量予測、②需要量の予測、③再生可能エネルギーで賄えない電力の調達の3つです。
オフサイトPPAについて詳しくはこちらをご覧ください。
>オフサイトPPAとは?特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説
オフサイトPPAとよく似たスキームですが、発電事業者と電力ユーザーが同一企業やグループ内企業である場合はエリアの送配電事業者との協議を行い、可能となった場合のみ自己託送が導入できます。自分の発電所から、離れた場所にある自分の設備に電力を送るというわけです。
自己託送の場合は、小売電気事業者を挟む必要はありませんが、送電線を使って電力を送るため需給管理業務は必須となります。自社内で日々の運用まで担うことは難しいため、多くの場合、自己託送支援を行っている事業者に運用を委託します。
自己託送について詳しくはこちらをご覧ください。
>「自己託送」とは?メリットやオフサイトPPAとの違い、託送料金や「自己託送に係る指針」見直しを解説
オフサイトPPAも自己託送も、上記のような日々の運用をしっかり行えるかどうかが、再生可能エネルギーの効率利用の面でも、電気代を抑える上でも非常に重要なポイントになります。
ここまで説明したように、電力の需給管理は非常に難しく、私たちが滞りなく業務や生活をするためにとても重要なものです。
近年では発電量の予測が難しい再生可能エネルギーの拡大によって、需給管理の難度と重要性はより高くなっていると言えます。
さらに、近年ニーズが高まっているPPAモデルや自己託送といった新しい電力調達のスキームにおいても、需給管理の技術が土台となっています。
エナリスと需給管理
需給管理業務代行事業を創業事業とするエナリスは、需給管理で培ったノウハウをベースに、発電事業者向けに再生可能エネルギーアグリゲーションサービス、法人向けにオフサイトPPAサービスや自己託送支援サービスを提供しています。
ご興味のある方はぜひご相談ください。
記事内でご紹介したPPAモデルや自己託送の支援もおこなっています。
下記からサービスの詳細についてぜひご覧ください。
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